PRESS RELEASE

2021年11月18日
富士通株式会社

富士通のブロックチェーンソリューションを活用し、世界の水資源不足を解決する水取引プラットフォームの構築を開始

Botanical Water Technologies社と持続可能で循環的な新しい飲用水を提供

当社はこのほど、英国のBotanical Water Technologies LTD.注1(以下、BWT社)と、サステナビリティを実現するウォーターオフセットの概念に基づく植物由来の飲用水取引を可能にする世界初の水取引プラットフォーム「Botanical Water Exchange(以下、BWX)」に関する契約を締結し、2021年11月8日より構築を開始しました。

BWT社は、食品工場で野菜や果物の圧縮時に発生する従来廃棄されていた水分を植物由来の純水(以下、Botanical Water)として精製する革新的な技術を保有し、飲用水の確保が困難な地域にBotanical Waterを販売するとともに一部を無償で提供しています。

本プラットフォームは、当社のブロックチェーンソリューションである「FUJITSU Track and Trust」サービスを用いて、Botanical Waterの精製、販売、購入、配送、利用といった工程における高いトレーサビリティを実現し、2022年4月にBWT社より提供開始予定です。これにより、濃縮ジュース工場や砂糖工場、アルコール蒸留所、飲料メーカーなどの様々な企業がBotanical Waterを売買することができる市場を形成し、安心安全な水取引を実現します。

当社は、食品工場や飲料メーカーが参画できるプラットフォームを構築することで、業界横断的な取引の新しい仕組みづくりを目指しています。今後、データドリブンマネジメントにより、お客様のビジネスをアジャイルに変革しSDGsに貢献する取り組みをさらに進めていきます。

背景

国際連合によると、世界人口の約3分の2にあたる約40億人が深刻な水不足に見舞われており注2、2030年までの達成を目指す持続可能な開発目標(SDGs)では、この水不足への対応が急務となっています。

SDGsをはじめ環境への関心が高まる中、飲料メーカーではCO2排出量の削減に加え、水源地の保全や工場における水使用量の抑制など、環境負荷を低減する取り組みを重要視しています。

当社の構築する「BWX」の概要

当社は、ブロックチェーン技術を活用しサプライチェーンのトレーサビリティを実現する「FUJITSU Track and Trust」サービスを用いて、水の取引プラットフォームである「BWX」を構築します。

野菜や果物の濃縮ジュース工場、サトウキビを加工する砂糖工場、アルコール蒸留所は、濃縮工程の途中にBWT社の設備を追加することで、従来廃棄されていた水を浄化してBotanical Waterを精製し、「BWX」上で他の食品、飲料メーカーへ販売することができるほか、再利用可能な新しい水として循環的に自社で利用でき、Botanical Waterの精製、販売、購入、配送、利用といった工程における高いトレーサビリティを実現可能です。

また、Botanical Waterを自社工場で再利用したい企業は、「BWX」を通じて最も近いBotanical waterを精製する工場から購入することで、輸送コストが下がり、環境への負荷や二酸化炭素の排出量を減らし、カーボンニュートラルへの貢献にもつながります。

さらに、「BWX」上で利用可能なウォータークレジット注3を購入することで、自社の水使用量と同量の水を寄付し、環境への影響をゼロにするだけでなく、ウォーター・ポジティブな企業活動、ESG注4の推進やコンプライアンス対応も可能になります。例えば、多くの事業水を使用している都市部の大企業が、水不足の地域に近い食品工場に資金を支払い、ウォータークレジットを取得することで、その資金をもとに食品工場は近隣地域に清潔な飲用水を提供します。これにより、その大企業は特定非営利活動法人であるBotanical Water Foundationを通じて、間接的に慈善事業を行うことが可能になります。

