PRESS RELEASE （技術）

2011年6月8日
株式会社富士通研究所

大規模なクラウド環境で仮想サーバの移動時に必要となる
ネットワーク機器の設定変更を自動化する技術を開発

標準規格準拠のプロトコルを用いた多段接続に世界で初めて対応、運用コスト低減と大規模なクラウド環境を実現

本技術は、6月8日（水曜日）から10日（金曜日）に幕張メッセ（千葉市美浜区）で開催される「INTEROP TOKYO 2011」に参考出展いたします。

開発の背景

クラウド環境では利用者の要求に応じてCPUやメモリなどの計算資源（計算リソース）を割り当てるため、ある物理サーバ上の仮想マシンで実行中の仮想サーバを別の物理サーバ上に移動できることが求められます。このとき、仮想サーバの移動（注2）に合わせてネットワーク機器の設定を変更することが必要になります。そこで、ネットワーク機器の設定変更を自動化してクラウド環境の運用を容易にするための「エッジ仮想スイッチ技術（注3）」の標準化がIEEE（注4）で進められており、当社はメンバーであるIEEE 802.1委員会において標準化を推進しています。

課題

標準化が進められているエッジ仮想スイッチ技術は、サーバとそれが接続されたスイッチ間でのみ定義されており、適用できる範囲が限られていました（図1）。大規模なクラウド環境においては、サーバが接続された複数のスイッチをさらに上位のスイッチで接続する多段の接続が利用されており、エッジ仮想スイッチ技術は上位スイッチの設定変更に対応していません。

開発した技術

今回、標準化が進んでいるエッジ仮想スイッチ管理技術をさらに拡張し、仮想サーバの移動にあわせて上位のスイッチを自動設定する技術を、世界で初めて開発しました。開発した技術の特長は以下の通りです。

1. 多段に接続されたネットワークの設定を自動化

   仮想サーバの移動に合わせて、必要となるスイッチの設定を自動変更します。標準化作業中のIEEE 802.1Qbg（注5）で定められた設定変更のための通信メッセージを、スイッチ装置内で動的に構築した構成情報に応じて上位のスイッチに中継する機能を開発し、それにより多段構成の上位のスイッチを自動設定することが可能になりました（図2）。

2. 標準準拠でマルチベンダー対応

   スイッチ間で通信する際に、エッジ仮想ブリッジの標準として定められた通信プロトコルを用いるので、今回開発した中継機能を持つスイッチ装置の上位の階層において、任意のベンダーの標準準拠スイッチが利用可能です。

効果

開発した技術を用いることで、高速なネットワークで接続された大規模なクラウド環境において、仮想サーバの移動時に必要となるネットワーク機器の自動設定が可能になります。これにより、計算資源（計算リソース）を必要に応じて割り当てることが可能になり、クラウド環境における運用コストの低減が期待できるとともに、利用者に大規模なクラウド環境の提供ができるようになります。

今後

富士通研究所では、ネットワーク設定処理のさらなる高速化・自動化をすすめ、2012年度中の実用化を目指します。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

注釈

注1 株式会社富士通研究所：

代表取締役社長 富田達夫、本社 神奈川県川崎市。

注2 仮想サーバの移動：

ライブマイグレーションと呼ばれ、アプリケーションを止めずに実行中の仮想サーバを移動する技術。

注3 エッジ仮想スイッチ技術：

仮想マシンや仮想スイッチなどの情報を活用して、物理スイッチと連携することにより、仮想マシン移動時のネットワーク設定更新を自動化する技術。

注4 IEEE（アイトリプルイー）：

The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.は、米国に本部を持つ電気・電子技術の学会。

注5 IEEE 802.1Qbg：

データセンターブリッジ技術の標準化を進めるIEEE 802.1 DCB タスクグループで標準化がすすめられている、エッジ仮想ブリッジ（Edge Virtual Bridging）の規格。 仮想マシンの発見、設定、更新のために必要な通信プロトコルを規格に含む。

関連リンク

• 世界初！10ギガスイッチでサーバ上の仮想スイッチ機能を代行する技術を開発（2010年6月10日 プレスリリース）

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