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PRESS RELEASE

2020年4月15日
富士通株式会社

国内初、海上交通管制におけるAIを活用した船舶の衝突リスク予測技術の実証実験を実施

当社は、海上保安庁様から請負契約により、海上交通管制業務を行う東京湾海上交通センター(注1)において、当社が開発した船舶同士のニアミスを予測するAIを活用した船舶の衝突リスク予測技術の実証実験を2019年12月6日から2020年3月23日までの期間、国内の海上交通管制で初めて実施し、衝突リスクの早期発見への有効性を確認しました。

本実証実験では、株式会社富士通研究所(注2)が開発したAI技術「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」を用いた船舶の衝突リスク予測技術を活用し、東京湾において船舶衝突リスクの検知と衝突リスクの集中するエリアを予測することが可能であるかについて検証を行いました。今回、本技術を海上交通管制業務で使用されるVTSシステム(注3)へ適用することで、予防的なリスク回避に貢献し、海上交通の安全性向上につながることが確認できました。

当社は、2020年4月より安全航行支援に関わる事業体制を強化し、本技術を取り入れた海上交通管制や運航船舶向けの安全航行支援のサービス化を推進していきます。

背景

運輸安全委員会(注4)の発表によると、2009年から2019年に発生した船舶衝突事故は日本だけでも2,863件で、年間平均286件発生しています。大型船舶の衝突事故が発生した場合、船員の人命や船舶の破損、海洋汚染など多大な影響を社会に及ぼすことになります。

海上保安庁様は、交通量の多い航路等において、レーダーおよび船舶自動識別装置(Automatic Identification System 、以下、AIS)を組み合わせたVTSシステムを運用し、海上交通センターなどで航行支援を行うことで、海上交通の安全を図っています。しかし、多数の船舶の動きを認知・予測し、危険性を判断することは容易ではなく、危険回避の情報提供を、どの船舶に対し、どのタイミングで行うかといった判断は、運用管制官の経験や技量に依存しているといった課題があります。

こうした課題を解決するため、海上保安庁様主導のもと、本技術を東京湾における海上交通管制業務に適用し、衝突リスクの早期発見や船舶への情報提供等のタイミングの適正化など、海上交通の安全性向上への効果を検証する実証実験を行いました。

実証実験の概要

  1. 日時

    2019年12月6日(金曜日)から2020年3月23日(月曜日)まで

  2. 場所

    東京湾海上交通センター(所在地:神奈川県横浜市中区)

  3. 実証内容
    • 東京湾海上交通センターの訓練環境を用いて、現職の運用管制官6名が、過去に発生したヒヤリハット事例を再現した疑似オペレーションをすることでより実践的な効果検証を実施。
    • 運用管制官が自身の経験や技量に基づき船舶の動きを認知・予測し、危険性を判断する従来通りの業務手法(以下、評価1)と、従来通りの手法に加え、海上保安庁様から受領した過去のAISデータを活用し、船舶の衝突リスク予測技術で計算したリスク情報を運用管制官が確認しながら業務を行う手法(以下、評価2)をそれぞれ実施。
    • 監視するエリアや運用管制官の経験や技量の違いなど、延べ36パターンを分析し、その変化を考察。

船舶の衝突リスク予測技術のイメージ
船舶の衝突リスク予測技術のイメージ

運用管制官の業務における実用性評価
運用管制官の業務における実用性評価

  1. 実証結果
    • 統計分析の結果、評価1に比べ評価2では、運用管制官の船舶に対する注意喚起の警告のタイミングが平均して2分程度早まり、衝突リスクのある船舶の早期発見に効果があることを確認。
    • また、最終的に衝突リスクがさらに高まった船舶に対して行う危険回避の勧告の回数が従来に比べ2倍近くまで増加し、より積極的かつ予防的に管制を行い、安全性強化につながる可能性を確認。
    • 本技術は、衝突リスクという定性的な状態を定量化して運用管制官に認識させることにより、運用管制官の経験、技量に依存することなく、一定のレベルで業務の遂行が可能となることを確認。そのなかでも特に経験年数が浅い新人の運用管制官に対して大きな効果があり、新人でも経験豊富なベテラン運用管制官同等の管制アクションが可能となる場合もあり、運用管制官の技量の平準化にも効果があることがわかった。

東京湾海上交通センター運用管制官による評価の様子
東京湾海上交通センター運用管制官による評価の様子

今後の展開

今後、本実証実験の結果に基づき、海上保安庁様とさらに技術の高度化を図ります。そして、早期の海上交通管制や運航船舶向けの安全航行支援のサービス化を目指します。

海上保安庁交通部のコメント

今回の実証により、本技術が運用管制官の業務を支援するシステムとして有効に機能することが確認できました。今後、さらに複雑な交通状況における検証と精度の向上を図り、実用化を目指していきたいと思います。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 海上交通センター:
船舶の安全運行に必要な情報の提供と航行管制を一元的に行うことにより、輻輳海域における海上交通の安全を図っている。
注2 株式会社富士通研究所:
本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 原 裕貴。
注3 VTSシステム:
Vessel Traffic Servicesの略称。航行の安全性と効率性の向上を目的に、レーダーや船舶自動識別装置(AIS)などから取得される様々な船舶情報を集約し、船舶に対し必要な情報を提供するために用いられる。
注4 運輸安全委員会:
国土交通省の外局の一つである。 航空事故・鉄道事故・船舶事故または重大インシデントの原因究明調査を行うとともに、調査結果に基づいて国土交通大臣または原因関係者に対し必要な施策・措置の実施を求め、事故の防止および被害の軽減を図っている。

関連リンク

本件に関するお問い合わせ

富士通コンタクトライン(総合窓口)
電話 0120-933-200
受付時間: 9時~17時30分(土曜日・日曜日・祝日・当社指定の休業日を除く)


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