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PRESS RELEASE (技術)

2013年3月7日
株式会社富士通研究所

世界初!どのような通信環境で利用しても最適な通信プロトコルを自動的に選択する技術を開発

複数のプロトコルを自動で使い分け、遠隔地からでも快適なアプリケーション通信を実現

株式会社富士通研究所(注1)は、無線回線や国際回線などの様々な通信環境を経由したアプリケーションの利用において、それぞれの環境に最も適した通信プロトコルを自動的に選択することで、通信をより高速化する技術を世界で初めて開発しました。

従来、無線回線や国際回線などの品質の悪い通信環境でも高速な通信を実現するために様々な高速通信プロトコルが開発されてきました。しかし、通信環境やアプリケーション種別などの利用条件によっては十分な通信性能(転送時間や応答時間)が出ないという課題がありました。今回、利用条件ごとに各通信プロトコル特性をあらかじめモデル化しておき、実際に利用する際にその条件から各通信プロトコルの通信性能を高速に推定し、複数の通信プロトコルの中から最も性能が良くなるプロトコルを自動的に選択する技術を開発しました。

本技術により、既存のアプリケーションで標準的に使われている通信プロトコルのTCP(注2)と比較して、仮想デスクトップをより様々な通信環境で快適に利用できることを確認しました。クラウドを利用した様々なネットワーク経由でのサービスを、どこにいてもユーザーが意識することなく快適に利用することが可能になります。

本技術の詳細は、3月7日(木曜日)~8日(金曜日)に沖縄で開催される「電子情報通信学会 情報ネットワーク/ネットワークシステム合同研究会」にて発表します。

開発の背景

近年、モバイル端末やクラウドサービスの普及により、様々な通信環境でネットワークを経由したアプリケーションが利用されています。その際の通信プロトコルとして、例えば、ファイル転送や仮想デスクトップのようなアプリケーションではTCPが標準的に用いられています。しかし、TCPは品質の悪い通信環境ではデータ損失(パケットロス)が発生し、データ再送による遅延により、通信性能(転送時間や応答時間)が出ないという課題がありました。今後、無線回線や国際回線など様々な通信環境での利用シーンが増えることが予想され、どのような通信環境でも通信性能が向上することが望まれています。

課題

TCPの通信性能を改善する高速通信プロトコル技術の一つとして、パケットロス時の再送方法を工夫し、通信性能を向上させる高速再送方式(注3)があります。これは大容量のファイル転送の高速化には有効ですが、再送処理を完全にはなくせないため仮想デスクトップのようなインタラクティブ通信に対しては操作遅延が発生します。また、別の高速通信プロトコル技術として、情報に冗長性を持たせパケットロスが起きても誤り訂正により再送せずにデータを復元する誤り訂正方式(注4)がありますが、冗長度が増えたり誤り訂正をするための演算によりCPU負荷が大きくなるという課題があります。このように通信プロトコルごとに特性が異なり、ある1つの通信プロトコルが全ての通信環境やアプリケーションに対して最良な通信性能を提供できるわけではありません。さらに、LAN、無線回線やインターネット、専用線などが混在する昨今の複雑なネットワーク環境においては、その通信環境をリアルタイムで把握することや、どのプロトコルが最適かを判断することが難しく、これらをユーザー側で使い分けることも困難でした。

開発した技術

通信環境やアプリケーションの種別など利用条件ごとにあらかじめ各通信プロトコルの特性をモデル化しておき、実際に利用する際に、その利用条件から各通信プロトコルの通信性能を高速に推定し、複数の通信プロトコルの中から最も通信性能が高いプロトコルを自動的に選択する技術を世界で初めて開発しました。開発した技術の特長は以下の通りです。

  1. 利用条件に応じた通信プロトコル特性のモデル化技術

    複雑な条件の中から効率よくプロトコルの通信性能を推定するために、ネットワーク特性(往復転送遅延、パケットロス率、利用可能帯域)、およびアプリケーション特性(データサイズ、データ間隔)と、通信性能(転送時間や応答時間)との関係を定義した通信特性モデルを構築する技術を開発しました。通信特性モデルで定義される各プロトコルの通信性能は、疑似ネットワーク特性と疑似アプリケーション特性を用いて、シミュレーションやエミュレーション環境において測定されます。また、全ての条件を網羅して性能を測定することは困難であるため、測定済みの性能をもとに他の条件の特性を予測する補間技術によって、従来は困難であった精度の高い通信特性モデルの構築を実現しました。

  2. 最適プロトコルの推定・選択技術

    上記から得られた通信特性モデルを基に、通信性能を推定し、最良の通信性能を発揮するプロトコルを選択する技術を開発しました。ネットワークを介して送受信したパケット情報からネットワーク特性を計測し、さらに、アプリケーションの送信データからアプリケーション特性を計測します。収集したネットワーク特性、アプリケーション特性を、あらかじめ用意した上記の通信特性モデルに当てはめることにより、各プロトコルの通信性能を高速に推定することができます。推定した各プロトコルの通信性能の中から最も性能の良いプロトコルを選択し、通信に利用します。


図1 開発技術の概要

効果

本技術により、様々な利用シーンで通信性能の向上が期待できます。例えば、モバイル端末においては、移動に伴う通信環境の変化に応じて最適なプロトコルが選択されます。データセンター間通信においては、使用するアプリケーションの種別に応じて、またISP(Internet Services Provider)における拠点間接続においては、拠点間の距離に応じて最適なプロトコルが選択されます(図2)。


図2 本技術の利用シーン

これらの利用シーンにおいて、インタクティブ通信やファイル転送を行う場合に、通信環境(往復遅延時間とパケットロス率)に応じて、どの通信プロトコルが適しているかが異なります。例えば、既存のTCP、当社で開発した高速再送方式、および誤り訂正方式の3つの通信プロトコルを使用する場合の適応領域は図3の通りとなります。今回開発した技術により、このような様々な利用条件においても複数のプロトコルの中から最適なプロトコルを自動的に選択し、より通信性能を向上することができます。これにより、クラウドを利用した様々なネットワーク経由でのサービスを、どこにいてもユーザーが意識することなく快適に利用することが可能になります。


図3 本利用シーンにおける各プロトコルの適応領域

今後

富士通研究所では、本技術を複数の通信プロトコルを用いて通信を高速化する通信ミドルウェアとして2013年度中に実用化することを目指します。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 株式会社富士通研究所:
代表取締役社長 富田達夫、本社 神奈川県川崎市。
注2 TCP(Transmission Control Protocol):
インターネット・プロトコルの一つ。再送機構によりデータの到達を保証。
注3 高速再送方式:
ストリーム配信に適したプロトコルのUDP(User Datagram Protocol)をベースに、独自に開発した効率的な再送方式を組み込み、パケットロス時のデータ再送の遅延を低減するプロトコル。2013年1月29日に発表済み。
注4 誤り訂正方式:
誤り訂正を応用した、消失したデータを復元する消失訂正符号により、再送無しにパケットロス時のデータを保証するプロトコル。

関連リンク

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
ネットワークシステム研究所 ネットワーク方式研究部
電話 044-754-2637(直通)
メール r-tsp@ml.labs.fujitsu.com


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