PRESS RELEASE

2023年7月12日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
日本電気株式会社
富士通株式会社

ポスト5Gに向けた基地局装置間の相互接続性検証の大幅な効率化に成功

異なるベンダーの基地局装置間の検証時間を30%以上短縮

NEDOの「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」(以下、本事業)で、日本電気(株)と富士通(株)は、ポスト5Gに対応した基地局装置(O-RAN仕様準拠)間の相互接続性を検証する技術(以下、本技術)の研究開発に取り組んでいます。両者は英国と米国の拠点で接続性の検証環境を構築し、2021年8月から2023年6月まで、本技術の動作検証を実施しました。その結果、最適なテストシナリオの抽出や、パラメーターの生成から検証結果の良否判定までの一連の流れを自動化することにより、海外の通信事業者(オペレーター)の商用環境を想定した異なるベンダーの基地局装置(O-RAN仕様準拠)間の相互接続性の検証時間を30%以上短縮するなど、大幅な効率化に成功しました。

今後両社は、本技術と本技術を適用した検証環境を継続して国内外のオペレーターや基地局装置ベンダーとの共同検証に活用することで、異なるベンダーの基地局装置(O-RAN仕様準拠)を組み合わせたシステムの導入までの期間をさらに短縮し、オープン化した5Gネットワークのグローバルな普及と発展を後押しすることにより、通信インフラ市場の活性化に貢献していきます。

1. 背景

さまざまな産業でデジタルトランスフォーメーション(DX)が進められる中、そのインフラとして第5世代移動通信システム(5G)がグローバルに展開されています。将来的には、5Gが持つ超低遅延や多数同時接続といった機能を強化したポスト5Gの普及が期待されており、これまで以上に低消費電力化や仮想化への対応が進むことで、基地局装置の置き換えを含めた通信インフラ市場の拡大が続くものと見込まれます。

こうした中、オペレーターがより高品質な通信サービスを顧客に提供するため、さまざまなベンダーの基地局装置から最適なものを選択して自社のネットワークに導入する動きが活発化しています。

そこで世界のオペレーターとメーカーなどが参加する業界団体のO-RAN Alliance注1は、基地局の複数の装置間の接続における標準化を進め、異なるベンダーの基地局装置を接続する条件を整えてきました。しかし、接続した状態での動作検証はオペレーターが行うために多くの時間を要し、不具合解消のための再検証を含めるとさらに長い検証期間が必要であり、O-RAN仕様に準拠した装置導入の妨げとなっています。

こうした背景を踏まえ、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が実施する本事業注2において、日本電気株式会社(以下、NEC)と富士通株式会社(以下、富士通)は、O-RAN市場として期待される英国と北米で検証環境を構築してきました。そして2021年8月から2023年6月まで、NECの英国の拠点と富士通の米国の拠点において、海外を含めたさまざまなオペレーターが実際の商用環境で使用するプロファイル注3や基地局装置ベンダーの組み合わせで動作検証を行い、異なるベンダーの基地局装置(O-RAN仕様準拠)間の相互接続性の検証作業の効率化を実現する技術の開発に取り組みました。

2. 今回の成果

NECと富士通は、O-RANフロントホール注4でのさまざまなベンダーの基地局装置間の相互接続性の検証作業を自動化する技術を共同で開発し、各国や地域のオペレーターが実際に使用する接続条件に対応するための機能拡張を行いました。本技術には、基地局装置間に接続してフロントホールプロトコルを検証するFHA(FrontHaul Analyzer)注5、無線子局(RU)の単体試験を行うP-DU(Pseudo-DU)注6、検証作業の各工程を自動化するテストシナリオ抽出ツール注7、テストパラメーター変更ツール注8、検証結果判定ツール注9などの独自技術が含まれます(図1)。


図1 本事業の概要と成果 図1 本事業の概要と成果

本技術を両社の英国および米国の拠点において、欧州および北米のオペレーターの実際の商用環境を想定した動作条件と、異なるベンダーの基地局装置の複数の組み合わせでO-RANフロントホールにおける相互接続性を検証しました。その結果、最適なテストシナリオやパラメーターの生成から検証結果の良否判定までの一連の流れを自動化することにより、従来の手動による検証作業に比べて、海外のオペレーターの商用環境を想定した異なるベンダーの基地局装置間における相互接続性の検証時間を30%以上短縮することに成功しました。

本技術を適用することにより、相互接続性検証の時間を短縮することが可能となり、オペレーターが、異なるベンダーのO-RAN仕様に準拠した基地局装置を組み合わせたシステムを導入するまでの時間を短縮できることから、現在普及している5Gネットワークにおけるオープン化の進展に加えて、将来のポスト5Gの展開を見据えた新たなネットワーク構築にも貢献します。

3. 今後の予定

NECと富士通は本技術と、本技術を適用した検証環境を継続して国内外のオペレーターや基地局装置ベンダーとの共同検証に活用することで、異なるベンダーの基地局装置(O-RAN仕様準拠)を組み合わせたシステムの導入までの期間をさらに短縮し、オープン化した5Gネットワークのグローバルな普及と発展を後押しすることにより、通信インフラ市場の活性化へ貢献していきます。

NEDOは、本技術を始め、今後もポスト5Gに対応した情報通信システムの中核となる技術を開発することで、日本のポスト5G情報通信システムの開発および製造基盤の強化を目指します。

注釈

  • 注1
    O-RAN Alliance:
    Open Radio Access Network Allianceの略称です。5Gをはじめとするオープンかつ拡張可能な次世代の無線アクセスネットワークの実現を目指し、標準化を推進する業界団体です。
  • 注2
    本事業:
    事業名:ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/ポスト5G情報通信システムの開発/基地局装置間の相互接続性等の評価・検証技術の開発
    事業期間:2020年度~2023年度
    事業概要:ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業  https://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP_100172.html
  • 注3
    プロファイル:
    基地局を動作させる際の動作条件をいいます。無線通信方式の指定、使用周波数など通信に係る動作条件の組み合わせです。
  • 注4
    O-RANフロントホール:
    O-RANに準拠して標準化された、基地局の親局(CU/DU)と無線子局(RU)間のインターフェースです。
  • 注5
    フロントホールプロトコルを検証するFHA(FrontHaul Analyzer):
    O-RAN仕様に準拠したフロントホールプロトコル(フロントホール上でM-Plane、CUS-Planeのデータを送受信するために規定された手順)の正常性を検証する技術です。
  • 注6
    無線子局(RU)の単体試験を行うP-DU(Pseudo-DU):
    基地局の親局(CU/DU)の代わりに無線子局(RU)に接続し、RU単体でRUの正常性を検証することを可能にする技術です。
  • 注7
    テストシナリオ抽出ツール:
    オペレーターによって異なるプロファイルをインプットとして、各5Gネットワークに最適なテストシナリオを自動抽出するツールです。
  • 注8
    テストパラメーター変更ツール:
    検証をより効率的に実施するための、各種テストパラメーター自動抽出・変更ツールです。
  • 注9
    検証結果判定ツール:
    検証結果の良否を自動判定するツールです。

4. 本件に関するお問い合わせ

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO
IoT推進部 ポスト5Gプロジェクト推進室
NEC
テレコムサービス企画統括部
E-mail:contact[*]nwsbu.jp.nec.com
富士通


(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:坂本(信)、瀧川、黒川、根本
TEL:044-520-5151
E-mail:E-mail:nedo_press[*]ml.nedo.go.jp

E-mailは上記アドレスの[*]を@に変えて使用してください



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