PRESS RELEASE

2023年6月15日
富士通株式会社

自律分散型社会を支えるWeb3の中核を担うブロックチェーン連携技術を提供開始

アジア開発銀行様と証券のクロスボーダー決済に「ConnectionChain」を活用する実証実験を行い、有効性を確認

当社は、自律分散型社会を支える「Fujitsu Web3 Acceleration Platform」のデータトラスト基盤「Data e-TRUST」に、複数のブロックチェーンシステムを容易に連携できる当社独自の「ConnectionChain(コネクションチェーン)」技術を試験的に統合することで、複数の経済圏を柔軟かつ安心安全に連携できる試作環境を、当社グローバルパートナー共創プログラム「Fujitsu Accelerator Program for CaaS」に参画するパートナーを対象に、2023年6月30日から提供を開始します。

当社は、金融証券のクロスボーダー取引の効率性や安全性の向上に向けて、アジア開発銀行注1様やブロックチェーンベンダーのConsenSys Software Inc.注2(以下、ConsenSys)様、R3注3様、ソラミツ注4様と共同で、2022年1月から1年間、「ConnectionChain」技術の実証実験を行い、有効性確認を経て、今回の提供に至りました。

今後、当社は、金融業界だけでなく、流通業界や製造業界なども含む幅広い決済などへの活用を目指し、様々なパートナーとの実証実験を行うことで、ブロックチェーンをはじめとするWeb3技術の社会実装をさらに進めるとともに、サステナブルな世界の実現を目指す「Fujitsu Uvance」のもと、コネクテッドな社会を実現するデジタルインフラである「Hybrid IT」を通じて新たな市場を創出していきます。

背景

近年、巨大企業に情報収集と発信の権限が集中するインターネットの中央集権化が問題視されつつあり、デジタル空間上で個人や企業が相互に安心してつながることができる自律分散型社会の実現に向けてWeb3が注目されています。Web3を構成するブロックチェーン技術は十分な処理性能の確保などの技術的な課題が未解決であり、独自の機能強化を図った様々なブロックチェーン基盤が構築されたため、今後、業界横断的な企業間コラボレーションを推進していくためには、異なるブロックチェーン同士を連携して情報をやりとりできる相互運用性(インターオペラビリティ)が不可欠です。当社は、このインターオペラビリティの確保を容易に実現できるブロックチェーン連携技術「ConnectionChain」を開発したほか、DLT基盤注5の台帳操作を抽象化してデジタル資産を管理する分散型台帳を統合的に管理するオープンソースソフトウェア(OSS)の開発プロジェクト「Hyperledger Cacti」において中核メンバーとして活動しています。

「Data e-TRUST」に追加する開発機能

当社の「Fujitsu Web3 Acceleration Platform」では、高度なコンピューティング技術とソフトウェア技術を誰もが容易に利用できるサービス群「Fujitsu Computing as a Service」(以下、「CaaS」)上でデータトラスト基盤「Data e-TRUST」を提供しています。今回、「Data e-TRUST」に新たに追加する「ConnectionChain」は、複数の外部のブロックチェーンが一つの整合性を持ったシステムとして動作させることを可能とする「拡張スマートコントラクト」を自律動作させる特長を有しています。異なる種類のブロックチェーンを連携するためには、各ブロックチェーンの仕様の違いを吸収する連携部の開発が必要ですが、ブロックチェーンの種類ごとに開発が必要となるため、インターオペラビリティ確保を開発テーマにHyperledger Foundation注6にて活動している「Hyperledger Cacti」で開発した多様な分散型台帳基盤へ連携するためのプラグイン(以下「Cacti-LP」)を取り込むことで、この開発を効率化しています。これにより、「Hyperledger Cacti」がサポートする多様なブロックチェーンへの連携が「Data e-TRUST」から可能となり、新たなWeb3サービスの構築が容易となります。

また、「Hyperledger Cacti」をサポートする他社ブロックチェーンから当社の「Data e-TRUST」へ連携するための「Cacti-LP」も開発し、そのソースコードを「Hyperledger Cacti」の開発コミュニティに寄贈することにより、「Hyperledger Cacti」を介した外部パートナー企業とのWeb3サービス提供を加速します。

図1:「Data e-TRUST」への台帳連携機能の追加図1:「Data e-TRUST」への台帳連携機能の追加

「ConnectionChain」を活用した実証実験について

当社は、アジア開発銀行様や、ブロックチェーンベンダーのConsenSys様、R3様、ソラミツ様と協力し、各国の中央銀行や証券決済機関での利用を想定して、海外送金と証券の引き渡しを同時に行う、クロスボーダー取引注7の効率性や安全性の向上を目指すプロジェクトにおいて、「ConnectionChain」により各社のネットワークを相互に連携するシステムを構築し、動作確認に成功しました。本プロジェクトは、欧米のグローバルセンター経由による時差や市場取引時間の相違などの理由から、決済に最低でも2日はかかっているASEANや日中韓地域におけるクロスボーダーの証券取引の効率性や安全性の向上を図る実証実験です。実証実験では、取引に関わる金融機関全体で守られている現行の取引ルールを模した試験的なブロックチェーン環境上に、法定通貨2つの銀行残高を管理する台帳と、証券の所有権を管理する台帳を実際に構築し、「ConnectionChain」によって相互連携させる実験を行い、クロスボーダー取引の実現を確認しました。

詳細についてはこちらからご覧ください。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

注釈

  • 注1
    アジア開発銀行:
    本部 フィリピン マニラ首都圏、総裁 浅川雅嗣
  • 注2
    ConsenSys Software Inc:
    本社 米国 テキサス州、Founder Joseph Lubin
  • 注3
    R3:
    本社 米国 ニューヨーク州、Founder David E. Rutter
  • 注4
    ソラミツ(SORAMITSU):
    本社 スイス ツーク州、創立者 武宮誠
  • 注5
    DLT基盤:
    ネットワークの参加者間で権利の移転を相互認証し、暗号技術を用いて実質的に改ざん不可能な形で台帳を共有する技術基盤
  • 注6
    Hyperledger Foundation:
    米国の非営利団体「The Linux Foundation」の傘下にある、ブロックチェーンオープンソースコミュニティ
  • 注7
    クロスボーダー取引:
    国境を越えて複数国の間で行われる取引

関連リンク

※株式会社富士通研究所は、2021年4月1日付で富士通株式会社に統合。

当社のSDGsへの貢献について

2015年に国連で採択された持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)は、世界全体が2030年までに達成すべき共通の目標です。当社のパーパス(存在意義)である「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」は、SDGsへの貢献を約束するものです。

本件が貢献を目指す主なSDGs

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