PRESS RELEASE (技術)

2022年3月24日
富士通株式会社
学校法人東洋大学
尼崎市

AIと犯罪心理学を活用し特殊詐欺を未然に防ぐ日本初の共同研究を尼崎市で開始

富士通株式会社注1(以下、富士通)、学校法人東洋大学注2(以下、東洋大学)、尼崎市注3はこのたび、複雑化かつ巧妙化する特殊詐欺の撲滅に向けて、AIと犯罪心理学を組み合わせたコンバージングテクノロジー注4を活用し、被害者の判断力が低下していないかなどの心理状態を推定しリスクを可視化することで特殊詐欺を未然に防止する日本初の共同研究を開始しました。

本共同研究では、還付金詐欺などの特殊詐欺を高精度に検知し未然に防止する特殊詐欺推定AIモデルの構築を目指し注5ており、2022年3月30日(水曜日)と31日(木曜日)の二日間、尼崎市の高齢者を対象に、富士通が開発したヒューマンセンシング技術に基づく感情推定と、東洋大学が開発した心理尺度を用いた感情状態の測定を活用した1回目の実証実験を行います。実証実験で取得したデータを富士通と東洋大学が分析し、分析結果を踏まえて富士通が構築した特殊詐欺推定AIモデルの有効性検証を行う2回目の実証実験を、2022年度上半期に3者で実施します。

3者は本共同研究の成果を通して、超高齢社会においても、高齢者が安心安全な生活を送れる環境づくりに貢献することを目指します。

背景と目的

警察庁によると、2021年における全国の特殊詐欺の認知件数注6は、前年比911件増加し14,461件で、その内、65歳以上の高齢者を標的とする特殊詐欺が88.2%と大部分を占めています。尼崎市では、警察、防犯協会等と連携し、現金自動預払機(ATM)のパトロールなどの特殊詐欺対策を強化する一方で、2021年の特殊詐欺の認知件数は102件、被害総額は約9,700万円(いずれも速報値)と深刻化しており、さらなる対策が急務となっています。

本共同研究では、特殊詐欺被害の未然防止に向けて、富士通のAIを活用したヒューマンセンシング技術と、東洋大学の犯罪心理学に関する研究成果を組み合わせたコンバージングテクノロジーを活用することで、特殊詐欺を高精度に検知する特殊詐欺推定AIモデルの開発を目指します。

共同研究の概要

共同研究のイメージ図 共同研究のイメージ図


特殊詐欺推定AIモデルのイメージ動画

1.共同研究の期間

2022年2月17日(木曜日)から2023年3月31日(金曜日)まで

2.共同研究の内容

  1. 事前検証:シナリオ作成
    富士通と東洋大学は、兵庫県警察協力のもと、特殊詐欺の音声から特殊詐欺特有のキーワードとパターンを分析し、実証実験で使用するリアリティのある特殊詐欺シナリオを事前に作成しました。
  2. 実証実験:高齢者のデータ測定
    3者は、2022年3月30日(水曜日)、31日(木曜日)の二日間、尼崎市役所において、尼崎市在住の高齢者(数十名)を協力者とし、実証実験を行います。1. で作成した特殊詐欺シナリオを基に高齢者に電話をかけ、事前に録音した特殊詐欺グループを装った音声を流します。富士通が開発した、カメラ映像から人の行動を認識するAI技術「行動分析技術 Actlyzer」注7、顔の表情から感情などを推定する表情認識AI技術、顔の画像からリアルタイムに脈拍を推定するAI技術を用いて、協力者の顔の表情や脈拍などのデータをカメラやセンサーで捉えます。また、事後アンケートにより、そのときの心理状態を把握します。
  3. 実証実験後:分析と特殊詐欺推定AIモデルの開発
    東洋大学が、実証で測定した協力者のセンシングデータとアンケート結果から協力者の心理状態と身体状態の関係性を分析します。その分析結果を基に富士通は、協力者が騙された状態であることを推定し、還付金詐欺を検知する特殊詐欺推定AIモデルを構築します。さらに、3者は、開発した特殊詐欺推定AIモデルを用いた2回目の実証実験を2022年度上半期に実施して有効性の検証と改善を行います。また、富士通は、2022年度中に特殊詐欺全般を高精度に検知する特殊詐欺推定AIモデルの開発を目指します。

  4. 3.3者の役割

    • 富士通:実証シナリオの作成、実証方法の検討と実施、データ収集、特殊詐欺推定AIモデルの設計と開発
    • 東洋大学:実証シナリオの作成、心理学に基づく分析、データ収集、特殊詐欺推定AIモデルの設計
    • 尼崎市:実証に係る協力者等の調整、実施場所等環境の提供

    今後の展望

    3者は、複雑化かつ巧妙化する特殊詐欺において共通的に活用できる特殊詐欺推定AIモデルの開発を目指す取り組みを推進することにより、超高齢社会においても、高齢者が安心安全な生活を送れる環境づくりに貢献することを目指します。

    富士通株式会社 フェロー 研究本部 先端融合技術研究所 増本大器所長のコメント

    尼崎市の特殊詐欺から高齢者を守るための先進的な取り組みと桐生教授の特殊詐欺防止に向けた長年の活動に感銘を受け、異分野の知見を融合したコンバージングテクノロジーの研究を進めています。この研究を端緒として、高齢者が安心安全に暮らせるサステナブルな社会の実現を目指します。

    東洋大学 社会学部社会心理学科 桐生正幸教授のコメント

    本実証は、特殊詐欺シーンにおける加害者と被害者との関係性に焦点を当て、より具体的で効果的な防犯対策を提案するものです。特に、これまで研究が進んでいない被害者側の心身の変化に注目しAIによる特殊詐欺での予防介入の実現を目指すものであり、被害者の心情に寄り添った、これまでにない温かな特殊詐欺対策と言えます。

    尼崎市 稲村和美市長のコメント

    尼崎市では、2018年度から兵庫県警察本部等と連携のもと、特殊詐欺対策に取り組んでいます。今回の共同研究が、本市はもちろん、全国的な特殊詐欺の抑止に繋がることを期待し、しっかり連携してまいります。

    商標について

    記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

    注釈

    本件に関するお問い合わせ

    富士通株式会社
    研究本部 先端融合技術研究所
    E-mail:fj-actlyzer-contact@dl.jp.fujitsu.com
    学校法人東洋大学
    総務部 広報課
    電話:03-3945-7571
    E-mail:mlkoho@toyo.jp
    尼崎市
    危機管理安全局 危機管理安全部 生活安全課
    電話:06-6489-6502
    FAX:06-6489-6686
    E-mail:ama-seikatsuanzen@city.amagasaki.hyogo.jp



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