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[ PRESS RELEASE ] 2002-0087
平成14年4月16日
富士通株式会社

PCクラスタ用BLASTシステムの構築サービス提供開始

当社は、株式会社富士通研究所(社長:藤崎道雄、本社:川崎市)と共同で、遺伝子配列情報の相同性検索(*1)を高速に実行するPCクラスタ用BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)(*2)を開発し、バイオ分野向けインフラソリューションであるPost Genome Platformの一つとして、「PCクラスタ用BLASTシステム構築サービス」を本年6月から富士通にて提供開始いたします。

このシステムによって、これまで10数時間以上、あるいは数日かかっていた検索処理が、数分から1時間以内で処理できるようになり、遺伝子探索や遺伝子機能予測等のポストゲノム研究を著しく加速できるものと期待されます。

近年、遺伝子配列情報の解析が進むにつれ、世界中の研究機関が、DNA塩基配列やタンパク質を構成するアミノ酸配列データを、国際DNAデータバンク(DDBJ,GenBank,EMBL)に登録しており、年率50%以上の速度で大容量化(現在1,600万エントリ、180億塩基)しています。このような配列情報データベースから、生物学的類似性に基づいて、類似度の高いDNA塩基配列やアミノ酸配列を検索することを相同性検索と呼びます。
BLASTはこの相同性検索ツールのひとつであり、中でもNCBI(National Center for Biotechnology Information)が開発したNCBI-BLAST(*3)は、バイオインフォマティクス分野で最も使用頻度の高いツールです。しかし、検索データベースおよび検索件数の増大とともに、検索時間が長大になってきたため、並列化技術を用いた高速化が強く望まれていました。

今回、開発したPCクラスタ用BLASTでは、富士通のIAサーバPRIMERGY、16ノード(32CPU)からなるPCクラスタ(OS:Linux)で、オリジナルNCBI-BLASTを単一CPUで実行したときに比べ、大量クエリー検索(1000クエリー:平均650塩基対)(*4)で約50倍、大規模クエリー検索(1クエリ550万塩基対)(*5)で約25倍以上高速に相同性検索を実行できます。(*6)

すでに2002年6月には、国立遺伝学研究所(*7)(所在地:静岡県三島市、所長 堀田凱樹博士)と大阪大学遺伝情報実験センター(*8)(所在地:大阪府吹田市、センター長 木下タロウ博士)にこのPCクラスタ用BLASTの納入を予定しております。

【PCクラスタ用BLASTシステム構築サービスの概要】
PCクラスタ用BLASTを提供しPCクラスタ用BLASTシステムを構築するサービス

 【提供価格】
 PCクラスタのCPU数に応じて価格を設定
1CPU当り10万円 (例:16ノード32CPU構成クラスタシステムの場合320万円)
 年間保守サービス料
1CPU当り7万円 (例:16ノード32CPU構成クラスタシステムの場合224万円)
 (*OSとハードウェアのサポート費用は別途必要になります。)

【対象OS】

Linux


【販売目標】

今後3年間で200PCクラスタシステム


【PCクラスタ用BLASTの特長】
  1. NCBI-BLASTと同一の出力結果が得られます。
  2. 基本アルゴリズム部分と並列化部分とを分離しているため、オリジナルのNCBI-BLASTのバージョンアップにすばやく対応可能です。
  3. CPU 数に応じて増える搭載メモリの増加を有効に利用し、無駄なディスクアクセスを抑止することにより、CPU数の増加以上の性能向上も可能です。
  4. 動的負荷分散を用いているので、単純なデータベース分割やクエリー分配手法で発生する負荷分散の不均衡を減らし、並列性能を向上させています。小さなクエリーを多数与えた場合と大きなクエリーを少数与えた場合のどちらでも、高効率に並列実行が可能です。
  5. 当社が販売予定のブレード型IAサーバ(*9)を用いると、省スペースでのシステム構築が可能になります。

【用語解説および注釈】

*1:相同性検索
生物学的な類似性に基づいて、類似度の高い遺伝子配列情報をデータベースから検索することです。未知の遺伝子配列情報の機能・構造を推定するために良く用いられます。
*2:BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)
相同性検索ツールの一つで、高速なアルゴリズムを採用し、比較的短時間に検索を完了できるため、バイオインフォマティクス分野では使用頻度の高いツールです。
*3:NCBI-BLAST
NCBI (National Center for Biotechnology Information)が開発しているBLASTプログラムで、パブリックドメインソフトウェアとなっています。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/
*4:大量クエリー検索
小規模の遺伝子配列情報を用いた相同性検索を、一度に大量(数100件以上)に行う検索のことです。遺伝子配列情報を各ノードに分配することで並列化が可能なため、PCクラスタに適した検索が可能です。
*5:大規模クエリー検索
大規模(数百万塩基対以上)の遺伝子配列情報を用いた相同性検索を、数個単位で行う検索のことです。並列化して検索するには、データベース分割に工夫が必要です。
*6:実行速度
国立遺伝学研究所が管理する遺伝子情報データベースDDBJ(*7)の中に含まれる全遺伝子データベース(約180億塩基対)に対して、大量クエリー検索として、平均長650塩基対の1000シーケンスからなるクエリーを実行、大規模クエリー検索としては、大腸菌O157の全遺伝子配列(約550万塩基対)一つをクエリーとして実行し、その速度を計測しています。
*7:国立遺伝学研究所
遺伝学に関する基礎的研究とその指導・促進を図ることを目的として,1949年(昭和24年)に設置された大学共同利用機関で、遺伝学を基礎として生命現象の幅広い分野の研究を行っている研究機関です。その中の生命情報・DDBJ研究センター(センター長 五條掘 孝教授)が管理・運営する遺伝子情報データベースDDBJは、米国のGenBank(NCBI)、欧州のEMBL(EBI)とともに日米欧3極で運営する世界三大DNAデータバンクのうちの一つとなっています。
http://www.ddbj.nig.ac.jp/
*8:大阪大学遺伝情報実験センター
大阪大学内の遺伝子研究を促進するための教育と研究支援を行う学内共同利用施設として、2001年4月(平成13年4月)に設立されたセンターです。遺伝子機能解析、ゲノム情報解析、感染症解析の3分野の研究を行っており、ポストゲノム時代の遺伝子実験施設として、最先端かつ高品質の遺伝子研究支援体制をもつ研究機関です。 1996年(平成8年)大阪府堺市の小学校で発生した大腸菌O157集団食中毒発生時に、O157の全遺伝子配列の決定に大きく貢献しました。
http://www.gen-info.osaka-u.ac.jp/
http://genome.gen-info.osaka-u.ac.jp/bacteria/o157/
*9:ブレード型IAサーバ
高さ3U(約13.3cm)の筐体に、最大20ノード(40CPU)を搭載可能な省スペース・省電力IAサーバです。ギガビットイーサーネット(1ノードあたり2ポート)を標準搭載しています。
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2002/03/14-1.html
【商標について】

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以 上

プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容、お問い合わせ先などは、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。ご不明な場合は、富士通お客様総合センターにお問い合わせください。

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