PRESS RELEASE

2023年1月16日
北海道公立大学法人 札幌医科大学
富士通株式会社

札幌医科大学と富士通、ヘルスケア領域のデータポータビリティ実現に向けて、個人の健康データの活用推進に合意

北海道公立大学法人 札幌医科大学注1(以下 札幌医科大学)と富士通株式会社注2(以下 富士通)は、個人が健康や医療に関するデータを主体的に管理するヘルスケア領域のデータポータビリティ注3の実現に向けて、同大学の附属施設である札幌医科大学附属病院注4において電子カルテシステムに蓄積された患者の診療データ(Electronic Health Records、以下 EHR注5)を含む個人の健康データ(PHR注6:Personal Health Records)を活用する取り組みについて合意しました。

本取り組みは、医療機関が持つEHRを患者がスマートフォンから閲覧できる仕組みを構築し、2023年4月より運用を開始。患者自身による健康管理や病気の予防、医療機関による治療や予後管理における患者の健康状態の把握、さらには地域医療間連携の強化や患者エンゲージメント注7向上などの実現を目指します。
札幌医科大学附属病院は、システム設計や運用を監修し、個人の健康データの利活用に向けた環境整備を進めていきます。診療業務における個人の健康データの利活用による医療の質向上や、北海道内の医療機関との先進的な地域医療連携の仕組みを構築していきます。
富士通は、患者本人がEHRを個人のiPhone注8で閲覧できるアプリ(iPhoneアプリ)、患者の健康データをクラウド環境で管理するヘルスケアデータ基盤を開発します。
EHRの外部保存にあたっては次世代医療情報標準規格HL7 FHIRの日本国内における実装ガイドであるJP Core(FHIR JP Core 実装ガイドV1.1.1)注9に沿った形式に変換した上で保存します。

両者は、個人の健康データの利活用を促進させ、患者の健康状態に合わせた最適な医療やサービスの提供の実現や、地域医療の発展を目指していきます。
なお、Apple社のサポートのもと電子カルテシステムとApple社のヘルスケアアプリが相互連携する取り組みは、日本初となります。

背景

超高齢化社会、人生100年時代とも言われ、今後も高齢化が進行していく日本においては、年齢を問わず全ての人が健康で安心して生活していくために、医療サービスを受ける場面だけではなく、患者や家族らが自ら日常的に健康や医療に関するデータを活用し、健康を管理することの重要性が増しています。

先進的な諸外国では、国家レベルの取り組みとしてHL7 FHIRの国内ルールの策定やデータポータビリティを進めており、スマートフォンアプリによる個人の健康データの多目的利用が広がりつつありますが、日本では各医療機関のEHRや個人がスマートフォンなどで管理する情報は利用範囲が限定的であり、個人の健康データ利活用促進のための環境整備が課題となっています。近年では、各医療機関が所有するEHRや患者個人が所有するバイタルデータを患者一人ひとりが個人で管理・活用する社会の実現に向けた施策が政府、各省庁でも議論、推進化注10されています。

このような背景から、北海道という広大なエリアをカバーしている先進的な医療の質向上に努めてきた札幌医科大学と、EHRの標準化やセキュアなクラウド技術の開発に取り組んできた富士通は、このたび、ヘルスケア領域のデータポータビリティを実現することを目指し、札幌医科大学附属病院において個人の健康データを活用する取り組みを開始することに合意しました。

本取り組みについて

1.概要


札幌医科大学附属病院と富士通は、EHRやバイタルデータなどの個人の健康データの活用により、データポータビリティの在り方を検討し、札幌医科大学附属病院と北海道内の医療機関との地域医療連携を推進します。それらを実現するため、患者がスマートフォンからEHRを閲覧できる仕組み、患者の健康データをクラウド環境で管理するヘルスケアデータ基盤を構築します。

札幌医科大学附属病院は、ヘルスケアデータ基盤に保存された患者のバイタルデータとEHRを閲覧でき、患者の健康状態を詳細に把握することで診療業務に活かし、医療の質向上を図ります。北海道内の連携医療機関が当院のEHRおよび患者が同意した個人の健康データを共有、相互利用できる環境を構築することにより、北海道全体の医療の質向上に寄与することを目指します。

富士通は、札幌医科大学附属病院が持つJP Coreに準拠したクラウドベースのEHRへ患者がアクセスするためのスマートフォンアプリ、患者のデータをクラウド環境で管理するヘルスケアデータ基盤を開発します。アプリ上では、個人情報や健康データの外部保存および利用範囲に関する同意を患者自身で選択することができます。富士通はこの同意取得管理に基づいてEHRと患者本人のiPhoneや Apple Watch注8で測定されるバイタルデータなどをヘルスケアデータ基盤へ集約します。

これにより患者は、自身の健康状態とあわせて、検査結果や薬の処方内容といった、これまで紙で病院から受け取っていた診療に関する情報をアプリから時間や場所を問わず確認でき、健康管理に活かすことができるメリットがあります。

