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PRESS RELEASE

2010年6月18日
富士通株式会社
株式会社富士通研究所
富士通セミコンダクター株式会社

平成22年度全国発明表彰「経済産業大臣発明賞」を受賞

富士通株式会社(以下、富士通)(注1)の半導体製造材料に関する発明が、このほど社団法人発明協会(注2)が主催する平成22年度全国発明表彰において、「経済産業大臣発明賞」を受賞しました。受賞対象は、1995年に富士通が出願し、2002年に特許として登録された「化学増幅型フォトレジスト用材料(注3)の発明(特許第3297272号)」です。

本発明は、先端の半導体大規模集積回路(LSI)を製造する際に回路のパターンを感光させる材料に関するもので、世界で初めて90~32ナノメートル(以下、nm)世代の先端LSI製造に適用可能な高感度・高解像性のフォトレジスト材料を実現したものです。本発明で実用化したフッ化アルゴン・エキシマレーザー(ArF)(注4)用のフォトレジスト材料は、先端LSI製造に欠かすことができない材料となり、たとえば現在の携帯機器などの小型・高機能・高性能化に貢献するなど、ICT社会の発展に大きく貢献しています。

本賞の表彰式は、7月30日(金曜日)に行われます。

全国発明表彰について

全国発明表彰は、皇室より毎年御下賜金を拝受し、わが国における発明、考案、または意匠の創作者ならびに発明の実施および奨励に関し、功績のあった方々を顕彰することにより、科学技術の向上および産業の発展に寄与することを目的としています。

その中でも「経済産業大臣発明賞」は、科学技術的に秀でた進歩性を有し、かつ顕著な実施効果をあげている発明で、特に優秀と認められるものに贈呈されるものです。

受賞者

[経済産業大臣発明賞]

受賞者:  野崎 耕司    株式会社富士通研究所(以下、富士通研究所)(注5
矢野 映    富士通研究所
渡部 慶二    富士通研究所
並木 崇久    富士通
小澤 美和    富士通研究所
牧野 庸子    元富士通研究所
武智 敏    富士通セミコンダクター株式会社(以下、富士通セミコンダクター)(注6
小太刀 明子    富士通セミコンダクター
高橋 真    元富士通
受賞技術:  化学増幅型フォトレジスト用材料の発明

受賞技術

  1. 背景と従来技術

    LSI製造は、微細化との戦いです。LSIは、シリコンウエハー基板上に大規模な回路を小さく形成する技術を用いて製造されています。微細化することで、1枚のウエハーから多数のLSIを製造してコストを低減することができ、性能や省電力性も向上してきました。

    微細化のためには、回路パターンをレーザー光で転写する過程(リソグラフィ工程)(図1)において、光源の波長を短くし、さらに、回路パターンが転写される感光性材料(レジスト)にも、その波長に最適な構造の材料を開発することが必要となります。

    本発明の出願当時(1995年)のレジストは、フッ化クリプトン・エキシマレーザー(KrF、波長248 nm)用レジストが最先端であり、21世紀初頭のDRAMやCPU、ロジックに必要とされた次世代のフッ化アルゴン・エキシマレーザー(ArF、波長193 nm)用レジストは開発途上にありました。

    レジストに対しては、適用する波長での感光に必要となる透明性、量産に必要となる感度と解像性、形成したパターンを下地の半導体膜や絶縁膜などに転写するためのエッチング耐性が求められます。しかし、従来のArF用レジストは、透明性やエッチング耐性は十分でしたが、材料の疎水性が高すぎることから、現像時に残ったカスが生じたり、形成したパターンが基板から剥がれやすく、LSIの量産適用に必要な感度や解像性を満たすことはできていませんでした。


    図1 リソグラフィ工程の概略
  2. 発明技術

    本発明では、独自の材料設計に基づき、新たな化学構造である「親水性の高いラクトン基」と「反応性の高い脱離型アダマンチル基」を組み合わせて導入したフッ化アルゴン・エキシマレーザー(ArF)用レジストの樹脂を新規に開発しました。これにより、従来レジストの疎水性による課題を解決し、フッ化アルゴン・エキシマレーザー(ArF)の波長である193 nmでの透明性、エッチング耐性、感度・解像性など、LSI製造に必要な全ての性能を満足する実用レベルのフッ化アルゴン・エキシマレーザー(ArF)用レジストを世界で初めて実現しました(図2)。


    図2 開発したArF用レジスト材料の構造、形成されたレジストパターン、およびLSI
  3. 産業上の応用

    本発明、および、関連特許技術は業界の標準技術となり、これらを利用したArF用レジストは、レジストメーカー各社から市場に出ています。そして、国内外の主要なLSIメーカーは、2001年以降、本発明のArF用レジストを用いて90~32 nm世代の先端LSIを量産しており、先端LSIの製造に不可欠な材料になっています。また、本発明の成果は、LSIが内蔵されるパソコンや携帯機器などの小型・高機能・高性能化によって、今日のICT社会の発展に大きく貢献しています。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

  注1 富士通株式会社:
執行役員社長 山本正已、本社 東京都港区。
  注2 社団法人発明協会:
総裁 常陸宮殿下、会長 豊田章一郎、所在地 東京都港区。
  注3 化学増幅型フォトレジスト用材料:
露光によってレジスト膜中に発生させた酸の触媒連鎖反応を利用する反応機構を持つレジスト材料。
  注4 フッ化アルゴン・エキシマレーザー:
アルゴンガスとフッ素ガスの混合ガス中で放電したときに発するレーザー光。90 nm以下の先端LSI製造の露光光源として用いられている。
  注5 株式会社富士通研究所:
代表取締役社長 富田達夫、本社 神奈川県川崎市。
  注6 富士通セミコンダクター株式会社:
代表取締役社長 岡田晴基、本社 神奈川県横浜市。

関連リンク

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
基盤技術研究所
電話: 046-250-8263 (直通)
E-mail: arf_resist_press@ml.labs.fujitsu.com


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