PRESS RELEASE (技術)
2009年5月12日
株式会社富士通研究所
株式会社富士通研究所(注1)(以下、富士通研究所)は、このほど暗号化された印刷物をカメラ付き携帯電話で閲覧する技術の開発に世界で初めて成功しました。携帯電話のカメラ映像を通して印刷物を覗き込むことで、暗号化された領域が復号され閲覧が可能となります。本技術により、紙媒体の利便性を最大限に活かしながら、情報漏洩を防ぐことができます。従来、暗号化文書の復号・閲覧に必要だったPCの操作が不要になるため、機密文書を外出先で閲覧したり、PCを設置していない職場や、一般家庭における利用が可能となります。
本技術の試作品は5月14日(木曜日)、15日(金曜日)に東京国際フォーラム(東京都千代田区)で開催される「富士通フォーラム2009」に出展します。
2005年4月の個人情報保護法施行後も個人情報漏洩事件は多発しています。その中でも紙媒体からの情報漏洩は経路別で55.2%と依然トップを占めており(注2)、根本的な対策が必要とされています。
富士通研究所では、世界に先駆けて2008年6月、紙媒体と電子データの双方において、文書の必要な部分のみを暗号化し、部署や役職などに応じて権限のある人のみが閲覧できる技術を開発しました。紙媒体の暗号化された情報は、スキャナを用いてPCに取り込み、権限に応じた情報をPC画面で閲覧することができます。
その後、今後の機能アップとして、暗号化された紙の文書を外出先でも読みたい、通信手段がFaxのみでPCを設置していない職場でも利用したいなど、PCがなくても復号できるようにしてほしいという要望がお客様より寄せられたため、多くの人が所有するカメラ付き携帯電話を用いて復号・閲覧が可能な研究開発を続けてきました。
カメラ付き携帯電話で紙媒体の暗号部分を復号・閲覧するためには、処理の高速化が必要でした。
スキャナとPCを用いた復号は、イメージセンサーが固定されて撮影されるため、暗号化領域の検出処理と復号処理は安定して行えます。しかし、カメラ付き携帯電話による復号は、カメラを持つ手が震えたり、上下左右に傾くことにより、手ブレや画像の歪みが発生し、復号処理の失敗が連続して起こります。これにより、復号成功までに時間を要しました(図1)。
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今回、カメラ付き携帯電話での復号を実現するために、領域検出処理と復号処理の前に、富士通研究所が開発した画像選択フィルター処理を導入しました(図2)。画像選択フィルター処理は、携帯電話で動画撮影された入力画像から、手ブレ画像や歪み画像を排除します。連続して入力される画像のうち、手ブレ、歪みが少ない画像のみが領域検出処理と復号処理に渡されます。画像選択フィルター処理は、手ブレや歪みの補正をするのではなく検出のみを行うため、領域検出処理および復号処理に必要とされる時間の約50分の1の短時間で実行が可能です。このため、図3に示すように、5枚目で復号に成功したとしても、処理時間の長い領域検出処理と復号処理は1回で済むため、1枚目で復号に成功した場合と体感的に同等の処理時間を達成しています(1枚目で復号に成功した場合の1.1倍の処理時間で復号可能)。
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今回開発した技術により、PCとスキャナを持ち運ばなくても、カメラ付き携帯電話で即時に暗号化領域の復号と閲覧ができるため、紙媒体の利便性を最大限に活かしながら、情報漏洩を防ぐことができます。従来の紙の暗号化技術では、スキャナを用いた大量の文書の復号に大きな効果を発揮しましたが、今回さらに、従来難しかった社外やPCを設置していない職場、あるいは一般家庭における利用が可能となります。たとえば、外出の際に機密情報を暗号化することにより、機密文書を保護したり、手帳の中に記載しているお客様電話番号などの個人情報、他人に見られたくないクレジットカードのIDやパスワードなども保護することが可能です。
2009年度内での実用化と、2010年度内での製品化を目標としています。
以上
株式会社富士通研究所
画像・バイオメトリクス研究センター
電話: 044-754-2639
E-mail: pet-ff2009@ml.labs.fujitsu.com
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