PRESS RELEASE

2021年3月16日
富士通株式会社

医薬品の適正使用情報を電子カルテを通じて提供、質の高い医療サービスと患者のQOL向上に貢献

製薬企業の提供する情報を直接電子カルテに表示する実証実験を医療機関と開始

当社は、医療従事者と患者が医薬品の適正使用に役立つ情報を診療現場で診療時に閲覧できることで、質の高い医療サービスと患者のQOL(Quality of Life)向上に貢献するサービス(以下、薬剤情報提供サービス)の実現に向けて、日本赤十字社さいたま赤十字病院(注1)(以下、さいたま赤十字病院)および春日井市民病院(注2)において、2021年3月9日より実証実験を開始しました。

薬剤情報提供サービスは、医薬品に関する添付文書などの基本文書や、法令で定められた情報伝達(注3)に加えて、製薬企業が従来、MR(注4)や勉強会などを通して直接医療機関に提供してきた薬剤情報や患者向けのパンフレットなどを、電子カルテシステムや地域医療ネットワークを介して、診療時に医療従事者、または患者に速やかに提供するものです。今回、薬剤情報提供サービスの操作性や医療現場における実用性を検証し、製薬企業から医療機関への新たな情報提供手段としての有効性を確認します。

当社は今後、本実証実験を踏まえて、2021年6月に医療機関向けに薬剤情報提供サービスの提供を開始し、ヘルスケア領域のデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)を加速させ、安心・安全で健やかに暮らせる健康長寿社会に貢献していきます。

背景

医療従事者は、従来、製薬企業のMRや勉強会などを通して、医薬品に関する様々な情報を入手してきましたが、近年、医療機関内におけるコンプライアンス強化や昨今の新型コロナウイルス感染拡大の影響により、医療従事者と製薬企業の接点が大幅に制限されるようになっています。このような状況下において、医療従事者は、医薬品に関する情報を、インターネットや専用の会員制情報登録サイト、製薬企業が個別に提供する資料や情報サイトを横断して情報検索し、入手する必要があり、非常に非効率となっています。また、機微な診療情報を扱う電子カルテシステムにアクセスするパソコンやネットワークは専用環境であり、外部のインターネットに接続できないことがほとんどのため、医療従事者からは、診療時に患者の電子カルテを参照しながらタイムリーかつ正確に薬剤情報を入手したいという要望がありました。

当社はこのような要望に応えるべく、医薬品に関する添付文書などの基本文書や、法令で定められた情報伝達、薬剤情報や患者向けのパンフレットなどを、診療現場で使用される電子カルテシステムや地域医療ネットワークを介して診療時に速やかに医療従事者が入手し、患者に情報提供できる薬剤情報提供サービスの開発に着手し、2020年3月より静岡県立病院機構静岡県立総合病院(注5)および地域医療ネットワーク「ふじのくにねっと」(注6)にて機能検証を行ってきました。

薬剤情報提供サービスの概要 薬剤情報提供サービスの概要

実証実験の概要

今回の実証実験では、薬剤情報提供サービスの操作性や医療現場における実用性を検証し、製薬企業から医療機関への新たな情報提供手段としての有効性を確認します。

  1. 期間:
    2021年3月9日(火曜日)から 4月28日(水曜日)まで
  2. 実証場所:
    日本赤十字社さいたま赤十字病院(埼玉県さいたま市中央区新都心1-5)
    春日井市民病院(愛知県春日井市鷹来町1-1-1)
  3. 薬剤情報提供サービスの特長:
    • 電子カルテシステムとの連携により、診療時に安全に効果的な情報の入手を実現
      当社のクラウドを活用し、厚生労働省のガイドライン(注7)に準拠したセキュリティの高いネットワーク経由で、製薬企業から提供された情報と電子カルテシステムを連携させることで、医療従事者は医薬品の適正使用に役立つ情報を電子カルテシステムから直接閲覧できます。これにより、医薬品に関連する基本情報から、専門性の高い情報、服薬指導箋(注8)などの情報まで、医療従事者が診療時に情報検索の負荷なく効率よく入手でき、速やかに患者に医薬品の適正使用に関する情報を提供することで、質の高い医療サービスと患者のQOL向上に貢献します。

