[ PRESS RELEASE ](技術) |
2005-0015
2005年2月7日
株式会社富士通研究所 |
高性能デジタル民生機器向けのマルチコアプロセッサを開発
〜4CPUコアを1チップに集積、ハイビジョンデジタルTVの画像処理をソフトウェアで実現〜
今回開発した技術は、高い画像処理能力が要求されるハイビジョンデジタルテレビ、高精細プリンティングシステム、アミューズメント機器などデジタル民生機器向けLSIの高性能化・多機能化・開発短期化に対応するための技術です。
本技術の詳細は、2月6日から米国サンフランシスコで開催されている国際固体素子回路会議ISSCC2005 (International Solid-State Circuits Conference 2005)で発表します。
【開発の背景】
高精細ハイビジョンデジタル放送や1600万画素を超えるようなデジタルカメラの普及により、大量のデータを高速に取り扱う画像処理・データ転送処理が必要となっています。このような処理には、従来、専用LSIが使われてきました。しかし、専用LSIでは機能が固定されてしまうため、製品の仕様変更・バージョンアップ・機能追加などに短期間で対応することが困難でした。このため、ソフトウェアだけでこれらの変更に対応できる高性能な組み込み型プロセッサが求められています。
【課題】
しかし、ワークステーションやPC向けの消費電力が大きいプロセッサとは異なり、低消費電力で動作しなければならない組み込み型プロセッサで大量の画像処理などに対応するには、処理性能やデータ転送性能が不足していました。また、高性能化と低消費電力化とを実現しようとすると、一般にLSIが電源ノイズ(雑音)の影響を受けやすくなるため、プリント基板上に実装した段階での誤動作がおきやすくなってしまいます。
【開発した技術】
今回開発したのは、8命令まで同時に実行できる32ビットプロセッサコア「FR550」を4個搭載した、組み込み用途向けの1チップマルチコアプロセッサです。プロセッサの作製には90ナノメートルテクノロジーを用いています。また、今回新たに、高精度の電源ノイズ解析環境を開発し、プリント基板上に実装した状態での高精度シミュレーションを実現しました。
開発した技術の特長は、以下の通りです。
マルチコアプロセッサ向けアーキテクチャー
今回新たに、4つのプロセッサコアと2つのデータ転送機能をそれぞれ独立に並行して実行させる独自のプロセッサアーキテクチャーを開発しました。マルチコアプロセッサとしての特性を活かした、高い処理能力とデータ転送能力を実現する技術です。
マルチコアプロセッサ向けソフトウェア開発環境
従来の「FR550」用のソフトウェア開発環境との互換を維持しながら、これをマルチプロセッサ対応としました。本環境を用いることにより、従来と同様の手法で本格的なマルチプロセッサ用のプログラムの開発が可能になりました。
高精度の電源ノイズ解析シミュレーション環境
LSIをプリント基板上で実際に動作させたときの電源ノイズを高精度にシミュレーションできる環境を開発しました。プリント基板上で動作させた時のLSIに対する電源ノイズの影響を、実際のLSI製造前の設計段階で検証可能としました。
【効果】
今回開発した技術により、従来比で4倍以上となる画像処理性能とデータ転送性能を持つ、組み込み用途向けの高性能1チップマルチコアプロセッサが実現しました。毎秒512億回のメディア処理計算と1ギガバイトのデータ転送の同時処理を実現しています。本性能により、組み込み用途向けのプロセッサとしては世界で初めて、非常に高い処理能力が求められるMPEG2 MP@HL(注3)で符号化されたハイビジョンデジタル放送用の1920×1080ドットのカラー動画の復元処理を、ソフトウェアのみで実現しました。
また、今回開発したプロセッサの消費電力は、パソコンなどに使われるCPUの消費電力(50ワットレベル)に比べて大幅に小さい3ワットであり、高い性能を持ちながら、組み込み用途向けプロセッサとしての条件を満たしています。
さらに、今回開発した高精度の電源ノイズ解析シミュレーションにより、本プロセッサは高性能化と低消費電力化を両立させながら、プリント基板実装時の最初の試験から安定した動作を確認できました。プリント基板実装試験の結果を反映させたプロセッサの再設計が必要とならず、再設計が必要となった場合に比べ、プロセッサ開発期間を約2か月以上短縮できました。
【今後】
今回開発したマルチコアプロセッサ技術について、富士通株式会社は、同社のFR-Vファミリー製品へと応用し、2005年度中に、高度な画像処理能力が必要とされる多機能プリンタなどのイメージング機器やアミューズメント機器向けに製品展開していく予定です。また、今後、富士通株式会社のゲノム創薬研究向け超並列シミュレーションサーバ「BioServer」(注4)にも、今回の技術を用いたFR-V展開製品を搭載していく予定です。
以上
図1 今回開発したマルチコアプロセッサ [クリックすると拡大表示されます]
内部DMAコントローラーはプロセッサ間のデータ転送を、外部DMAコントローラー・システムバスコントローラー・SDRAMコントローラーは外部とのデータ転送を実行。DMAコントローラーはそれぞれ、プロセッサコアとは独立に動作する。
注釈
関連リンク
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