「BWX」の概要図 「BWX」の概要図

「FUJITSU Track and Trust」の概要

「FUJITSU Track and Trust」サービスは、ブロックチェーン技術を含む各種オープンソースソフトウェアの活用や数万システム以上のシステム運用経験を持つ当社のノウハウに加え、各業種の知識や知見に基づいて、透明性の高いプラットフォームを実現するサービスです。ブロックチェーン技術をビジネスに活用する際に必要となる認証やユーザー権限管理に加え、UI、インフラ、ネットワークなどの幅広い知見と高度な技術、長年培ってきた業種業務ノウハウを統合し、アジャイル手法を用いて、お客様のビジネスに合わせたプラットフォームをスモールスタートで構築可能です。

今回のケースでは、様々な輸送ネットワークにプラグインする機能として、輸送およびサプライチェーンのトラッキング、水のダイナミックプライシング、ウォータークレジットのトラッキングおよび実装を提供します。参加企業は「BWX」を通じて、新たな水源の出どころ、品質、輸送経路を確認の上、安心して売買できます。これにより、売買の取引に関わるあらゆるステークホルダーを繋ぎ、透明性の高い取引を実現します。

Botanical Water Technologies LTD. CEO Terry Paule様のコメント

製造工程の無駄を減らすことが循環型経済の実現において重要なポイントです。当社の技術を用いることで、例えば、サトウキビから砂糖を抽出した後、まだ利用可能な60%の水分を回収することができます。このように精製されたBotanical Waterを多く所有する食品、飲料メーカーは、持続可能な原材料として循環的に利用し、新たな飲用水として販売することができます。さらにウォーター・ポジティブなESGプログラムや非財務指標の一部として「BWX」でウォータークレジットを提供することも可能です。

富士通はイノベーションに加え画期的な方法論を通じてより良い社会を実現することに注力しています。だからこそ、今回富士通と共創することに決定いたしました。

富士通株式会社 FUJITSU Track and Trust Solution Center センター長 Frederik De Breuck のコメント

新たなブロックチェーンソリューションである「FUJITSU Track and Trust」サービスは、ベルギーの「FUJITSU Track and Trust Solution Center」で開発され、サービス提供を開始しました。このたび、使用量と生産量を差し引きゼロにするネットゼロの水取引という画期的な取り組みをBWT社と実現するために、プライベートかつ許可型のブロックチェーンを活用したプラットフォームを提案し、今回の契約に至りました。私たちのチームは、本センターを中核に様々なノウハウや専門スキルを持つメンバーが集まっており、今後も、インドやイギリス、日本の拠点と連携するグローバル体制のもと、お客様の経営ビジョンの実現やグローバルな社会課題解決を支えるブロックチェーンソリューションをお客様に最適な形で提案していきます。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

注釈

  • 注1
    Botanical Water Technologies LTD:
    本社 イギリス、CEO Terry Paule、2020年に設立。砂糖や濃縮ジュースを作ると同時に果物や野菜の内部に存在する水を採取する技術を保有する企業。
    https://www.wegrowwater.com/
  • 注2
    世界人口の約3分の2にあたる約40億人が深刻な水不足に見舞われており:
    https://www.unwater.org/water-facts/scarcity/
  • 注3
    ウォータークレジット:
    カーボンクレジットと同様の概念で、企業が主にウォーターオフセットへ利用するために取引されるもののこと。企業が製品やサービスの製造や物流などの過程における水使用量を埋め合わせるためにウォータークレジットを購入し、同量の水が寄付されることで、相殺(オフセット)され、企業としての水使用量が減少する。
  • 注4
    ESG:
    持続可能な世界の実現のために、企業の長期的成長に重要な環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の3つの観点。

関連リンク

当社のSDGsへの貢献について

2015年に国連で採択された持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)は、世界全体が2030年までに達成すべき共通の目標です。当社のパーパス(存在意義)である「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」は、SDGsへの貢献を約束するものです。

本件が貢献を目指す主なSDGs

本件に関するお問い合わせ




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