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1996-0239
平成8年12月18日
株式会社富士通研究所

156Mb/s バースト伝送用CMOS半導体レーザ駆動ICを開発

-- +3.3V単一電源動作、光出力の瞬時応答性を実現 --

株式会社富士通研究所(川崎市、佐藤繁社長)では、このほど、CMOSプロセスを用いて、電源電圧+3.3V、変調速度156Mb/sで動作する、バースト伝送(*1)用半導体レーザ駆動ICの開発に世界で初めて成功しました(48ピンQFPパッケージ、パッケージサイズ:12mm×12mm)。半導体レーザ駆動IC はATM-PONなどの光アクセス系実現のキーデバイスとして注目されています。
従来の基幹系光通信の駆動ICは、フィードバック制御を用いて光波形を安定化しておりました。しかしながら、バースト伝送方式となる光アクセス系では、瞬時に光波形を安定化する必要があるため、高速(高コスト/大消費電力) 化合物半導体などでフィードバック制御を行なう必要がありました。今回開発した技術は、温度や電源電圧による半導体レーザ駆動ICの特性変動を抑制する機能を付加し、フィードバック制御を不用としたものです。
この結果、量産性と経済性に優れたCMOSアナログ回路による低電力動作(動作電圧+3.3V )を実現しました。

快適なマルチメディアサービスを実現するため、ATM-PONなどのように、家庭や職場の加入者と電話局との高速双方向光アクセス系通信網が切望されています。また、装置間の高速配線を光ファイバー化する光インターコネクションや、光LAN等にも光通信技術の適用が期待されています。これらを実現するためには、量産性と経済性に優れ、消費電力が小さく、バースト伝送方式に対応した半導体レーザ駆動ICが必須となります。
当社は、これらの問題を解決するため、フィードバックループのない制御方式 (APCフリー方式 -添付資料参照-)に、当社独自開発の補償機能を持った半導体レーザ駆動ICを開発しました。APCフリー方式では、フィードバックループによる遅れがないので、初めの1ビットめから安定した光波形が得られます。このため、連続伝送はもとより、バースト伝送にも対応が可能です。

APCフリー方式には、半導体レーザ駆動ICの変動が、直接光波形に影響してしまう欠点があります。開発方式は、出力電流値と電流パルス幅の変動を下記のように低減することにより、この欠点を解決しました。

  1. 温度や電源電圧による出力電流値の変動を、トランジスタサイズを最適化することで、±2%の高精度で安定化しました。
  2. 温度や電源電圧によるパルス幅の変動がプラスにでる制御回路と、マイナスにでる制御回路の2つを用意し、互いの変動を相殺させる構成としました。その結果±2%の高精度で安定化しました。

上記高精度半導体レーザ駆動ICで、サーミスタを利用した半導体レーザ温度特性制御回路(*2)を構成することにより、下記の特徴を実現しました。

本ICは、電源電圧が+3.3V、環境温度0℃〜70℃条件において、156Mb/sで半導体レーザを良好に変調できることを確認しました。また5V電源動作に比べて、消費電力を48%削減できることも確認しました。(レーザに20mA流した条件で、ICとレーザの消費電力の合計で比較)。

*1バースト伝送:
しばらくの間信号を送信しなかったり、あるとき突然信号を送信したりするように、断続的に信号を送る伝送方式をバースト伝送方式と呼びます。従来の基幹系光通信では、常に信号光を送る連続伝送方式が主流ですが、光アクセス系通信や光インターコネクション等においては、バースト伝送方式が有望視されています。

*2半導体レーザ温度特性制御:
半導体レーザの発光効率と発光遅れ時間の温度特性を補償するため、サーミスタを利用して、駆動ICの出力電流を制御する。これによって、高い温度において半導体レーザの発光効率が低下しても、出力電流を増やし光出力を一定に保つことができます。また、高い温度において半導体レーザの発光遅れ時間が増加して出力光信号のパルス幅が狭くなっても、あらかじめICの出力電流のパルス幅を増やすことによって、光波形のパルス幅を一定に保つことができます。

[ 添付資料 ]


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