なお、本取り組みは、Apple社が提供する「HealthKit注8」を利用したアプリ開発において同社の技術的サポートを受けています。

2.両者の役割


札幌医科大学附属病院

  • 診療データをHL7 FHIR形式に変換するための開発支援
  • アプリ開発での医学面におけるシステム設計サポート
  • 診療業務での個人の健康データ活用による医療の質向上
  • ヘルスケアデータ基盤を活用した新たな地域医療モデルの検討
  • 院内のシステム設計や運用などに関する監修
  • 患者へのアプリ利用の勧奨


富士通

  • 診療データをHL7 FHIR形式へ変換する仕組みの構築
  • EHRが参照できる患者向けスマートフォンアプリの開発および提供
  • 個人の健康データの利活用について、患者本人が主体的に選択できる同意取得管理の仕組みの整備
  • EHRやバイタルデータなどを管理するヘルスケアデータ基盤の提供


本取り組みの全体イメージ 本取り組みの全体イメージ


アプリ画面イメージ アプリ画面イメージ

今後について

両者は、本取り組みを進める中で、個人の健康データの利活用とデータポータビリティの在り方を検討し、さらに複数の医療機関とのデータ活用により、北海道の医療機関との先進的な地域医療連携の仕組みを構築していきます。

札幌医科大学附属病院は、診療業務における個人の健康データの利活用に向けた環境整備を進め、北海道における地域医療の基幹病院として、道内の病院間によるデータ連携をさらに拡大し、より多くの健康データに基づいて患者一人ひとりに合わせた高度な医療の提供を推進します。さらに、患者個人の健康データは、札幌医科大学で実施している糖尿病治療に関するAI開発研究や、これまでEHRを用いて実施していた人工知能研究への活用を検討します。今後、患者の同意により取得した個人の健康データの利用を可能とすることにより、将来的に適切な治療を選択するための有益な情報として活用することが期待できます。

富士通は、ヘルスケア領域のデータポータビリティで集約した幅広い個人の健康データを最新のデジタル技術で有効につなげ、ライフサイクル全般にわたってパーソナライズされたヘルスケアの提供を目指し、サステナブルな世界の実現を目指す「Fujitsu Uvance」のもと、あらゆる人のライフエクスペリエンスを最大化する「Healthy Living」の取り組みを進めていきます。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

注釈

  • 注1
    北海道公立大学法人 札幌医科大学:
    所在地 北海道札幌市、理事長 山下 敏彦。
  • 注2
    富士通株式会社:
    本社 東京都港区、代表取締役社長 時田 隆仁。
  • 注3
    データポータビリティ:
    政府、企業、医療機関などで個別に管理される情報を自分で管理し、自由に持ち運ぶことができるようにすること、その仕組み。
  • 注4
    札幌医科大学附属病院:
    所在地 北海道札幌市、病院長 土橋 和文。
  • 注5
    EHR:
    Electric Health Record。本件のプレスリリースでは、各医療機関における診療情報を施設間で連携活用するために統合したデータの意。
  • 注6
    PHR:
    Personal Health Records。個人の健康・医療・介護に関する情報を統合的に収集し、一元的に保存したデータ。
  • 注7
    患者エンゲージメント:
    患者や家族などが、患者本人の症状や病気、治療方法について、積極的に情報収集や意思決定に参加すること。
  • 注8
    iPhone, Apple Watch, HealthKit:
    Apple inc.の登録商標です。iPhone商標は、アイホン株式会社のライセンスに基づき使用されています。
  • 注9
    HL7 FHIRの日本国内における実装ガイドであるJP Core(FHIR JP Core 実装ガイドV1.1.1):
    HL7 FHIRはHL7(Health Level Seven) Fast Healthcare Interoperability Resourceの略であり、HL7協会によって作成された次世代標準規格。HL7協会(Health Level Seven Inc)は、医療情報の標準規格の開発やその普及促進を目的とする団体。医療情報標準規格は、保健医療分野の適切な情報化に資することを目的に制定された規格。そのうち日本HL7協会(HL7協会 日本支部)公認であり、日本医療情報学会(JAMI)NeXEHRS課題研究会「HL7 FHIR 日本実装検討WG」で作成されたHL7 FHIR標準を元に日本国内で患者データにアクセスするための最小限の適合性要件を定めた日本国内における実装ガイドであるFHIR JP Core 実装ガイドV1.1.1を指す。
  • 注10
    政府、各省庁でも議論、推進化:
    令和4年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太方針2022)」においても、PHRの推進、医療情報の利活用の実現を重点化する方針が国家戦略として示された。

本件に関するお問い合わせ

北海道公立大学法人 札幌医科大学
附属総合情報センター:教授 大西浩文、准教授 廣田健一
電話:011-611-2111(代表)
富士通株式会社



プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容などは発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。

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