PRESS RELEASE

2023年2月22日
富士通株式会社

レジリエントな社会の実現を支える光伝送プラットフォームを実用化

世界最高クラスの1.2Tbps大容量長距離伝送と、CO2排出量60%の削減を両立

当社は、リアルとデジタルが融合したボーダレス・ワールドを支えるために不可欠な、トラステッドなネットワークの実現に貢献する、世界最高クラスの光1波あたり1.2Tbpsの大容量長距離伝送が可能な光伝送プラットフォームを実用化し、「1FINITY Ultra Optical System」として製品化しました。2023年度上期に、通信事業者やデータセンター事業者のお客様向けに、日本や北米をはじめグローバルに提供を開始します。

最新の半導体プロセスを用いたデジタル信号処理LSI(DSP)の適用や、従来技術と比べて2倍の冷却能力を持つ水冷システムの導入に加えて、複数の波長帯域を1つの製品で扱うことができるC+L ROADMアーキテクチャー注1や光信号の増幅技術であるフォワードラマン増幅注2などの先端技術を採用した結果、光1波あたり1.2Tbpsの大容量伝送と、従来製品比で到達距離の40%向上を両立しながら、システム全体のCO2排出量を60%削減することに成功しました。

当社は、AIやビッグデータ処理の普及に伴うデータトラフィックの急増に対応できるレジリエントなネットワークインフラの拡大と、ネットワーク全体での低消費電力化やCO2排出量の削減を目指し、持続可能な社会の実現に貢献します。

本製品については、2023年2月27日(月曜日)から3月2日(木曜日)までスペインのバルセロナで開催される「MWC Barcelona 2023」で紹介します。

背景

AI、ビックデータ処理、次世代通信規格5Gなどの普及が進むにつれて、無線基地局とコアネットワークの間や、データセンター同士を結ぶ光通信の領域では、伝送量の大容量化や通信距離の長距離化のニーズが高まっています。また通信インフラの拡大に伴い、通信事業者やデータセンター事業者の脱炭素化への取り組みも喫緊の課題となっています。こうしたニーズを背景に、当社は光伝送システム「FUJITSU Network 1FINITY」シリーズにおいて、高信頼かつ低コストで運用可能な光伝送プラットフォーム「1FINITY Ultra Optical System」を製品化し、提供を開始します。

「1FINITY Ultra Optical System」の特長

本製品は、トランスポンダー(光送受信機)「1FINITY T900」およびラインシステム(光波長多重装置)「1FINITY L900」で構成されています。

1. 低消費電力での大容量・長距離通信で、お客様の脱炭素化を支援

「1FINITY T900」は、光1波あたり1.2Tbpsの世界最高クラスの大容量データ送信を実現した光送受信機です。新たに開発された高性能コヒーレント DSP注3および超高速CDM(Coherent Driver Modulator)注4を採用することで 135Gbaud(ギガボー)注5の高速信号伝送が可能となります。さらに当社独自のクローズドループ水冷技術注6を採用することで、従来の空冷システムと比較して2倍の冷却能力と発生する騒音の50%低減を実現しました。

また、ラインシステム「1FINITY L900」では、光ネットワークで一般的に使われるCバンドの波長帯域に加えて、より波長の長いLバンドの帯域の波長も扱うことで光ファイバー1本あたりの通信容量を拡張可能な技術、C+L ROADMアーキテクチャーを採用しました。加えて光信号を送信する際に、伝送路上で信号を増幅することで、到達距離や伝送容量を向上させることができるフォワードラマン増幅も実用化しました。

これらの技術により、お客様が目指すネットワークインフラの拡張性の向上に寄与しつつ、必要なトランスポンダーの設置数と消費電力を削減し、光ネットワーク全体の脱炭素化に貢献します。

2. 柔軟な設置性や、管理の効率化を実現し、レジリエントなネットワーク構築、運用を支援

従来型の光波長多重装置では、多数の光ファイバーケーブルを束ねて装置内に収める必要性から、ケーブル配線の複雑化や設置性の面で課題がありましたが、「1FINITY L900」にはスマート・ファイバー・ケーブル・システム注7を採用することで、ケーブル配線の複雑さを従来比で80%以上削減し、かつ設置時および試運転中のトラブルシューティングを数時間から数秒に短縮することが可能となりました。伝送状況や断線箇所などの光ファイバーの状態を測定解析するOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)注8や、疑似的な波長を用いて、伝送経路の品質の確認が遠隔操作により実現可能となるPseudowave(スードウェーブ)技術注9を機器内部に組み込むことにより、ネットワークの管理をより簡便かつ効率化することも可能となります。

