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[ PRESS RELEASE ] 2002-0186
平成14年7月29日
株式会社富士通研究所

世界初! 量子コンピュータの基本素子となる量子ドットの
サイズ・配列制御に成功

量子ドット

株式会社富士通研究所(社長:藤崎道雄、本社:川崎市)は、量子コンピュータ(*1)の基本素子となる量子ドット (*2)を、所望の位置に所望の大きさで作製する技術を世界で初めて開発し、必要な量子ドット配列を形成することに成功いたしました。 当社は量子コンピュータの基本素子である量子ビット(*3)として、結合量子ドット(*4)中の電子スピン(*5)を用いる方式を既に提案しており、今回の成果は、量子コンピュータの実現に大きく貢献するものです。
なお、本研究は、筑波大学の協力を得て、当社の「ナノテクノロジー研究センター」が行ったもので、本技術の詳細は、7月29日から英国エジンバラで開催されている第26回半導体物理国際会議(26th International conference on the Physics of Semiconductors, ICPS2002)にて発表いたします。

【開発の背景】
ナノテクノロジーの応用分野として脚光を集めている量子コンピュータは、1980年代にOxford大学のD. Deutschによって基本的概念が作られ、1994年のBell研究所のP. Shorによる素因数分解のアルゴリズムの発見以降に本格的な研究が始まりました。量子コンピュータを用いれば、現在のコンピュータで数十億年もかかる計算が、数分程度で実行できるものと期待されており、すでに、数量子ビット程度の簡単な回路での動作が確認されています。
当社は、半導体ナノテクノロジーを用い、量子ドット中の電子のスピンを自在に制御でき、拡張性やコヒーレンス(*6)の点で優れた量子ビットを実現し、量子コンピュータの実用化を目指す研究を行っています。
量子コンピュータとして用いるためには、100ナノメートル以下のサイズの量子ドットを作製する必要があり、一般に、Stranski-Krastanov(S-K)モード(*7)と呼ばれる半導体量子ドットの自己形成による分子線エピタクシー(MBE) 成長法が用いられています。しかし、この方法では、基板上の所定の位置に量子ドットを配置することやサイズを精密に制御することは困難でした。
【開発した技術】
今回開発したのは、原子間力顕微鏡(AFM)(*8)による局所酸化とMBE選択成長技術とを組み合わせた方法で、AFMのカンチレバーに印加するパルス電圧と時間幅を変化させることで、量子ドットを設計どおりの大きさとレイアウトで基板上に配列する技術です。
具体的には次のように作製します(図1)。
  1. 半導体表面に酸化物ドットを形成
    図2に示すようにAFMの探針を半導体基板に接近させて、電圧を印加します。すると、大気中に含まれている水分が、探針の局所電場でH+とOH-に分解し、OH-が探針直下の基板部分を酸化します。酸化物ドットの直径は電圧印加時間と酸化時間により制御できます。

  2. 酸化物の除去
    (1)で作製した酸化物をエッチング液または超音波洗浄により除去し、基板に凹部を形成させます。

  3. MBE装置による量子ドットの形成
    最後に(2)の基板をMBE装置に入れ、通常のS-Kモードを用いて量子ドットを成長させます。通常のS-Kモードによる成長時間を制御することで、凹部だけに量子ドットを形成させることができます。

形成プロセス
開発した技術を用いると、最小直径20 ナノメートルの量子ドットを作ることができます。特に、サイズの違うドットを同時に作ることができるので、当社が提案している結合量子ドット中の電子スピンを用いる全光学量子コンピュータ (Phys. Rev. A62, 062316) に必要な量子ドット配列を作製することができました。これを図1の下部に示します。量子ドットの位置とサイズがきれいに制御され、規則正しく量子ドットが形成されていることがわかります。


酸化物ドットの作成方法
今後は、この技術を用いて作製した量子ドットを用いて、量子コンピュータの動作の実証を進めていく予定です。



【用語解説または注釈】
*1 量子コンピュータ
量子ビットを複数個配列した構造(量子レジスターと呼ぶ)に様々な演算をさせることにより、情報処理を行うコンピュータのことです。量子状態は重ね合わせができるため、この性質を利用した並列計算が可能で、現在のコンピュータ数10億台分の処理を一度に実行できます。
*2 量子ドット
半導体や金属などで作られた微小な粒子のことで、電子やホールを3次元的に閉じ込めることができます。量子ドットの中では、閉じ込め効果により電子の運動が量子化されるため、離散的なエネルギー準位が形成されます。量子ドットの作製には、薄膜を微細加工により島状構造にする方法や、成長時の歪みにより、自己組織的に島状構造を形成させる方法などが利用されます。
*3 量子ビット
量子情報処理における情報表現の基本単位のことです。現在の情報処理におけるビットに対応しています。量子ビットは、2つの成分のベクトルで表現され、たとえば、電子スピンや2つのエネルギー準位などによって表すことができます。
*4 結合量子ドット
量子ドットを複数個近接して配置した構造のことです。量子ドット間を電子がトンネルして移動することが可能になります。 量子ドットを人工的な原子とみなした場合、結合量子ドットは人工分子と呼ばれることもあり、さまざまな興味深い性質を持つことが知られています。
*5 スピン
電子や陽子などが持つ固有の角運動量のことです。電子はスピン2分の1と呼ばれ、2成分の波動関数でスピンの状態を表現します。この状態を使って現在の情報処理におけるビットに対応する情報を表現します。
*6 コヒーレンス
量子状態が示す量子効果の強さを表す量のことです。一般にコヒーレンスは外部のノイズによって時間と共に徐々に失われていきます。
*7 Stranski-Krastanovモード
エピタキシャル成長において、基板と成長物質の格子定数が異なるとき、ある一定の原子層数以上で、二次元的な層成長に代わって、三次元的な成長が始まり、微粒子が形成される場合があります。このプロセスのことを言います。
*8 原子間力顕微鏡
微小なカンチレバーの先端についた直径100nm程度の探針を基板表面に接触あるいは1ナノメートル程度の距離で接近させ、発生する原子間力を元に基板表面の形状をナノメートルオーダの解像力で可視化する装置のことです。探針に電圧パルスを加えるオプションを付けると基板の微細加工にも用いることができます。

以 上


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