PRESS RELEASE （技術）

2015年4月27日
株式会社富士通研究所

既存ネットワークインフラのまま仮想デスクトップを大画面化する技術を開発

高画質映像符号化技術の導入で、ものづくり環境の操作性向上を実現

開発の背景

仮想デスクトップ技術は、ユーザーのアプリケーションをクラウド環境である仮想サーバ上で実行し、デスクトップ画面をシンクライアントなどの端末に転送する技術です。ICT機器の管理コスト低減、データセキュリティの確保、ワークスタイル変革などの実現に向け、オフィス業務を中心に採用され、近年では、CADやCAEといったアプリケーション（図1）を用いて製品設計や解析を行う、開発製造業務にも適用され始めています。

課題

近年では製品の複雑化が進み、全体を表示しつつ細部までくっきり見せるよう、仮想デスクトップの大画面化への要求が高まっています。これに伴い、画面転送時に使用するネットワーク帯域が増加しますが、コスト増につながるネットワークインフラを増強することなく大画面を実現するには、仮想デスクトップ画面の転送効率の向上が必要です。

開発した技術

今回、仮想デスクトップ画面の転送データ量を削減し、ネットワーク帯域を増やさずに高画質維持を実現しました。開発した技術の特長は以下のとおりです。

1. 仮想デスクトップ画面に最適な高画質圧縮・処理量削減技術

   高精細映像を低コストに伝送可能な富士通の高画質映像符号化技術（注2）をベースに、仮想デスクトップ画面の特徴に合わせて高画質を維持しながら圧縮するとともに描画内容に応じて処理量を削減する最適化技術を開発しました。

   仮想デスクトップ画面は、カメラで撮影される放送画像とは異なり、CADやCAEで描画される線画などが表示される仮想デスクトップ画面は非常にシャープで、背景などの領域は完全に静止しているという特徴があります。開発技術では、ブロックサイズ、画面内予測方向などの最適符号化モード判定により直線のシャープさを維持し、さらに、動きベクトル探索の最適化により、静止画領域での処理を大幅に簡略化しました（図2）。

   
   図2 仮想デスクトップ画面向けの最適化

2. 静止画符号化と映像符号化間との参照画面共有技術

   従来、転送する画像の中で静止画エリアと動画エリアを識別し、各々に適切な圧縮方式を用いることで転送データの高圧縮を実現していましたが、静止画と動画が頻繁に切り替わるとデータ量が増加してしまうという課題がありました。この課題を解決するため、映像符号化と静止画符号化との間で符号化後の画面を参照共有する機能を開発しました（図3）。これにより、CADやCAEの操作画面のように、転送する画面領域内で静止画と動画が頻繁に切り替わる際でも、切り替えのためのデータ量を削減することができます。

   
   図3 共有画面の参照利用

効果

今回開発した技術により、画質を維持したままネットワーク帯域を約2分の1に削減することに成功しました（図4）。同じネットワーク帯域で、2倍のサイズ（画素数）の仮想デスクトップ画面を伝送することも可能です。ネットワークインフラを増強せずに仮想デスクトップ画面を大画面化でき、ものづくり環境の操作性向上を実現します。

今後

本技術は、2015年5月に出荷予定のエンジニアリングクラウド「FTCP Remote Desktop（注3）」に搭載予定です。

富士通研究所は、最新の映像符号化技術の導入を進め、仮想デスクトップなどものづくりの環境をさらに高性能化する技術開発に取り組んでいきます。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

注釈

注1 株式会社富士通研究所：

本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 佐相秀幸。

注2 高画質映像符号化技術：

「H.264対応高品位符号化・低消費電力符号化処理回路技術」、「映像品質劣化抑止技術」などを開発し、実用化。開発技術は、市村産業賞などを受賞。
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2013/04/8-1.html

注3 エンジニアリングクラウド「FTCP Remote Desktop」：

富士通の高速シンクライアント技術で新しい「ものづくり」を支援するクラウド環境のソリューション。
http://www.fujitsu.com/jp/solutions/industry/manufacturing/monozukuri-total-support/products/plm-software/cax/ftcp-remote-desktop/index.html
操作応答を10倍高速化することで動画やグラフィックスをスムーズに活用できる高速シンクライアント技術を開発（2012年5月15日 富士通研究所プレスリリース）
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2012/05/15-4.html

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