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PRESS RELEASE (技術)

2009年2月12日
株式会社富士通研究所
Fujitsu Laboratories of America, Inc.

ブレードサーバの高速化を実現する多チャネル高速送受信回路を開発

~4チャネル×10Gbpsの高性能化と低消費電力化・小型化を実現~

株式会社富士通研究所(注1)とFujitsu Laboratories of America, Inc.(注2)は、サーバを複数組み合わせて高性能化するブレードサーバの通信経路として利用されるバックプレーン(注3)において、毎秒10ギガビット(以下、10Gbps、毎秒100億ビット)での伝送を実現する、低消費電力・小型な多チャネル高速送受信回路を開発しました。

今回開発した技術により、バックプレーンを4チャネル×10Gbpsで伝送可能な送受信回路を、従来の技術と比べて、約4分の1の消費電力、約2分の1の実装面積で実現することが可能となります。今後、ますます高密度実装、高速伝送、低消費電力が求められるブレードサーバのバックプレーンへの適用が期待されます。

本技術の詳細は、米国 サンフランシスコで2月8日から開催されている国際固体素子回路会議ISSCC(IEEE International Solid-State Circuits Conference)にて発表しました。(発表番号10.5)


背景

ITシステムにおいて、サーバの設置スペース削減や運用の効率化を目的に、ブレードサーバと呼ばれるCPUやメモリなどのサーバの機能を搭載した回路基板(以下、サーバブレード)を複数接続するサーバシステムが活用されています。ブレードサーバの高性能化を実現するために、複数のサーバブレードを相互接続する通信用の回路基板であるバックプレーンで、10Gpbsレベルの高速な伝送と、さらにその伝送を多チャネル化して高速化する技術が開発されています(図1)。一方、近年、グリーンITを実現するIT機器の省エネ化、高密度化に関心が高まり、サーバブレードおよび、サーバブレード間の伝送の中継を行なう回路基板(以下、スイッチブレード)に搭載される高速送受信回路に関しても、高性能化のみならず、省電力化、高密度化が求められています。


図 1 ブレードサーバにおけるバックプレーンと高速送受信回路

課題

バックプレーンで10Gbpsの伝送を実現する高速送受信回路では、バックプレーンで発生する伝送損失の補償とともに、クロストークや反射などに起因するノイズ(注4)の低減が重要です。ノイズを増幅せずに伝送損失を補償する従来の高速送受信回路では、十分な伝送損失補償を行なうためにイコライザ回路を多段にしなければならず、消費電力、実装面積、ともに大きなものとなっていました。従って、サーバシステムの高性能化と、省電力化、高密度化を両立する多チャネル高速送受信回路を実現するのは困難でした。


技術の概要

今回、2種類の異なるイコライザ回路(注5)の特長を活かした、伝送損失による信号のひずみを最小化する新しい受信イコライザ制御方式を開発し、受信イコライザ回路に搭載しました。この受信イコライザ回路は、10Gbps伝送の多チャネル化を可能にするとともに、イコライザ回路を多段にする必要がなく、高速化、消費電力の低減、バックプレーン伝送に必要な損失補償能力の達成、ノイズの低減を両立させました。また、開発した新しい受信イコライザ制御方式では、従来の方法で必要であった行列の乗算が不要となり、スカラー加減算で済むため、簡単な論理回路として、小さな面積に実装することが可能となりました。


効果

今回開発した技術を用いて、バックプレーンを10Gbpsで伝送可能な4チャネルの高速送受信回路を、90ナノメートルCMOS技術で開発し、バックプレーン経由で10Gpbsの伝送が行なえることを確認しました(図2)。

今回開発した技術を使わず、従来の技術で実現できる同等性能の高速送受信回路に比べて、今回開発した回路は、送受信回路のうち受信回路部分において、面積を約2分の1、消費電力を約4分の1にすることができます。


図 2 開発した高速送受信回路の写真

今回開発した技術により、送受信回路の規模が多チャネル化を可能とする実装面積となり、4チャネル化により性能を4倍にすることができます。これにより、10Gbpsのバックプレーン伝送を多チャネル化することができ、10Gbpsを超える伝送を実現することができます。


今後

本技術を使った高速送受信回路は、多チャネルの集積化という特長を活かし、高性能スイッチを実現するLSIに搭載することで、今後、高密度実装・高速伝送が要求されるブレードサーバ製品に適用される予定です。また、将来の40ギガイーサネットへの対応も可能となり、より高性能化、高密度化、低消費電力化が求められるサーバシステムへ本技術を展開していきます。

以上

注釈

  注1 株式会社富士通研究所:
代表取締役社長 村野和雄、本社 神奈川県川崎市。
  注2 Fujitsu Laboratories of America, Inc.:
代表取締役社長 松本均、米国カリフォルニア州、株式会社富士通研究所の米国拠点。
  注3 バックプレーン:
多層プリント配線板にコネクタを高密度に実装し、サーバなどの回路基板を多数接続する通信用の回路基板の一種。高性能で高密度なサーバシステムの中心的な通信経路。ミッドプレーンと呼ばれる場合もある。
  注4 クロストークや反射などに起因するノイズ:
クロストークは隣接した配線間への信号の漏れ、反射はコネクタなどの伝送特性の乱れによるノイズ。いずれも、高速な信号伝送の妨げとなる。
  注5 2種類の異なるイコライザ回路:
クロストークや反射を低減する1段のデシジョンフィードバックイコライザ回路と、伝送損失を補償するリニアイコライザ回路。従来、バックプレーンの伝送損失補償を行う場合、デシジョンフィードバックイコライザ回路は多段で利用する。

関連リンク

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
ITシステム研究所 サーバテクノロジ研究部
電話:044-754-2177 (直通)
E-mail: hsio-info@ml.labs.fujitsu.com


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