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株主・投資家の皆様へ

グローバルに戦っていける体質に変わるため「ビジネスモデル変革」を着実に推進し、ビジネスを継続的に成長させます。

代表取締役社長田中達也の写真

現在、デジタル・テクノロジーの進化により、あらゆる分野でイノベーションが起きています。当社はこの変化がもたらす市場のニーズを大きなビジネスチャンスと捉え、専門性の高いICTテクノロジーをベースに、これまで以上に信頼できるパートナーとして、お客様のビジネスを通じた新しい価値創造に貢献していきます。

2015年10月に発表した経営方針では、今後当社のビジネスを継続的に成長させるための「ビジネスモデル変革」の大きな枠組みを発表しました。持続的に成長し、ICT企業としてグローバルに戦っていける体質に変わるため、この「ビジネスモデル変革」を着実に推進していきます。

代表取締役社長田中達也のサイン

新社長としての抱負

私は1980年に富士通に入社して以来、国内営業部門で、大規模なものを含め様々な商談に対応してきました。その後は、中国での日系企業向け営業強化、また、2015年3月期はAsiaリージョン長として体制改革に取り組んできました。これらの経験を踏まえ、お客様、そしてまたその先にいるお客様のお客様まで、現場・現実をきちんと見据え、製品やサービスを提供していくことが、事業を進めていく上での基本と考えています。

今後、市場はますますグローバルに広がっていくと思います。富士通も、世界で戦える会社となるべく、2014年にスタートした「新グローバルマトリクス体制」を軸に、これまで以上にグローバルな競争力を強化していきます。
グローバル化と同時に、お客様のビジネス形態も目まぐるしく変化しており、ICTがこれまで使われてこなかった領域にもどんどん広がっています。現場・現実を見据えて、お客様の変化をしっかり捉え、当社が提供する価値をお客様に認めていただけなければ、結果的に我々の収益には結びつきません。また、これらをスピーディーに実施することがグローバル企業として重要だと考えています。

新しい領域においても、当社の技術や専門性、経験を活かした新しいサービスをお客様と共創することで、富士通の強みを発揮できると考えています。積極性・柔軟性・チャレンジ精神をバランスよく持ち合わせた会社にしたいと考えています。

富士通は素晴らしい人材に恵まれ、80年間の歴史の中で様々なことに意欲的に取り組み、技術力、経験・ノウハウなど、非常に価値ある資産が蓄積されている会社です。そういった資産を、当社が進むべき方向にベクトルを合わせて集結させ、きちんとマネジメントしていくことで、相乗効果が生まれ、もっと強い会社にできると信じています。

2015年3月期の振り返り

2015年3月期は、前期までにLSI事業や携帯電話事業の構造改革施策に一定の目処が立ったことを受け、成長戦略へシフトする年と位置づけ、中長期の戦略投資を積極的に実施しました。その中でも、前期に行った構造改革に伴う改善効果や、国内サービスビジネスを中心とした需要の伸びに支えられ、着実な利益成長を実現することができました。売上収益は4兆7,532億円と、期初計画(4兆8,000億円)には未達でしたが、ほぼ前期並となりました。内訳としては、システムインテグレーションやLSIが増収となりましたが、パソコンや携帯電話、ネットワークが減収となりました。

営業利益は1,786億円と、為替影響などにより期初計画(1,850億円)には60億円強の未達となりましたが、前期比で20%以上の増益となりました。携帯電話の採算性改善やシステムインテグレーションの増収効果があったほか、前期の構造改革効果が寄与しました。