    • 地域医療ネットワークとの連携により、地域医療へ貢献
      地域の医療機関が患者の診療情報を共有し、地域完結型の医療提供体制を実現するために構築されてきた地域医療ネットワーク網を活用し、電子カルテシステムを導入している病院と連携する地域内の病院や診療所からも薬剤情報の閲覧が可能になります。これにより、地域全体で、医薬品の適正使用による質の高い医療提供体制の実現に貢献します。

    • 豊富な薬剤情報コンテンツを医療機関へ一括展開することにより、製薬企業の情報提供の効率化を実現
      当システムを活用することで製薬企業は、自社のMR、自社サイト、医療従事者向け会員制サイトなど様々な手段を使って医療従事者に提供してきた薬剤情報を、タイムリーかつ複数の医療機関へ一括で効率良く提供することが可能になります。また、製薬企業各社が個別に薬剤情報を提供する仕組みを用意するのではなく、製薬企業間で共通ルールを策定し、各社共通のプラットフォームで医療機関に情報提供が可能です。医療機関にとっても、電子カルテシステムまたは地域医療ネットワークから、様々な手段で入手していた情報をすべてこのサービスから入手可能となり、情報入手の大幅な効率化が実現できます。
薬剤情報提供サービスの利用イメージ 薬剤情報提供サービスの利用イメージ

今後について

当社は、さいたま赤十字病院および春日井市民病院における実証実験を経て、2021年6月に医療機関向けにサービス提供を開始する予定です。当社の電子カルテシステムと地域医療ネットワークは業界トップのシェアであり、特に電子カルテシステムは約33%もの高いシェアがあるため、まずは電子カルテシステムを導入している大規模医療機関から展開を始めます。そして、2026年3月末までに、600の電子カルテシステム導入医療機関と、3,000の地域医療ネットワーク連携施設へと拡大します。

また、本サービスの提供を足掛かりに、今後は医療機関とヘルスケア関連企業をつなぎ、生活者にウェルビーイング(注9)を届けるプラットフォームとしてサービスを拡大させます。例えば医療現場と製薬企業のリアルタイムなコミュニケーションを可能にし、医療従事者や患者が欲しい情報を、いつでも最適な方法で手に入れられる世界を実現するなど、持続的に医療機関と生活者を支える仕組みを提供します。当社は今後も、ヘルスケア領域のDXを加速させ、安心・安全で健やかに暮らせる健康長寿社会に貢献していきます。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

注釈

  • 注1
    日本赤十字社さいたま赤十字病院:
    所在地 埼玉県さいたま市。院長 安藤昭彦。
  • 注2
    春日井市民病院:
    所在地 愛知県春日井市。院長 成瀬友彦。
  • 注3
    法令で定められた情報伝達:
    GVP(Good Vigilance Practice)で定められた、医薬品の製造販売後の安全管理に関する基準。具体的には、添付文書(使用上の注意)の改訂や、イエローレター、ブルーレターなどの文書。
  • 注4
    MR:
    Medical Representativeの略称。医療従事者を訪問して、医薬品の適正使用のために情報を提供、収集、伝達することを主な業務とする者。
  • 注5
    静岡県立病院機構静岡県立総合病院:
    所在地 静岡県静岡市。院長 田中一成。
  • 注6
    「ふじのくにねっと」:
    ふじのくにバーチャル・メガ・ホスピタル協議会が運営する静岡県の広域地域医療ネットワーク。
  • 注7
    厚生労働省のガイドライン:
    医療情報システムの安全管理に関するガイドライン。
  • 注8
    服薬指導箋:
    服薬に際しての注意事項を記載している患者向けの資料。
  • 注9
    ウェルビ―イング:
    生活者に身体的、精神的、社会的に良好な状態をとどけること。
  • 本件に関するお問い合わせ




    プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容などは発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。

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