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PRESS RELEASE (技術)

2011年2月24日
株式会社富士通研究所

サーバ内のデータ伝送距離を約1.7倍延伸できる高速送受信回路を開発

高速化と長距離化を両立し高性能大規模サーバの構築を可能に

株式会社富士通研究所(注1)とFujitsu Laboratories of America, Inc.(注2)は、サーバを複数組み合わせて高性能化したマルチプロセッサ・サーバの通信経路として利用されるバックプレーン(注3)において、データの伝送距離を従来と比べて約1.7倍に延伸できる、毎秒10ギガビット(以下、Gbps)の多チャネル高速送受信回路を開発しました。

今回開発した技術により、伝送距離を長くした場合に顕在化する信号のひずみを効果的に補正し、従来技術では70cm程度だった伝送距離を約1.2m(注4)に延伸することが可能になります。今後、より多くのプロセッサを接続した大規模で高性能なサーバシステムの実現が期待されます。

本技術の詳細は、米国サンフランシスコで2月20日から開催される「国際固体素子回路会議ISSCC(IEEE International Solid State Circuits Conference)」にて発表しました。

開発の背景

クラウド・コンピューティングを支えるデータセンターでは、高性能・高密度なサーバシステムが求められており、ブレードサーバや大規模なマルチプロセッサ・サーバが広く活用されています。これらのサーバは、プロセッサやデータ通信用の集積回路を搭載したプリント配線板を、バックプレーンと呼ばれる相互接続用のプリント配線板を用いて高密度に接続し、互いにデータを通信しながら処理を行う構成となっています(図1)。

今後、より高性能なシステムを実現するためには、バックプレーンを通したデータ送受信を高速化し、かつ多数のプロセッサを結合する大規模化が必要となります。


図1 サーバのバックプレーンで利用される高速送受信回路

課題

バックプレーンを通して毎秒10 Gbpsと伝送速度を高速化していくと、伝送損失により信号がひずみ、データを正しく伝送できなくなります。さらに、信号のひずみが大きくなると、データの1と0を判定するためのクロック成分を精度良く抽出することも難しくなります。

信号のひずみは、伝送速度が高速なほど、また伝送距離が長いほど大きくなり、従来の多チャネル送受信回路では毎秒10Gbpsで70cm程度の配線距離(注5)が限界でした。そのため、本体の横幅が85cm程度ある大規模サーバのバックプレーンでは伝送の高速化が難しく、高速送受信回路の伝送距離を長距離化することが課題となっていました。

開発した技術

今回、バックプレーンの長距離配線で顕在化する振幅ひずみ(注6)に加えて位相ひずみ(注7)を補正する新しい信号処理アルゴリズムを開発し、毎秒10Gbpsで最大41デシベルという大きな損失による信号のひずみでもデータを正しく補正し伝送することが可能となりました。その結果、伝送距離を約1.2mと1.7倍長距離化することができました。

開発した技術の特徴は以下の通りです。

  1. 位相ひずみ補正

    バックプレーンの長距離配線で顕在化する位相ひずみに着目し、位相ひずみを検出して送信側と受信側の両方の信号補正回路(イコライザ回路)を同時に適応制御することで、データを正しく補正する技術を開発しました。

  2. 精度の高いクロック再生

    長距離配線によるひずみを補正した後も残ってしまうノイズ成分の影響を軽減するため、伝送データの中でノイズの影響が少ない部分を選択し、より正確なクロックを得る回路を開発しました。正確なクロックを抽出することで、データの1と0をより正しく判定できるようになりました。


図2 開発した技術

効果

今回の高速送受信回路を搭載した集積回路を用いることで、伝送速度を高速化しつつ伝送距離を伸ばすことができるため、プロセッサを多く搭載した大規模で高性能なサーバシステムが実現可能です。また、従来は信号のひずみを低減させるために損失が小さく高価な材料のプリント配線板を用いていたのに対して、損失が比較的大きい安価な材料のプリント配線板でも10Gbpsの高速伝送を実現できるようになり、コスト削減にもつながります。

今後

本技術を最新のプロセス技術へ展開し、高性能サーバシステム製品に適用していく予定です。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 株式会社富士通研究所:
FI代表取締役社長 富田達夫、本社 神奈川県川崎市。
注2 Fujitsu Laboratories of America, Inc.:
代表取締役社長 松本均、本社 米国カリフォルニア州サニーベール市。株式会社富士通研究所の米国拠点。
注3 バックプレーン:
多層プリント配線板にコネクターを高密度に実装し、サーバなどの回路基板を多数接続する通信用の回路基板の一種。高性能で高密度なサーバシステムの中心的な通信経路。ミッドプレーンと呼ばれる場合もある。
注4 伝送距離を約1.2m:
標準的に使用されるプリント基板材料(FR-4)を使用し、かつコネクターを2個経由した場合。
注5 毎秒10Gbpsで70cm程度の配線距離:
標準的に使用されるプリント基板材料(FR-4)を使用し、かつコネクターを2個経由した場合。
注6 振幅ひずみ:
信号の振幅が周波数により変化することが原因の波形ひずみ。
注7 位相ひずみ:
信号の伝搬遅延が周波数により変化することが原因の波形ひずみ。

関連リンク

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
ITシステム研究所 サーバテクノロジ研究部
電話 044-754-2177(直通)
メール hsio-info@ml.labs.fujitsu.com


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