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[ PRESS RELEASE ] |
2002-0169
平成14年7月8日
株式会社富士通研究所 |
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世界初! MOSFETの電極となるシリサイド層上への
多層カーボンナノチューブの垂直成長と直径制御に成功
株式会社富士通研究所(社長:藤崎道雄、本社:川崎市)は、将来のLSI配線などへの応用を目的として、MOSFETのゲート、ソース及びドレイン電極となるシリサイド層上への多層カーボンナノチューブ( *1)を垂直配向成長させる技術と直径制御する技術を世界で初めて開発いたしました。今回開発した技術を用いると、LSI配線の低抵抗化や微細化などが実現すると期待されます。
なお、本研究は当社ナノテクノロジー研究センターにて行ったもので、本技術の詳細は、7月6日から米国ボストンで開催されているナノチューブ国際会議(International conference on the Science and Application of Nanotubes, NT02)にて発表いたしました。
- 【開発の背景】
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カーボンナノチューブは、ナノサイズの新材料として、そのさまざまな特性が高く評価されており、エレクトロニクス分野への応用が期待されています。当社は、カーボンナノチューブの電気的特性に着目し、金属的なカーボンナノチューブを微細なLSI配線に応用するという研究を行っています。
カーボンナノチューブを作るには、一般に、レーザー蒸着法やアーク放電法という技術が用いられています。しかし、これらの方法では、基板上の所定の位置にカーボンナノチューブを配置することや方向、直径を制御することは困難でした。
- 【開発した技術】
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今回開発したのは、メタンと水素の混合ガスによるプラズマ化学気相成長法( *2)を用い、基板に垂直な電界をカーボンナノチューブの成長中に印加することによって、その電界と同じ方向に多層カーボンナノチューブを成長させる技術です。特に、MOSFETの電極に用いられるシリサイド層から直接チューブを成長させる技術と、シリサイド層のNiまたはCoの組成を変化させることでチューブの直径を制御する技術です(図1)。
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図1 シリサイド層からの多層カーボンナノチューブ垂直配向成長 |
その特長は、以下の通りです。
- 多層カーボンナノチューブ垂直配向成長技術
成長中に所定の電界を印加することにより、NiまたはCoモノシリサイド層(*3)から直接多層カーボンナノチューブの成長方向を制御することを可能とする技術です。
- 多層カーボンナノチューブ直径の制御技術
組成を工夫したNiまたはCoシリサイド層から直接多層カーボンナノチューブを成長させることで、チューブの直径を小さくできる技術です。モノシリサイド層を用いることで、NiまたはCo薄膜を用いる場合に比べ、直径を約1/2にすることが可能です。
- ホール内への多層カーボンナノチューブ埋め込み垂直配向成長技術
カーボンナノチューブ成長に必要な触媒(NiやCo)を配線ビアのようなホール内に露出させておくことで、ホール内に多層カーボンナノチューブが埋め込まれるようにほぼ垂直配向成長させることができます。(図2)
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図2 ホール内における多層カーボンナノチューブ埋め込み垂直配向成長 |
開発した技術は、これまでの半導体製造プロセスとの適合性が良いので、エレクトロニクス応用への可能性が拡がります。たとえば、カーボンナノチューブを配線ビアに使用する場合、カーボンナノチューブの特長のひとつであるキャリア(電子または正孔)の散乱がない伝導(バリスティック伝導( *4))による低抵抗配線が実現できるものと期待できます。また、銅配線で問題となっている通電による物質移動現象(エレクトロマイグレーション( *5))に起因した断線の障害を解決できるなどの効果も期待できます。
今後は、成長制御技術のさらなる高精度化や低抵抗電極形成などのデバイス化技術を開発し、エレクトロニクスへの応用可能性探索を進めていく予定です。
- 【用語解説または注釈】
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- *1 多層カーボンナノチューブ
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カーボンナノチューブは、炭素の2次元六員環ネット(グラフェン)が円筒状に巻いてできた、ナノメートルサイズの直径を持つチューブのことです。多層カーボンナノチューブは、そのチューブが同心円状に複数あるものを言います。高いアスペクト比、強靭な機械的強度、化学的安定性、バリスティック伝導による低抵抗性、及び、銅より3桁高いエレクトロマイグレーション許容電流密度といった優れた特長を有します。
- *2 プラズマ化学気相成長法
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気相の原料ガスを流し、プラズマ放電中の化学反応を利用して生成物を基板上に堆積する方法のことです。基板上への配向膜形成が可能であるという優位性があります。
- *3 モノシリサイド層
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シリコンと金属が結合した層をシリサイド層と呼び、シリコンと金属の比率が1対1のものをモノシリサイドと言います。
- *4 バリスティック伝導
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バリスティック(ballistic)伝導は、伝導を担うキャリアが格子振動や不純物などの散乱を受けずに伝導することです。たとえば、電界効果トランジスタに用いられる場合、極めて速い動作が期待されます。
- *5 エレクトロマイグレーション
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金属材料への通電による物質移動現象のことです。ボイドやクラックが発生し金属材料が断線してしまうことがあり、配線における通電故障の原因の中で最も重要なものとなっています。
以 上
プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容、お問い合わせ先などは、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。ご不明な場合は、富士通お客様総合センターにお問い合わせください。
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