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PRESS RELEASE

2007年4月5日
横河電機株式会社
富士通株式会社

DQPSK方式による毎秒40ギガビットの光送受信技術の開発に成功

~超大容量の都市間光ネットワークを実現~

横河電機株式会社(本社:東京都武蔵野市 代表取締役社長:海堀 周造、以下 横河電機)、富士通株式会社(本社:東京都港区 代表取締役社長:黒川 博昭、以下 富士通)は共同で、世界で初めて実用レベルのDQPSK(差動4値位相変調)注1方式による毎秒40ギガビット(以下、40Gbps)の光送受信技術を開発しました。両社は、今回開発した技術を用いて、それぞれ40Gbps超高速光伝送のための各種製品を市場へ投入する予定です。

本技術は、2006年3月に横河電機と富士通で締結された超高速光伝送システムの要素技術およびキーコンポーネントの共同開発を行う戦略的パートナーシップに基づき、株式会社富士通研究所(本社:神奈川県川崎市 代表取締役社長:村野和雄 以下、富士通研究所)の協力の下、開発したものです。本技術の詳細は、3月27日から29日まで、米国カリフォルニア州アナハイムで開催されたOFC/NFOEC2007展示会へ出展しました。

開発の背景

各家庭が直接光ファイバーで結ばれる光アクセス網の本格的普及や次世代ネットワーク(Next Generation Network:NGN)の構築にともない、都市間の光通信ネットワークにはこれまで以上に大容量化が求められるようになっています。この要求に対応するため、現在の光伝送システムの最大伝送速度である10Gbpsを40Gbpsに高速化する検討が進められています。

課題

一般に、伝送速度を上げると偏波モード分散(PMD) 注2に起因した波形歪みが顕著となり、その影響により伝送距離が制限されます。 例えば、ITU-T注3で勧告されているPMDの仕様値(0.2ps/√km)を持つ光ファイバーに従来の2値変調方式注4を用いて40Gbpsの信号を伝送すると、伝送距離が100km以下に制限され、都市間の通信に必要な数百km以上の長距離伝送ができませんでした。


図1 開発した40Gbps DQPSK光送受信モジュール

この問題を解決するため、PMD による波形歪みに強いDQPSK方式の検討が進められており、実験室レベルではその高い性能が確認されています。しかし、DQPSK方式は構成が複雑であり、光送受信器のサイズや消費電力が大きくなることが課題でした。


開発した技術

横河電機と富士通は富士通研究所の協力の下、世界で初めて実用レベルの40Gbps DQPSK光送受信技術の開発に成功しました。開発した技術は以下の通りです。

  1. DQPSK変調用LN変調器注5の採用:

    富士通が開発した世界最小の駆動電圧を実現したDQPSK変調用LN変調器を採用し、光送受信部の小型化、低消費電力化を実現しました。


  2. DQPSK方式を実現する専用IC、デバイス群を開発:

    横河電機のInP HBT注6技術により、上記のDQPSK用LN変調器に最適化されたドライバーデバイス、PMD波形歪みに対して安定に動作する光・電気変換デバイス、クロック抽出・識別再生デバイスなど、DQPSK方式を実現する小型低消費電力の専用IC、デバイス群を開発しました。


  3. コンパクトな光送受信モジュールを実現

    開発したキーデバイスの動作を安定化する制御技術、小型化のための実装技術を開発し、40Gbps DQPSK方式に必要な全機能を伝送装置への搭載が可能となる110ミリメートル(以下、mm) X 320mm X 40mmのコンパクトなサイズにまとめ、35Wの低消費電力(ケース温度72℃での典型値)を実現しました(図1)。


効果


図2 40Gbpsでの2値変調方式とDQPSK方式の伝送距離の比較

100台の40Gbps DQPSK光送受信モジュールを作製し、良好な伝送特性と、温度や電源電圧などの動作環境変動に対して安定に動作することを確認しました。また、PMDによる波形歪みに起因する伝送距離制限が、従来の2値変調方式に比較して約8倍緩和されることを確認しました(図2)。

今回の開発成果は、都市間を接続する超大容量幹線系光ネットワークの早期実用化に大きく貢献するものと期待されます。


今後

横河電機と富士通は、今回開発した光送受信技術を活用し、それぞれ40Gbps超高速光伝送のための各種製品を市場へ投入する予定です。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。


以上

注釈

  注1 DQPSK(差動4値位相変調):
Differential Quadrature Phase Shift Keyingの略。デジタル信号の変調方式のひとつで、変調された4つの光の位相にそれぞれ2ビットのデータを割り当てることのできる方式。4種類の位相を用いることで、2値方式に比較してパルス幅を2倍広げることができ、PMDによる波形歪みの影響が緩和できる。
  注2 偏波モード分散(PMD):
Polarization Mode Dispersionの略。偏波(電界の振動方向)によって光ファイバー中の伝送遅延時間が異なる現象のこと。
  注3 ITU-T(国際電気通信連合 電気通信標準化部門):
International Telecommunication Union- Telecommunication standardization sectorの略。通信分野の各種の標準策定を行っている。
  注4 2値変調方式:
光信号パワーの"強" "弱"、もしくは光位相の"0度" "180度"という2つの状態にデジタル信号の"0"と"1"を割り当てる変調方式。
  注5 LN変調器:
電気光学効果を持つ、ニオブ酸リチウム(LN: LiNbO3)の結晶を用いた光変調器のこと。詳細は富士通プレスリリース2007年3月27日、「40Gbps光伝送システム用DQPSK LN変調器を販売開始」を参照。
  注6 InP HBT(インジウム燐ヘテロ接合バイポーラトランジスタ):
InP Hetero-Junction Bipolar Transistorの略。高速動作に優れ、駆動能力が高くICの低消費電力化に有利な化合物半導体トランジスタ。

関連リンク

本件に関するお問い合わせ

横河電機株式会社 フォトニクス事業部 マーケティング部
電話: 042-770-6811(直通)
E-mail: photonicsinfo@cs.jp.yokogawa.com

富士通株式会社 フォトニクス事業本部 第一設計部
電話: 044-754-3131(直通)
E-mail: contact-photonicsinfo@cs.jp.fujitsu.com


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