PRESS RELEASE
2019年4月2日
富士通株式会社
シンガポール海事港湾庁と
AIを活用した船舶の衝突リスク予測技術の効果を検証
当社は、2018年4月よりシンガポール海事港湾庁(注1、以下 MPA)の協力のもとで進めてきた、シンガポール海峡の海上交通リスクを分析する実証実験を通じて、このたび、船舶同士のニアミスを予測するAIを活用した、船舶の衝突リスク予測技術の有効性を検証しました。
本技術は、株式会社富士通研究所(注2)が開発したAI技術「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」を用いて、船舶衝突リスクの検知と衝突リスクの集中する動的リスクホットスポットを予測することができます。今回の検証により、当社の技術が海上交通管制業務で使用されるVTSシステム(注3)へ適用されることで、予防的なリスク回避に貢献し、航行の安全性向上へつながることが確認できました。
当社は、2020年までに、本技術を取り入れた海上交通管制や運航船舶向けのサービス提供を目指します。
当社は、今回の技術検証を含む一連の研究成果について、4月1日(月曜日)から4月5日(金曜日)にシンガポールで開催されている、IALA(注4) e-Navigation Information Services and Communications第23回委員会で発表します。また、本技術や船舶の安全航行支援における当社の取り組みについて、4月9日(火曜日)から4月11日(木曜日)にシンガポールで開催される、Sea Asia 2019で紹介する予定です。
背景
世界的に交通量の多い航路において、海上交通を管理するセンターでは、VTSシステムから出される船舶同士の異常接近を警告するアラートをもとに、船舶への情報提供を行い、航行を支援しています。しかし、船舶業務や、船舶とセンター間の意思疎通が複雑になるにつれて、特に、シンガポールのような交通量の多い海域では、より高度に交通状況を分析し、船舶の動向を事前に検知・予測することが衝突リスクを軽減する上で重要となっています。
当社と富士通研究所は、これらの課題に対し、船舶衝突リスク検知および動的リスクホットスポット予測の技術を研究開発してきました。
検証概要について
当社は、MPAの海上交通管制部門と港湾システム部門の約10名の職員の協力のもと、以下の検証を行いました。内容および結果は、以下の通りです。
- 検証内容
当社の衝突リスク予測技術を活用して、MPAから提供された過去のシンガポール海峡の交通データから、複数船舶の衝突やニアミスの事例と、動的リスクホットスポットの発生事例などの抽出を行い、それらがMPAの管制官による危険の判断基準と照らし合わせ、一致しているかどうか確認することで、予測技術の精度を評価しました。
図1 衝突リスク検知の画面イメージ
拡大イメージ
図2 動的リスクホットスポット予測の画面イメージ
拡大イメージ - 検証結果
当社の衝突リスク検知技術により、管制官がリスクを認知するより前に、そのリスクをより高精度に定量化できることが確認できました。これにより、ニアミスの起こる10分前に、本技術が潜在的なリスクを検知し注意を促すことで、管制官が船舶への注意喚起などを実施するための5分ほどのリードタイムの確保、また、人間が見落としがちな衝突リスクも正確に検知し、警告することもできました。
さらに、動的リスクホットスポット予測技術により、事象発生のおよそ15分前までにリスクを検知し、リスク回避に向けた具体的なアクションが可能であることを確認できました。
今後の展開
今後、当社は本技術検証の結果に基づき、MPAとさらに技術の高度化を図ります。そして、2020年までに海上交通管制や運航船舶向けの安全航行支援ソリューションの提供を目指します。
以上
注釈
- 注1 シンガポール海事港湾庁(Maritime and Port Authority of Singapore):
- 所在地 シンガポール、代表 Andrew Tan。
- 注2 富士通研究所:
- 本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 古田 英範。
- 注3 VTSシステム:
- Vessel Traffic Servicesの略。航行の安全性と効率性の向上を目的に、船舶自動識別装置(AIS)などから取得される様々な船舶情報を集約し、船舶に対し必要な情報を提供するために用いられる。
- 注4 IALA:
- International Association of Marine Aids to Navigation and Lighthouse Authorities(国際航路標識協会)の略。国際海事機関、国際電気通信連合、国際水路機関等、海事関係国際機関と密接な連携を保ちながら、航路標識に関する情報や資料の交換、航路標識システムの標準化等を行い、加盟国の技術向上等航路標識の発展を図っている非政府機関である。
関連リンク
- 「富士通・SMU・A*STAR、シンガポール海事港湾庁と海上交通マネジメント技術を活用した実証実験を開始」(2018年4月16日プレスリリース)
本件に関するお問い合わせ
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