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PRESS RELEASE (技術)

2010年6月10日
株式会社富士通研究所

世界初!10ギガスイッチでサーバ上の仮想スイッチ機能を代行する技術を開発

従来より2倍の仮想マシン稼動と運用コストの大幅削減を実現し、より快適なクラウド・コンピューティング環境を実現

株式会社富士通研究所(注1)は、クラウド・コンピューティングの仮想ネットワーク機能において、従来はサーバ上のソフトウェアで処理していた仮想スイッチ機能を、外部のハードウェア・スイッチで代行させる技術を、標準準拠方式により世界で初めて10ギガスイッチ上で開発しました。

本技術により、仮想スイッチ機能を提供するサーバのCPU負荷を軽減することができるため、同じサーバ上で従来より多くの仮想マシンが稼働可能となります。また、仮想マシンの移動(注2)を自動的に検知し、先回りしてネットワーク設定を完了する機能を開発したことにより、エンドユーザ業務に影響を与えず仮想サーバの移動を可能にしました。これらにより、機器コストの半減や運用コストの削減を実現し、クラウド運用事業者のトータルコスト削減に貢献いたします。

本技術は,6月9日(水曜日)から11日(金曜日)に幕張メッセ(千葉市美浜区)で開催される「INTEROP TOKYO 2010」にて参考出展いたします.

開発の背景

クラウド・コンピューティングを実現する技術の中核のひとつに、サーバ仮想化があげられます。サーバ仮想化では、1台の物理サーバ上に複数の仮想マシンを搭載し、それぞれの仮想マシンの上でOSと業務システムアプリケーションを同時に稼働させることができます。これにより、従来は別々のサーバで動作していた業務を同じサーバに集約することで、サーバのCPUを有効に活用でき、機器コストを削減することができます。


図1 サーバ仮想化によるインフラ最適化

仮想マシンも物理マシンと同様にネットワークを利用しますが、各仮想マシンを接続するためには、サーバ内に仮想スイッチ機能が必要です。仮想スイッチとはソフトウェアで実現されたスイッチで、サーバ内に仮想ネットワークを構成し、仮想マシンや物理スイッチとの間でのパケット転送を行います。

今後、クラウドがより高信頼でセキュアに進化していくためには、物理サーバを共用する他のユーザの影響によりパフォーマンスが低下するのを防いだり、仮想ネットワークの挙動を常時監視し性能や障害を管理するなど、仮想スイッチにさまざまな機能が要求されていくと考えられます。


図2 仮想スイッチによる仮想マシン間通信

課題

クラウド・コンピューティングの運用管理においては、従来からある物理的なネットワークの管理と、仮想スイッチを利用した仮想ネットワークの管理が別々になり、それらを一体として管理することができていないのが実情です。たとえば、アプリケーションを止めずに仮想マシンを移動するライブマイグレーション時にも、仮想マシンの移動に連動して、物理スイッチと仮想スイッチのネットワーク設定が必要なため、従来方式では仮想マシン移動後に通信が一時途切れてしまうという問題がありました。

また、従来は物理スイッチで実現していたQoS機能(注3)やセキュリティ機能などの負荷の高い処理を仮想スイッチのソフトウェアに実装するため、サーバのCPUに負担がかかってしまい、その分だけ仮想マシンに割り当てるCPU資源が減るという問題も抱えています。

開発した技術

上記課題を解決すべくIEEE802.1Qbg委員会(注4)にて標準化が開始された、以下の 2つの技術を、当社の10ギガスイッチチップの持つオフロード機能(注5)を活かして実装し、その効果を世界で初めて実証しました。

  1. 仮想スイッチ・オフロード技術

    仮想スイッチの機能をバイパスし、外部のハードウェア・スイッチで代行する技術 です。ソフトウェアとして実行されていた仮想スイッチのCPU負荷を軽減することで、サーバ上でより多くの仮想マシンが稼働可能となります。また、仮想スイッチの機能が物理スイッチ上で一元管理でき、ネットワーク管理が容易になります。

  2. ネットワーク設定情報の管理技術

    ネットワーク設定情報(ポートプロファイル)を仮想マシンのライブマイグレーションに連動して自動的に設定する技術です。仮想サーバ移動開始を検出する当社独自機能を管理VM(注6)に追加することにより、移動完了に先回りしてネットワーク情報の設定を完了させ、通信が途切れることなくライブマイグレーションが実現できるようになりました。

効果

今回開発した技術によって、仮想スイッチのCPU負荷が軽減されるため、従来比最大2倍程度の 仮想マシンが稼働できるようになります。これによりサーバの機器コストを削減することが可能になります。


図3 仮想スイッチオフロードの効果

また、ネットワーク設定情報をサーバ管理と連動する技術により、仮想マシン配置変更にともなうスイッチ変更を自動化し、システムの運用管理を容易にしました。さらに、エンドユーザの業務に影響を与えることなく、仮想マシンのライブマイグレーションを実行できます。

今後

本技術については、当社がメンバーであるIEEE802.1Qbg検討グループにおいて、標準化を推進するとともに、オープンソース・ソフトウェアのXenコミュニティ(注7)への提供も検討いたします。富士通研究所では、今後も富士通が提供するクラウドサービス基盤(Trusted-Service Platform)の強化を目指して技術開発を進めます。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

  注1 株式会社富士通研究所:
代表取締役社長 富田達夫、本社 神奈川県川崎市
  注2 仮想マシンの移動:
ライブマイグレーションのこと。アプリケーションを止めずに仮想マシンを移動する技術。
  注3 QoS技術:
Quality of Service。ネットワークの帯域(速度)やパケットの廃棄などを制御して、サービス品質を保証する技術。
  注4 IEEE802.1Qbg:
イーサネットの標準化を進めるIEEE802の中で仮想スイッチ関連を検討するグループ。当社は投票権を持つメンバーとして参画中。
  注5 オフロード機能:
サーバから受けたパケットをスイッチした後、サーバに折り返すことでサーバ内部のスイッチング機能を代行する当社スイッチチップの独自機能。
  注6 管理VM:
仮想化されたサーバ全体を管理する仮想マシン。管理ドメイン、Dom0とも言う。
  注7 Xenコミュニティ:
サーバ仮想化を実現するオープンソース・ソフトウェア。

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
ITシステム研究所 サーバネットワーキング研究部 / サーバテクノロジ研究部
電話: 044-874-2418(直通)
E-mail: fujitsu_vepa@ml.labs.fujitsu.com


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