将来的には、広域ネットワーク運用・管理ソフトウェア「FUJITSU Network Virtuora NC」と組み合わせることで、機械学習を用いたネットワークの運用やリソースを最適化できるサービスを提供する予定です。

提供開始時期と地域について

当社は本製品を、日本を含むアジア太平洋地域、北米および欧州全域で、2023年度上期から提供開始予定です。

謝辞

本製品には、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業(JPNP20017)(b1)ポスト5G情報通信システムにおけるテラビット光伝送システムの研究開発」における成果の一部と、総務省委託研究「新たな社会インフラを担う革新的光ネットワーク技術の研究開発 課題Ⅰ 5Tbps級高速大容量・低消費電力光伝送技術の研究開発(JPMI00316)」、および国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT:エヌアイシーティー)の委託研究「高スループット・高稼働な通信を提供する順応型光ネットワーク技術の研究開発(採択番号20501)」における成果の一部を活用しています。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

注釈

  • 注1
    C+L ROADMアーキテクチャー:
    従来のROADM(Reconfigurable Optical Add/drop Multiplexer:構成可変型光分岐挿入装置)では、伝送に利用する波長域に関しては、従来はCバンド帯、Lバンド帯と波長帯により製品を分けていたが、本システムでは両方の波長帯を一括に扱うことが可能であり、システムの伝送最大容量の増加に貢献。
  • 注2
    フォワードラマン増幅:
    光ファイバー中を信号光と励起光が同方向に伝搬し、信号光をラマン励起することで伝送距離を延長させる技術。従来は通信に雑音成分が含まれることが課題だったが、新たに、二次励起ラマン方式を採用したことで、信号光に与える雑音成分影響の低減を実現。古河電気工業株式会社が開発したもの。
  • 注3
    高性能コヒーレントDSP:
    当社がNTTなどとともに、5 nm CMOS技術を用いた最先端DSPとして共同開発。NTTエレクトロニクス株式会社から「ExaSPEED GAIA」として製品化されるもの。
  • 注4
    超高速CDM(Coherent Driver Modulator):
    日本電信電話株式会社(以下、NTT)が開発した、コヒーレント光変調チップとそれを駆動する回路を搭載し、140Gbaudまでの動作を実現する光デバイス。高性能コヒーレントDSP と超高速CDMは、NTTが提唱するIOWN構想を推進する「IOWN Global Forum」で進められているAPN(All-Photonics Network)の取り組みを実現するキーデバイスとして開発されたもの。
  • 注5
    baud:
    信号の変調速度を示す単位。数字が大きいほど大容量の通信が可能であり、本製品では、従来の2倍以上の速度を実現。
  • 注6
    クローズドループ水冷技術:
    冷却構造を全て装置内に収めることで、既存施設を更新する必要がなく、長期間にわたり使用される光伝送装置において不可欠な高信頼性やメンテナンス性を保ちながら、冷却効率を向上させる水冷技術。
  • 注7
    スマート・ファイバー・ケーブル・システム:
    装置内部で光ファイバー接続を事前にインストールする光バックボード方式を採用することによりROADM装置前面で光ファイバーの接続を大幅に削減することが可能。
  • 注8
    OTDR(Optical Time Domain Reflectometer):
    光ファイバーの状態(伝送路の損失、距離、断線箇所、接続損失、反射減衰量)を測定、解析する技術。
  • 注9
    Pseudowave技術:
    サービス波長数の増減時の信号品質劣化を抑え、常に高い信号品質を維持すると共に、今回トランスポンダーから発光する波長を用いることなく、装置内部で生成する疑似的な波長を用いサービスパスの品質の確認を遠隔操作により実現する技術。

関連リンク

当社のSDGsへの貢献について

2015年に国連で採択された持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)は、世界全体が2030年までに達成すべき共通の目標です。当社のパーパス(存在意義)である「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」は、SDGsへの貢献を約束するものです。

本件が貢献を目指す主なSDGs

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