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PRESS RELEASE (技術)

2019年3月20日
株式会社富士通研究所

コンタクトセンターに接続するまでの待ち時間を短縮できる技術を開発

自然な会話をAIで分析し、応対トラブル発生を高精度に検知

株式会社富士通研究所(注1)は、コンタクトセンターにおけるお客様とオペレーターの会話をAIにより分析することで、通話中の応対トラブルの発生を9割以上の精度で検知する技術を開発しました。

コンタクトセンターでは、応対トラブルが発生した場合、その通話時間が通常より長くなるため、他のお客様のオペレーター接続待ち時間が長くなる問題が生じています。今回、これまで分析が困難だったお客様とオペレーターとの同時発声、言い澱み、文法から外れた発声などが含まれる自然な会話も分析できるようになり、応対トラブル発生を早期かつ高精度に検知することを可能にしました。

本技術を活用することで、コンタクトセンターの管理者は、応対トラブルが発生した通話を途中でオペレーターから引き継ぐなどの支援を早期に行うことができます。これにより、コンタクトセンター全体のオペレーター接続待ち時間を短縮し、顧客満足度向上に貢献することが期待されます。

本技術の概要は、早稲田大学で開催予定の「2019年電子情報通信学会総合大会」にて、3月21日(木曜日)に発表します。

開発の背景

コンタクトセンターでは、待ち時間がお客様の不満に直結するため、オペレーターの稼働率をあげることが重要です。しかし、クレームなどお客様とのトラブルが発生した場合は、通常よりも長い応対となるため、結果として、他のお客様のオペレーター接続の待ち時間が長くなってしまいます。その事態を少しでも緩和するために、コンタクトセンターの管理者がその応対を把握し、早期に引き継ぐなどの高度なサポートが必要となります。

課題

管理者による高度なサポートを実行するためには、応対時のトラブル発生を早期に検知する必要があります。その対策として、従来、お客様とオペレーターの会話を音声認識技術によりテキストに変換し、そのテキストを分析することでアラートを自動的に挙げる方法が用いられていますが、お客様とオペレーターの声が同時発声された場合や、言い澱み、文法から外れた発声の際には音声認識が困難なため、的確にトラブル発生を検知することが困難でした。

開発した技術

今回、富士通株式会社のAI技術「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」を用いて、お客様とオペレーターの自然な会話から応対トラブルの発生をリアルタイムに検知する技術を開発しました。開発した技術の特長は以下のとおりです。

  1. 応対トラブル発生の確からしさをスコア化

    トラブルが発生した際の会話で多くなる傾向にある、「~ではなく」「分からない」などの否定的なキーワードを検出用のリストとして活用します。さらに今回、「sou」や「naku」などの音声言語の最小単位である音素の並びの傾向を認識することで、お客様とオペレーターの同時発声時や言い澱みなどで一部のキーワードが認識できない場合や、「そうではなく」「そうじゃなく」といった多様な言い回しがある場合でもトラブル発生を検出できます。

    これらのトラブル発生の際に特有な否定的なキーワード発声や、会話全体の声の高さや大きさなどから判断したストレス状態を会話の一部の情報として検出し、事前に学習されたディープニューラルネットワークに入力することで、トラブル発生の確からしさをスコアとして算出します(図1)。

  2. トラブル時の会話の特徴の時間変化パターンと算出したスコアの軌跡を比べることで高精度な検知を実現

    トラブルが発生した際の会話では、トラブル時の会話の特徴が通話の冒頭から顕在化する傾向や、全体の会話の中でもその特徴が多くを占める傾向にあるなど、特有の時間変化パターンがあることが分かりました。そこで、算出した応対トラブル発生の確からしさのスコアの軌跡が、これらの時間変化のパターンと近いかどうかでトラブル有無を判定する技術を開発しました(特許出願中)。これにより、スコアだけではある程度の長さの通話から算出しないと検知できない中、パターンと照合することで通話開始から経過時間が短い通話途中であっても、応対トラブルの発生を高精度に検知することが可能になります(図2)。

図1 応対トラブル検知の技術概要
図1 応対トラブル検知の技術概要
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図2 応対トラブル発生の確からしさのスコアの軌跡とトラブル有無の関係
図2 応対トラブル発生の確からしさのスコアの軌跡とトラブル有無の関係
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効果

実際のコンタクトセンターの会話データ(442通話分)を用いた評価実験において、従来技術ではトラブル検知が困難であったお客様とオペレーターの同時発声などが含まれていても、通話中のトラブル発生に対して約91%と高精度に検知できることを確認しました。これをオペレーターの稼働率が高いコンタクトセンターに適用した場合を試算すると、お客様の待ち時間を平均で約2割短縮でき、顧客満足度向上への貢献が期待できます。

今後

今回開発した技術は、コンタクトセンター用の富士通のテレフォニー基盤におけるAI技術を活用した応対トラブル検知機能として実用化を目指します。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 株式会社富士通研究所:
本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 古田英範。

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
IoTシステム研究所
電話 044-754-2532(直通)
メール speech_recognition_pr@ml.labs.fujitsu.com


プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容、お問い合わせ先などは、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。