親会社所有者帰属当期利益は為替差損など金融損益等が改善したことにより、期初計画(1,250億円)を150億円超え、過去最高益の1,400億円を達成しました。

2015年3月期実績数値

2016年3月期の業績予想

2016年3月期は、改めて早急に対処すべき課題として、大きく次の2点を認識しています。

1点目は、ここ数年に行ってきた先行投資の回収をできるだけ早く具体的に実現し、既存ビジネスの一層の収益力向上と新規ビジネスの拡大を図ることです。
2点目は、プロダクトビジネスを持つ強みを再確認しつつ、外部要因に左右されることなく成長軌道を描けるビジネスモデルの確立を目指すことです。2015年3月期は、プロダクトビジネスにおいて、為替変動、特に欧州拠点で、ユーロ安により収益悪化の影響を受けました。その体質を克服するビジネスモデルを早急に確立したいと思っています。

2016年3月期の売上収益は、サービス事業の拡大により、テクノロジーソリューションを中心に前期比で2.7%の増収となる4兆8,800億円を計画していますが、営業利益は前期比で286億円の減益となる1,500億円となる予想です。上記のビジネスモデル変革を加速させるための戦略投資を織り込んだほか、米ドルに対するユーロ安が進んだことにより、PCなどユビキタスソリューションを中心とした部材調達コストの上昇影響を織り込みました。

前期比で減益とはなりますが、長期的に見たときに、高いレベルの利益を持続的に生み出せる体質への転換をスピーディーに実現するためには、今のタイミングで戦略投資を行うことが必要なステップであると考えています。

2015年3月期業績予想数値

中長期ビジョン

連結業績目標-目指す姿数値目標

2015年10月に発表した経営方針では、当社が進める「ビジネスモデル変革」の枠組みについてご説明しました。今後、当社が優位性を持つ「テクノロジーソリューション」に経営資源を集中させ、サービス、ソフトウェアとコアハードのソフトウェア化により、「つながるサービス」をグローバルに展開し、競争力を高めてまいります。

この「ビジネスモデル変革」を実行するにあたり設定した連結業績目標は、当社の体質が変化し、ICT企業としてグローバルに戦える域に達したと判断できる数値を掲げたものです。この目標に近づくための改革を優先して実施し、数字ありきではなく、体質の変化を確実に遂げていくことがより重要と考えています。

今までのような3年ごとの中期計画は現実的ではなく、大きな「目指す姿」への質的変化とその「目指す姿」に達した時の数値目標を設定し、当社がその姿にステップアップしていくよう、年単位できめ細かく計画を見直していく経営を行いたいと考えています。また、それが実行されて成果が出ているかについて、毎年公表していく予定です。

市場認識とビジネスチャンス中長期ビジョン

現在、政府や企業は、デジタル・テクノロジーの進化がもたらした変化への対応に迫られており、また、その進化を取り込むことによって、サービス品質やビジネスモデルの競争力を向上させようとしています。今までのやり方をブレークスルーするイノベーションを目指して、あらゆる分野で競争が激しくなっています。
一方で、この競争を勝ち抜くための人材や技術力を確保することは、企業にとって重要な課題です。特にICT分野においては、その複雑さ、変化の速さから、企業が自らリソースを保有し続けることは難しく、より付加価値の高いICTサービスへの期待が高まっています。そして、この変革と市場ニーズは当社にとって大きなビジネスチャンスであると考えています。

ある企業が企画した事業を実現するために、自社、もしくは複数の企業と共同でテーマごとに「場」が形成されます。この「場」をビジネスモデルと考えると、革新的で価値が高いほど、より社会に貢献でき、ビジネスとしても成功することができると考えます。そして、その「場」においてICTが果たす役割はますます大きく、より重要となっています。
当社がこのビジネスチャンスを捉えるためには、この「場」に対し、その検討や企画の早い段階から、しっかりとしたテクノロジーをベースに、より専門性を持って参画していくことが大切だと考えています。また、そうすることで、ビジネスがスタートした後も、信頼できるパートナーとして安心・安全な運用サービスを提供し、ビジネスに深く貢献できるものと考えます。

