[ PRESS RELEASE ](技術) |
2003-0176
2003年9月29日
株式会社富士通研究所
富士通株式会社 |
MEMSミラーを用いた高速多チャネル光スイッチを開発
本技術の詳細は、9月21日からイタリア・リミニで開催された光通信の国際会議ECOC-IOOC 2003(European Conference on Optical Communication-International Conference on Integrated Optics and Optical Fibre Communication)で発表しました。
【開発の背景】
ブロードバンド・インターネットを流れる膨大なデータを効率的に伝送するため、光ファイバネットワークの有効運用や、ネットワーク相互接続などを行うクロスコネクト装置の需要が拡大しています。しかし従来の装置では、光信号を一旦電気信号に変換する必要があったため、WDM(*3)などの多重光信号を処理するには限界がありました。そのため、光信号をそのまま切替えることの可能なオール光型の光クロスコネクト装置の実用化が望まれています。
【課題】
多チャネル光クロスコネクト装置としては、MEMSミラーに光を反射させて、ミラーを偏向することで光路を立体的に切替える3次元型MEMS光スイッチが有望とされています。しかし従来の光スイッチではMEMSミラー自体の応答速度が遅く、さらに切替え時にミラーの機械的共振が発生するため、高速切替えが不可能でした。また、多チャネルにすると光スイッチのサイズが大きくなるという問題もありました。
【開発した技術】
今回開発したのは80チャネルの3次元MEMS型光スイッチです。その特長は、以下の通りです。
- 高速切替え技術
光信号切替え時に発生するMEMSミラーの機械的共振を抑圧するため、ノッチフィルタ(*4)を搭載し、MEMSミラー駆動電気波形からMEMSミラー共振周波数成分のみを除去しました。この制御技術と当社の開発した高速応答の櫛歯電極MEMSミラー(*5)により、信号切替え時間の高速化を実現しました。
- 小型光スイッチファブリック
光ファイバから入力した光を屋根型のミラーを用いて出力側に折り返す構造の光スイッチファブリック(図2、図3)を開発しました。平面ミラーで折り返す場合に比べて、光路長を半分に短縮することができ、光スイッチの小型化を可能としました。
- 光パワーレベル調整機能
MEMSミラーの偏向角度をフィードバックにより高精度に制御し、所定の光パワーレベルに調整する機能を内蔵しました。これにより、各チャネルの光パワーばらつきを補正することができ、従来光スイッチの外側に配置されていた可変光減衰器を不要とすることができます。
【効果】
これらの技術を用いることにより、多チャネル光スイッチとしては世界最高となる信号切替え時間1ミリ秒、光スイッチの小型化(150×400×300mm)、光パワー安定度±0.5dB以下を実現しました。
【今後】
今回開発した技術により、多チャネルMEMS光スイッチを光クロスコネクト用途のみならず、より高速切替えが必要な将来の光バーストスイッチング(*6)を用いたネットワークへ適用することが可能となります。今後は、さらなる多チャネル化、高速切替えの実現に向け、開発を加速していきます。
なお、本研究の一部は、通信・放送機構(TAO)の「光バーストスイッチングを用いたフォトニックネットワーク技術の研究開発」の委託契約に基づいて実施したものです。
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図1 開発した光スイッチ |
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図2 光スイッチファブリックの光学系 |
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図3 光スイッチファブリック |
以上
用語説明
- (*1)株式会社富士通研究所:
- 社長:藤崎道雄、本社:川崎市
- (*2)MEMS:
- Micro Electro Mechanical Systems の略で、微細な電気回路と機械的構造を一体化したものです。マイクロマシンともいわれます。
- (*3)WDM(Wavelength Division Multiple:波長分割多重):
- 搬送波の波長を変えて、一つの光ファイバに複数の光信号を多重する方式。波長の異なる光ビームは互いに干渉しないという性質を利用しているため、多重する光の数を増やすことによって光ファイバ上の情報伝送量を飛躍的に増大させることができます。
- (*4)ノッチフィルタ:
- ある範囲の周波数を持った信号の中から、特定の狭い範囲の周波数成分を除去するフィルタです。
- (*5)櫛歯電極型MEMSミラー:
- MEMSミラーを駆動する電極構造を櫛歯型とすることで、平行平板型構造に比べて高い駆動力を得ることができます。
- (*6)光バーストスイッチング:
- 一定のデータの固まりとして伝送されるバーストデータを、データごとに経路を切替える技術です。これにより、効率的にネットワークを運用することができます。光パスの設定・開放にはミリ秒クラスの高速化が要求されます。
関連リンク
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