PRESS RELEASE

2022年4月5日
富士通株式会社

スペースデブリの軌道を精緻に把握する富士通の新解析システムが「JAXA宇宙状況把握(SSA)システム」において運用開始

当社は、このたび、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(所在地:東京都調布市、理事長:山川 宏、 以下、JAXA)様が運用する地球周回軌道上のスペースデブリの状況を把握する「JAXA宇宙状況把握(SSA:Space Situational Awareness)システム」(以下、「SSAシステム」)において、スペースデブリの軌道を計算する解析システムを新たに構築し、2022年4月1日より筑波宇宙センター(所在地:茨城県つくば市)にて稼働を開始しました。

本解析システムでは、スペースデブリの効果的な観測を行うための観測計画を作成し、光学望遠鏡およびレーダーによる観測から得られたデータに基づいて計算したスペースデブリの軌道を、JAXA様の衛星の軌道と比較解析します。両者の接近を検知した場合は、衝突確率に加え、衝突を回避するための軌道制御に必要な情報を添えて、JAXA様の衛星運用者に自動で通知することで、人工衛星の速やかな軌道修正の対応を支援します。

当社は、今後も解析システムの精度向上に取り組み、JAXA様が推進する宇宙の見える化に寄与するとともに、今後拡大する人工衛星のデータ利活用や宇宙探査などの宇宙利用を見据えた技術開発を行うことで、より安心安全な宇宙開発の実現に貢献していきます。

図1:「JAXA SSAシステム」の概要 図1:「JAXA SSAシステム」の概要

背景

宇宙空間に約1万2,000機も存在する人工衛星は、気象観測や自然災害の監視、位置情報の提供など、私たちの安心安全で便利な生活を支える必要不可欠な宇宙インフラとして運用されており、今後も各国の宇宙事業者による多数の人工衛星の打ち上げが計画されるなど、年々増加することが予想されています。人工衛星の安定運用においては、宇宙空間に1億個以上存在するとされる、ロケットの残骸や運用を終了した人工衛星や、これらの衝突などにより生じた破片などのスペースデブリが脅威となっており、その数は増加の一途を辿っています。スペースデブリは秒速7㎞以上の超高速で地球を周回しており、万一、運用中の人工衛星に衝突すると、破損や故障を招き必要な情報が得られなくなるなど、我々の生活に甚大な被害を及ぼす恐れがあるため国際的に解決すべき社会課題となっています。

当社は、1990年代初頭のJAXA様によるスペースデブリ対策に関する検討開始当初より小惑星探査機「はやぶさ2」などでも使用されている軌道計算技術などを活用しながら、現在の「SSAシステム」の前身となるスペースデブリに関するシステムを構築し、技術を蓄積してきました。今回、当社は本課題解決に向け、スペースデブリの位置や軌道などを正確に把握し動向を予測することで衝突リスクを回避するため、これまでに開発、蓄積してきた技術を結集し、研究用に限定しない実用的な解析システムを新たに構築しました。

図2:スペースデブリのイメージ図 図2:スペースデブリのイメージ図

図3:増加する軌道上の宇宙物体の推移 図3:増加する軌道上の宇宙物体の推移注1

新解析システムの特長

JAXA様が運用する「SSAシステム」は、レーダーと光学望遠鏡、解析システムで構成されており、当社が構築した解析システムは「SSAシステム」の中枢として、スペースデブリを効果的に観測するための観測計画の作成、取得した観測データの管理、また、接近や衝突回避を支援する軌道計算などの解析を担い、主に以下の特長を備えています。

1. 最適な観測計画の作成と観測データ処理能力の向上により、衝突リスクをタイムリーに把握

「SSAシステム」のさらなる強化に向けて今回JAXA様が刷新したレーダーでは、より小さな物体を観測できるため、1日あたりの観測可能な物体数が従来の10倍以上に相当する約1万件におよびます。そのため、大量の物体を最大限に観測できるよう、各物体の観測結果や観測データの処理結果も考慮して常時最適な観測計画を作成できるアルゴリズムを新規に開発しました。また、処理能力も従来比50倍以上の向上を図り、膨大な観測データのタイムリーな処理を実現し、衝突確率や回避に必要な情報をJAXA様の衛星運用者に速やかに提供可能とし、迅速な危険把握に貢献します。

2. 定常的な作業を自動化し、解析運用者の運用負荷を軽減

観測物体や処理数の飛躍的な増加に伴う運用負荷の軽減施策として、これまで解析運用者が主に手動で行っていた観測計画の策定や観測データの処理など定常的な作業を自動で行う機能を新規に開発しました。これにより、解析運用者の作業を処理結果の確認と緊急時の対応に集約し、運用負荷の軽減と効率的な運用を支援します。

3. 国が運用管理する「SSAシステム」との連携

観測データなどの連携において、JAXA様の「SSAシステム」のほか、国が運用管理している「SSAシステム」との連携が可能な機能を新たに搭載しました。国の「SSAシステム」からの観測要求も考慮して効果的な観測が出来る仕組みを付与しています。

今後について

当社は、今後も解析システムの精度向上に取り組み、JAXA様が推進する宇宙の見える化に寄与していくとともに、人工衛星の増大や宇宙探査領域の拡大によって実現される人工衛星のデータ利用や宇宙旅行などの宇宙利用を見据え、JAXA様をはじめとする宇宙事業者向けの技術開発などを行い、宇宙環境の保全や安心安全な宇宙利用に貢献していきます。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

注釈

  • 注1
    増加する軌道上の宇宙物体の推移:
    「Orbital Debris Quarterly News」(2022年3月)。出典 NASA。

関連リンク

当社のSDGsへの貢献について

2015年に国連で採択された持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)は、世界全体が2030年までに達成すべき共通の目標です。当社のパーパス(存在意義)である「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」は、SDGsへの貢献を約束するものです。

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