富士通のビジネスチャンスを表した図

富士通が目指す社会と社会的責任

富士通は事業の中心に人を置いて、人を幸せにする会社です。富士通は、テクノロジーは人と対立するものではなく人に寄り添って力を与えるものだと考えており、ICTは人々がより良く生きるための判断や行動の手助けを行うものです。人々が活動する社会を富士通のテクノロジーやサービスがしっかりと支える、これが富士通の目指す「ヒューマンセントリック・イノベーション」の世界観です。

その上でまず考えるのは、地球と社会の持続可能な発展です。地球全体での気候変動、自然災害の激化に加えて、都市では人口流入の加速によるエネルギー資源・水資源の不足や大気汚染、先進国では高齢化などの問題が一層顕在化しています。次世代の人々が幸せに暮らせる地球を継承していくためには、ICTを核とするイノベーションにより、新興国を含めた社会全体の生産性を向上させていく必要があります。

デジタル社会の持続可能な発展もまた重要な課題です。ICTは社会やビジネスが継続するために不可欠な資源です。人々の幸せな生活に綺麗な水や安定したエネルギー供給が必要であるのと同様、デジタル社会では個人情報やビジネスデータなどの資源は適切に活用されなければなりません。富士通はICT企業の社会的責任として、安心・安全な情報通信ネットワーク環境を守るため、サイバー攻撃などのデジタル社会で高まるリスクに対して、世界の関係機関と連携して問題に取り組んでいきます。

そして、富士通自身が持続的に社会で事業を行うために、国連グローバル・コンパクトの署名企業として「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」の4分野10原則を支持し、グローバル企業として責任ある経営を実践しています。またISO26000の枠組みを活用し、グローバルマトリクス体制のもと、例外を設けることなく、社会的責任に関する活動のレビューと改善に取り組みます。

私自身も、人を幸せにする会社であり続けるために、ブランドプロミス「shaping tomorrow with you」に基づいてお客様やグローバルなステークホルダーの皆様の期待と要請に耳を傾け、持続可能な発展に貢献する経営を実践していきます。

利益還元と配当政策についての考え方

当社の利益配分に関する方針は、株主の皆様に安定的な剰余金の配当を実施するとともに、財務体質の強化および業績の中長期的な向上を踏まえた積極的な事業展開に備えるため、適正な水準まで内部留保を充実することです。また、利益水準を勘案しつつ内部留保を十分留保できた場合には、自己株式の取得など、より積極的な株主の皆様への利益還元を行うことを目指しています。

2015年3月期連結の営業利益および親会社所有者帰属当期利益は前期比で増益となりました。しかしながら、親会社所有者帰属持分(自己資本)は、従業員の退職給付に係る積立不足額を連結財政状態計算書に計上する前の水準には届いておらず、回復途上にあります。また、2016年3月期の連結業績は、米ドルに対しユーロ安が急速に進行した影響を受け一部の欧州拠点の業績が悪化するほか、ビジネスモデルの変革を加速させるための戦略投資も見込んでいることから、前期に比べ減益となる見込みです。
このような状況を踏まえ、2015年3月期の年間配当は、中間配当4円、期末配当4円の、1株当たり8円とさせていただきました。

年間配当の内訳と推移の数値

株主・投資家の皆様へのメッセージ

私の好きな言葉は、私が富士通に入社した頃のスローガン「信頼と創造の富士通」ですが、これは、"お客様に信頼されて創造していく"、ということであると理解しています。
株主・投資家の皆様、ステークホルダーの皆様に対してもこの考えを基本とし、透明性のある経営を行うことで信頼していただけるようにありたいと考えています。また、継続的に創造力を持って事業を発展させていくことで企業価値を向上させてさらなる信頼につなげ、持続的な「信頼と創造」の連鎖となるような形としていくことが理想です。そのためにも、株主や株式市場の皆様との対話を増やし、当社が進める「ビジネスモデル変革」の進捗や目指す姿に向けた成果をお示しすることで、当社の戦略や経営に対する理解促進に努める所存です。富士通の今後にぜひご期待ください。

富士通グループ統合レポート(PDF版)

株主・投資家の皆様へ (1.14 MB / A4, 8ページ)