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PRESS RELEASE (技術)

2012年9月19日
株式会社富士通研究所
Fujitsu Laboratories of America, Inc.
富士通株式会社

世界初!運用中の光ネットワーク資源の利用効率を高める技術を開発し、通信容量を40%改善

新規回線開通の時間短縮と、ネットワーク機器の削減による低消費電力化を実現

株式会社富士通研究所(注1)、Fujitsu Laboratories of America, Inc.(注2)と富士通株式会社は、将来の長距離、都市間の光ネットワークに向けて、世界で初めてサービスを中断することなく、光ネットワーク資源の構成を動的に変更し、利用効率を高める技術を開発しました。

近年、データセンターを中心とするクラウド型サービスや、スマートフォンなどの普及に伴い、ネットワークを活用したさまざまなサービスが提供されつつあります。一方、それを支えるコアネットワークにおいては、オンデマンド型で提供されるサービスに向けた新規回線開通までの時間短縮や、大容量化とあわせたネットワーク機器の低消費電力化が重要となっています。今回、光信号の波長、変調方式、経路に制約のない「フレキシブル光ノード」と、それらを用いて運用中の光ネットワーク資源の利用効率を高める、「波長デフラグメンテーション(注3)技術」を開発しました。これにより、光ネットワークの通信容量を最大40%改善することが可能となります。

本技術により、光ネットワークの構成を必要に応じて柔軟に変更でき、ネットワーク資源の利用効率が向上するため、新規回線開通までに必要となる時間を短縮し、さらにネットワーク機器の削減による低消費電力化が可能となります。

本件で開発した技術の効果検証実験に使用したデジタル信号処理LSIは、総務省からの委託研究「超高速光伝送技術の研究開発」によるものです。

本技術は、9月16日から20日までオランダ アムステルダムで開催される国際会議「European Conference on Optical Communications(ECOC) 2012」にて発表します。

開発の背景

大規模なデータセンターを中心として展開されるクラウド型サービスや、スマートフォンに代表される高速モバイル端末でのさまざまなアプリケーション利用、またセンサーネットワークなどのM2M(Machine to Machine)型通信など、ネットワークの利用形態は日々刻々と変化を続けています。一方、それを支えるコアネットワークにおいては、光ファイバーネットワーク技術により、1チャンネル当たり毎秒100ギガビット(以下、Gbps)級システムの実用化が始まっており、今後、400Gbpsを超える伝送システムの提供が予定されています。これらの大容量化と同時に、オンデマンド型で提供されるサービスに向けた大容量通信経路の提供や、大規模災害時における迅速な迂回経路の提供、動的に経路を再配置するための最適経路選択といった柔軟なネットワーク機能を、通信ノードでの消費電力の増加や、過剰な機器配置を必要とせずにエンドユーザに対して提供する必要があります。

課題

将来の大容量、かつ柔軟な光ネットワークを実現する課題として、以下があります。

  1. 光ネットワークでの利用可能な波長帯域、通信経路の制約

    現在の光送受信機、光スイッチノードには装置内で用いる光部品、電子部品の制約により、通信に用いる光波長や帯域、変調方式、通信経路が自由に設定できません。そのため、新規回線の開通には、人手による配線のつなぎ替えや、新たな装置の導入が必要となります。

  2. 運用中での通信経路の変更に伴う、光波長利用効率の低下

    ネットワーク運用中に光波長の経路が頻繁に変更されることによって、初期設定時には、ネットワーク利用効率を最適にするために割り当てられていた光信号の配置に、断片的な未使用領域 (フラグメンテーション) が発生します。この未使用領域によって、新規回線の開通に必要となる光ファイバー通信経路・帯域割り当てが出来ないために、伝送装置の利用効率が下がります。

開発技術

上記の課題を解決するために、今回、サービスを中断することなく、光ネットワーク資源の構成を動的に変更し、利用効率を高める技術を開発しました。その特徴を以下に示します。

  1. ネットワークの構成をソフトウェア上で変更可能なフレキシブル光ノード(光送受信機、光スイッチ)

    光送受信機は、デジタル信号処理技術により、伝送方式をソフトウェア的に変更可能とする「ユニバーサル送受信機」構成としました。長距離伝送向けユーザに対しては、長距離伝送に適した、雑音に対する耐性の高い変調方式で比較的帯域幅の広い伝送方式に設定できます。また、短距離伝送向けユーザに対しては、短距離伝送に適した、雑音に対する耐性は高くないものの、周波数利用効率の高い伝送方式に設定することが可能です。

    光スイッチノードについては、通信帯域幅が変更可能で、複数の通信経路が選択可能な光スイッチ技術により、通信経路の設定をソフトウェア的に設定することが可能です。これらを組み合わせることにより、1つの光送受信機を複数のユーザ間で共有し、ユーザの要求に応じて柔軟に設定、組合せ可能となるフレキシブル光ノードを実現しています(図1)。


    図1 フレキシブル光ノード技術を用いた光ネットワーク

  2. 波長デフラグメンテーションによる、ネットワーク運用中での波長資源の利用効率向上

    光波長の断片化された領域を、連続した領域に集約することで、大容量データへ割り当て可能な帯域を確保するデフラグメンテーションアルゴリズムを適用したネットワーク制御方式を開発しました。フレキシブル光ノード装置構成を用いて、断片化された光波長資源を、400Gbps級の広帯域信号に割り当て可能なサイズの波長帯域に、ネットワーク運用中に連続的に集約します。生成された波長帯域に、適切に設定された光信号を収容することで、波長資源の利用効率を向上できます。

    今回、試作した4台の光スイッチノードが存在するネットワーク環境において、サービスを中断することなく、デジタル信号処理技術を用いる100GbpsのDP-QPSK光信号(注4)の移動を行う、デフラグメンテーション技術を世界で初めて実証しました。デフラグメンテーションによって使用可能となった信号帯域を活用することで、光ネットワークの通信容量を40%改善することが可能となります。


    図2 デフラグメンテーションの効果

効果

本技術により、光ネットワークの構成を必要に応じて柔軟に変更でき、ネットワーク資源の利用効率が向上するため、新規回線開通までに必要となる時間を短縮し、ネットワーク機器の削減による低消費電力化が可能となります。

今後

400Gbps級の次世代インターフェースの標準化、製品化に向けて、ハードウェアの開発、およびネットワーク管理システムの研究開発を進めます。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 株式会社富士通研究所:
代表取締役社長 富田達夫、本社 神奈川県川崎市。
注2 Fujitsu Laboratories of America, Inc.:
社長 木村康則、本社 米国カリフォルニア州サニーベール。
注3 デフラグメンテーション:
ハードディスクなど、断片化されたデータ保存領域を集約して、大きなデータ領域を作成することで、光波長の断片化された領域を、連続した領域に集約することで、大容量データへ割り当て可能な帯域を確保すること。
注4 DP-QPSK光信号:
Dual-Polarization Quadrature Phase Shift Keying(偏波多重四値位相変調)。毎秒100ギガビットの光伝送システムで事実上の業界標準となっている変復調方式。

関連リンク

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
ネットワークシステム研究所
フォトニクス研究部
メール fson_pr@ml.labs.fujitsu.com


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