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PRESS RELEASE (技術)

2016年3月23日
株式会社富士通研究所

世界初!ソフトウェアによるサーバ電源交換時期の自己診断を実現

デジタル制御電源にソフトウェアとして実装、運用効率と信頼性を向上

株式会社富士通研究所(注1)(以下、富士通研究所)は、サーバなどICT機器に搭載されているデジタル制御電源のマイコン上にソフトウェアとして実装可能な、電源の交換時期の自己診断技術を開発しました。

ICT機器に搭載されている電源は寿命部品であり、特にデータセンターなど大規模な用途では効率的な保守が課題となっています。

今回、富士通研究所独自の電源のモデルベース開発技術(注2)を用いて、電源の劣化による制御回路上の信号変化の解析に成功し、電源制御のマイコンがこれまで利用していた情報のみから電源の劣化を測定する新しい方式を開発しました。

開発した方式を、電源のモデルベース開発技術を用いた評価環境上にソフトウェア実装し、電源の劣化を監視する部品を追加することなく、交換時期を自己診断できることを確認しました。

本技術により、データセンターなどの運用において、電源の交換を計画的に行う事が可能となり、保守コストの低減と信頼性の向上を実現します。

本技術の詳細は、3月20日(日曜日)から米国カリフォルニア州で開催の国際会議「APEC2016 (The Applied Power Electronics Conference and Exposition 2016)」にて発表します。

開発の背景

サーバを初めとするICT機器に搭載されている電源は寿命を持つ部品であり、複数の電源を並列に配置し、一方が故障しても継続して動作できるような冗長な構成を取ることにより、信頼性を上げています。しかし、データセンターなどの大規模な用途では電源自体の数が増えることにより、電源の故障、交換に関わる保守コストは増大します。このため、電源の寿命や劣化状況を可視化し、効率的な保守を実現する技術が求められています。

課題

電源を構成する部品の中で、入出力を安定化させる電解コンデンサーは、最も劣化しやすいものの一つとして知られています。これまでにもサーバなどを通常運用しながら、その動作に影響を与えずに電解コンデンサーの劣化を監視する方法として、スイッチング電源におけるスイッチのオン・オフに伴う出力電圧の変動であるリップルを監視する方法が提案されていますが、リップルの大きさは出力電圧の数%程度と小さいため、リップルを高精度に測定する追加部品が必要となり、実装面積や部品コストの要求が厳しいICT機器の電源用としては実用化されていませんでした。

開発した技術

今回、富士通研究所独自のデジタル制御電源のモデルベース開発技術を用いた電源の劣化による制御回路上の信号変化を解析する技術により、これまで電源の制御で用いていた情報のみから電源の交換時期を判定する新しい方式を開発しました。

電源制御のソフトウェア開発においては高精度なタイミングで回路を制御する必要があるため、ソフトウェアによる機能追加や検証が困難でしたが、これについてもデジタル制御電源のモデルベース開発技術を用いることで開発の効率化を実現します。

開発した技術は以下のとおりです。

  1. 電源制御回路の信号解析技術

    電源の制御に使用する内部信号は、観測するための測定器を接続するだけで、測定器からのノイズに影響され電源の動作に影響を与えてしまうため、これまで制御回路内部の状態を観測することは困難でした。

    今回、電源モデルベース開発技術を応用した解析環境を構築することで、回路内部の直接の観測に成功しました。電解コンデンサーの劣化度合いを変動させて取得したデータを解析した結果、電源出力の急変時の出力電圧を分析することにより電解コンデンサーの劣化が測定できることがわかりました(図1)。

    図1 マイコンが取り込んでいる出力電圧信号(負荷変動時)
    図1 マイコンが取り込んでいる出力電圧信号(負荷変動時)

  2. 新しい電源交換時期の判定方式

    制御マイコンが取り込んでいるデータをもとに、普段、ICT機器が動作しているときに発生する負荷変動量に対する出力電圧の変動量と、電解コンデンサーの劣化度の関係(図2)から、電源の交換時期を判定する新しい方式を開発しました。

    図2 電解コンデンサーの劣化の進行と電圧変動量
    図2 電解コンデンサーの劣化の進行と電圧変動量

効果

今回開発した技術により、部品を追加せずにサーバなどICT機器に搭載したデジタル制御電源に交換時期の自己診断機能を追加可能です。本技術は、例えば夜間のバックアップジョブなどの負荷増加でも電源の劣化を測定することができるため、日常的な運用の中で電源の交換時期診断を実現できます。これにより、計画的に電源の交換が可能となり、データセンターの保守コストの低減、信頼性向上に貢献します。

今後

富士通研究所は、本技術を搭載した電源の実機試作とサーバに接続した実証実験を進め、2018年の実用化を目指します。今後、自己診断の対象となる部品の拡張や、要交換となった電源が接続されたサーバから、動作中の作業を別のサーバに待避させるといった連携機能などの機能追加をすすめ、さらなるサーバ保守コストの低減、信頼性向上を推進して行きます。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 株式会社富士通研究所:
本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 佐相秀幸。
注2 富士通研究所独自の電源のモデルベース開発技術:
世界初!デジタル制御電源向けの高効率・高信頼な開発プロセスを実現 (2014年10月29日)
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2014/10/29.html

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
コンピュータシステム研究所
電話 044-754-2931
メール mbd-staff@ml.labs.fujitsu.com


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