平成8年6月11日
富士通株式会社

世界初!4ギガビットVLSI用ArF露光技術の開発に成功

- マルチメディア時代に向けた大容量メモリの早期実現へ -

当社はこのほど、1ギガビット以降のDRAMの量産技術として期待されているフッ化アルゴン(ArF)を用いた露光技術の開発を行い、4ギガビットDRAM相当で、0.13umルールのパターン形成に世界で初めて成功いたしました。

ArF露光技術はICのパターンを焼き付ける光露光技術の一種です。その露光光源のArFエキシマレーザー(波長:193nm)は、従来より使われている水銀ランプ(波長:365 nm)よりかなり光の波長を短くする必要があるため、新しいレジスト(感光剤)材料などの開発が必要とされていました。
また、現在開発が進められている256メガビットDRAMではフッ化クリプトン(KrF)エキシマレーザー(波長:248nm)を用いるKrF露光技術が使用されていますが、1ギガビットDRAM以降に対してはその解像性能は十分ではなく、新しい露光技術の開発が必要とされていました。そのため光露光技術のほかにもX線露光技術,電子ビーム露光技術が研究されていますが、コストや量産性の点で光露光技術が最も優れており、新しい光露光技術の開発が望まれていました。

当社は、独自の脂環族系単層レジスト(2MAdMA-MLMA)*1と超解像技術を組み合せた光露光技術を開発し、1ギガビットDRAM以降に必要なパターン形成が可能になりました。
特に位相シフトマスク技術*2により0.12um(10万分の12ミリメートル)の最小線幅を実現しました。さらにこの技術を4 ギガビットDRAMに相当する0.13umルールのメモリセル(セル寸法:0.59um ×0.34um ,セル面積:0.20um2)に適用し、そのパターン形成に光露光技術として世界で初めて成功いたしました。

今回の開発によりArFエキシマレーザーを用いた光露光技術が4ギガビットDRAMに適用できるメドが立ち、将来のマルチディア社会に不可欠な大容量低価格メモリの早期実現に大きく前進いたしました。
今後とも、ArF露光技術の早期実用化に向けて開発を進めてまいりますが、開発を加速するために今回の開発の鍵となった脂環族系単層レジストについて複数のレジストメーカーに対し技術供与することを検討しています。

なお、本開発成果は6月12日にハワイで行われる国際会議VLSIテクノロジーシンポジウムにて発表いたします。

*1 ArF脂環族系単層レジスト:2MAdMA-MLMA
半導体集積回路(LSI)の高集積化は年々進行しており、1G-DRAM以降の製造には波長の短いArF(フッ化アルゴン)エキシマレーザ(波長193nm)が露光光源として使われると考えられる。しかしながら、既存のレジストはエッチング耐性を高めるためにベンゼン環を含んでおり、この波長の光を全く通さない。このため、感光させることができず、レジストとして機能しない。
富士通は、脂環構造が透明性とエッチング耐性を兼ね備えていることを見い出し、そのひとつであるアダマンチル基を側鎖に有するアクリル樹脂からなる化学増幅レジストを1992年に提案し、研究開発をすすめた。しかしながらパターニングに際し、汎用アルカリ現像液が使えない・密着性に欠けるという問題が生じた。
富士通研究所との共同開発により1995年に汎用アルカリ現像液が使え、良好な密着性をもつ新レジストを開発した。新レジストは2-メチル-2-アダマンチルメタクリレートーメバロニックラクトンメタクリレート共重合体を基材樹脂とする化学増幅レジストである。その透明性は0.7umで透過率70%以上と高く、0.15umサイズのパターンが4.7mJ/cm2 という高感度で形成可能で、ArF単層レジストとして世界最高レベルの性能を得ている。またそのエッチング耐性は現在量産に使われているノボラックレジスト並みであり、ArFリソグラフィーによる半導体集積回路の製造を可能にするものである。

*2 位相シフトマスク技術
光露光技術ではLSIパターンを焼き付けたガラス基板(マスク)を用いて、そのパターンをウェーハ上に転写する。従来、マスク上のパターンは、光を透過させるか遮光するかだけを決めていた。これに対し位相シフトマスクでは透過する光の位相を局所的に変化させることで、より微細なパターンを形成することができる。しかしながら、光の位相を精密に変化させる位相シフトを新たに付加する必要があるため、マスクの製造は難しくなるが、従来の露光装置を用いても解像性能が向上できる将来の光露光技術として期待されている。
以上


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