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PRESS RELEASE

2019年9月20日
富士通株式会社
ペプチドリーム株式会社

富士通とペプチドリーム、中分子創薬に関する共同研究を開始

「デジタルアニーラ」を活用し、創薬プロセスにおける候補化合物探索の高効率化と高速化を目指す

富士通株式会社(注1)(以下、富士通)とペプチドリーム株式会社(注2)(以下、ペプチドリーム)はこのたび、組合せ最適化問題を高速に解く次世代アーキテクチャー「デジタルアニーラ」を活用し、中分子(ペプチド)創薬分野において、共同開発を前提とした共同研究を開始することに合意しました。

今後、富士通が持つ独自の高速コンピューティング技術と、ペプチドリームが有する特殊ペプチド(注3)に関する先進的な知見や豊富な実験データを組み合わせ、中分子創薬分野における革新的な「in silico創薬(注4)」技術の開発と、その利用による医薬品候補化合物探索の飛躍的な効率化を目指します。

現在、最も流通している医薬品である低分子医薬品は、内服薬として開発しやすく、またコストが安価という長所がある反面、標的への選択性が低いために他の部位にまで作用し副作用が出やすいという短所があります。一方、抗体医薬品(高分子医薬品)は、コストは高額ですが、選択性が高いために副作用が出にくいという長所があります。そのような中、注目を集めているペプチド医薬品(中分子医薬品)は、その分子量が低分子医薬品と抗体医薬品の中間に位置し、コストを比較的抑制でき、副作用が出にくいという、両者の長所を併せ持っています。

ペプチドを用いた創薬のプロセスにおいては、数兆種類の候補化合物から数千種類を抽出し、さらに数十種類へと絞り込んでいく探索工程では、コンピュータの中だけでできる「ドライ」な実験に加えて研究室での「ウェット」な実験を繰り返すプロセスが必要となり、一般的に数か月から年の単位で時間がかかります。化合物の絞り込みにおいては分子の安定配座を理解することが重要ですが、現状のコンピュータでの解析では、その安定配座情報を得るには化合物一種類あたり数日間かかることが課題となっています。

富士通は、実社会における様々な要因の組み合わせを考慮しながら最適解を見つけ出す組合せ最適化問題に対し、株式会社富士通研究所(注5)が開発した次世代コンピューティング・アーキテクチャー「デジタルアニーラ」を、2018年5月よりサービス提供しています。これまで計算量が膨大で、従来のコンピュータでは解くことができなかった問題において最適解を見つけ出すことができるため、物流の配送最適化、工場における部品配置の最適化、金融におけるポートフォリオ最適化、材料・創薬における候補絞込みなど、幅広い領域での活用が期待できます。

ペプチドリームは、創薬において独自の創薬開発プラットフォームシステム「PDPS(Peptide Discovery Platform System)」を有しており、多種多様な非天然型のアミノ酸を含む特殊ペプチドを自在に作り出し、医薬品の候補化合物を短期間で探索することができます。これにより、従来の低分子医薬品や抗体医薬品では狙えなかった広い範囲の疾患を対象とした数多くの医薬品候補化合物の開発を進めています。

富士通とペプチドリームは、「デジタルアニーラ」を活用することにより、ペプチドリームが有する中分子創薬プロセスにおける候補化合物の探索工程をさらに高速化することを目的に、中分子創薬技術の開発・実証を共同で行っていきます。

共同研究の内容

中分子創薬においては、その中分子の安定配座の情報を得ることが重要ですが、安定配座はその主鎖と側鎖(注6)の構造で決まります。

ペプチドリームの持つアミノ酸の配列情報や実験データなど膨大な特殊ペプチドのデータベースを活用し、富士通の「デジタルアニーラ」でその組合せ最適化計算を行い、特殊ペプチドの安定配座が高速に得られることを検証していきます。

今回の共同研究によって特殊ペプチドの安定配座探索技術を確立し、ペプチドを用いた中分子創薬における「デジタルアニーラ」の有用性の実証を目指します。また、ペプチドリームの候補化合物開発における探索工程に適用することで、数日かかる探索時間を数分レベルに大幅に短縮、医薬品候補化合物の発見を飛躍的に効率化し、新薬実現の可能性向上に貢献することを目指していきます。

富士通株式会社 執行役員常務 吉澤尚子のコメント

富士通は、計算量が膨大になり従来のコンピュータでは解くことが難しかった組合せ最適化問題を高速に解くことができる「デジタルアニーラ」により、様々な分野における多くの社会的な課題の解決に取り組んでいます。

今回の取り組みで、化合物探索において高速かつ高精度で画期的な技術を開発し、中分子創薬の探索工程で課題とされる長時間にわたる探索作業時間を飛躍的に効率化することで、課題解決を目指します。

先進的な知見と革新的な技術により中分子創薬分野をリードするペプチドリームと、富士通独自の最先端のコンピューティング技術を活かした取り組みによる相乗効果で、革新的な新薬創出に貢献していきたいと考えています。

ペプチドリーム株式会社 取締役副社長 舛屋圭一のコメント

特殊ペプチドの探索および最適化において、ペプチドの水中での安定配座およびペプチドがタンパク質と相互作用する際の安定配座を理解することは大変重要な要素となっています。これまでのコンピュータでの解析では、最速でも数日かかっていたそれらの計算を数分まで短縮する可能性を、富士通と「デジタルアニーラ」を通じて連携できることを大変喜ばしく思っています。これにより特殊ペプチド探索工程を飛躍的に効率化し、革新的な新薬創出にこれまで以上に貢献していきたいと考えています。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 富士通株式会社:
本社 東京都港区、代表取締役社長 時田 隆仁。
注2 ペプチドリーム株式会社:
本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 リード・パトリック。
注3 ペプチド:
2個以上のアミノ酸分子が化学結合によって鎖状あるいは環状につながった化合物。特殊ペプチドは非天然型のアミノ酸を含む化合物。
注4 in silico創薬:
シミュレーションなどの計算で結果を予測する手法を用いてコンピュータ内で行う創薬。
注5 株式会社富士通研究所:
本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 古田 英範。
注6 主鎖と側鎖:
ペプチドやタンパク質などの高分子化合物の骨格を成すつながりを主鎖、主鎖から枝分かれした部分を側鎖という。

本件に関するお問い合わせ

富士通コンタクトライン(総合窓口)
電話 0120-933-200
受付時間: 9時~17時30分(土曜日・日曜日・祝日・富士通指定の休業日を除く)

ペプチドリーム株式会社
IR広報部
電話 044-223-6612
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