このページの本文へ移動
  1. ホーム >
  2. プレスリリース >
  3. 糖尿病治療における経口血糖降下薬の処方最適化に関するAIによる学習モデル構築の共同研究開発に着手

PRESS RELEASE

2019年2月12日
北海道公立大学法人札幌医科大学
富士通株式会社
株式会社富士通北陸システムズ

糖尿病治療における経口血糖降下薬の処方最適化に関する
AIによる学習モデル構築の共同研究開発に着手

北海道公立大学法人札幌医科大学(注1)(以下、札幌医科大学)と富士通株式会社(注2)(以下、富士通)、株式会社富士通北陸システムズ(注3)(以下、富士通北陸システムズ)は、臨床情報データのAI活用に向けた共同研究として、糖尿病治療における経口血糖降下薬の処方最適化に関するAIによる学習モデルの構築に2019年2月より着手します。

本共同研究開発は、糖尿病患者への投薬の効果をAIが予測することによる診療支援を目的としたものです。電子カルテシステムや診療DWH(注4)などに蓄積された患者の検査値や、糖尿病治療薬の一種である経口血糖降下薬の処方情報について機械学習を用いることにより、糖尿病における一般的な合併症予防の目標値であるHbA1c値(注5)7.0%未満となるよう、治療の効果を予測する技術の開発を目指します。

これにより、インスリン製剤を必要としない患者に対して、最適な経口血糖降下薬の選定、組合せなどを考慮した投薬が可能となることを期待しています。

三者は今後も本共同研究開発における成果の精度や汎用性をさらに高めるとともに、他の疾患におけるAI技術の活用についても共同研究開発をしていきます。

背景

昨今、医療分野におけるAI技術の活用に期待が高まっており、糖尿病のような生活習慣病へのAI技術の活用は、治療の効率化や予防の観点で早期実現が望まれています。糖尿病は、血糖値を継続的に正常範囲にコントロールすることが必要であり、一般的な合併症予防の目標値であるHbA1c値を7.0%未満に維持することが治療目標となります。そのために食事療法や運動療法といった一般療法に加えて、経口血糖降下薬やインスリン製剤などを用いる薬物療法を適切に行うことが重要となります。しかし、長期に渡る治療においては合併症の併発など病態も複雑になり、様々な経口血糖降下薬が複数存在する中、治療薬の選定、組合せ、順序、副作用などを考慮した上での経口血糖降下薬の決定方法についてはいまだ確立していないのが現状となっています。

共同研究開発の概要

札幌医科大学附属病院における臨床医、人工知能エンジニアを中心とした研究グループにおける臨床知見、データセットの成型技術、AI技術をもとに、札幌医科大学附属病院、富士通、富士通北陸システムズの三者において電子カルテシステムや診療DWHなどに蓄積された膨大な臨床情報データから入力用データセットを作成し、OSS(注6)を中心技術としたAIによる学習モデルの構築を行い、その有用性を確認します。

  1. 検証内容

    今回、札幌医科大学附属病院を受診している糖尿病患者約5,000人の診療記録、検査結果、処方情報などが格納された診療DWHやBIツール(注7)から、個人情報を削除した形式で抽出したデータセットを入力情報として機械学習を行い、治療の効果を予測する学習モデルの作成を行います。これら学習モデルの評価項目として、性能を表す曲線下面積(AUC(注8))値、正解率(Accuracy)、再現率などを評価するとともに、経口血糖降下薬の処方の最適化に貢献できることを検証します。

  2. 開発する技術
    1. 高精度なデータセットの成型技術

      対象患者における経口血糖降下薬の処方情報、および検査情報からデータセットを作成します。これらのデータセットの作成においては、対象患者のHbA1c値の血糖値コントロール状況を時間軸を用いて表現し、機械学習を行うためのデータセット成型処理を実施します。

    2. AI技術による学習モデルの作成

      1. により作成されたデータセットを用いて、HbA1c値の変動パターンから得られる治療成否の結果と処方における種別、組合せと検査値などの関係性を機械学習することで、治療の効果を予測する学習モデルを作成します。また、医療情報システムをはじめとした社会の基盤となるコンピュータシステムにおいては、AI技術の推論根拠の理解のしやすさが必要となることから、使用するアルゴリズムの選定を考慮します。

      これにより、処方情報、検査情報に内在している臨床医の知見が顕在化され、患者個人に適した治療薬を選択できることを期待しています。

    図. 取り組みの全体像
    図. 取り組みの全体像
    拡大イメージ

  3. 将来ビジョン

    本共同研究開発で得られる成果として、近い将来、AI技術により患者個人の特性をもとに、どの糖尿病治療薬を選択すると安全かつその後の血糖コントロールが良好になりやすいかの確率などが提示可能となることで、臨床医が患者個人に適した治療薬を選択できることを期待しています。

    さらに、今回の仕組みを富士通の電子カルテシステムと連携させ、臨床医の投薬に関する効率化を実現することで、より良い医療サービスへの貢献を目指します。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 北海道公立大学法人札幌医科大学:
所在地:北海道札幌市、学長:塚本 泰司
注2 富士通株式会社:
本社:東京都港区、代表取締役社長:田中 達也
注3 株式会社富士通北陸システムズ:
本社:石川県金沢市、代表取締役社長、寺田 満明
注4 DWH:
Data WareHouseの略。データ分析のために基幹システムよりデータを収集・蓄積するシステムを指す。
注5 HbA1c値:
ヘモグロビンA1cの略。血液中のヘモグロビンと糖が結合したものの割合を指し、過去1、2か月の血糖値の平均的な値を反映するものとして糖尿病治療における血糖の指標として用いられている。
注6 OSS:
Open Source Softwareの略。ソースコードを使用、修正、拡張、再配布などが可能なソフトウェアの総称。
注7 BI:
Business Intelligenceの略。組織のデータを収集・蓄積・分析・報告し、意思決定に役立てる手法や技術を指す。
注8 AUC:
Area Under the Curveの略。学習モデルの判別の真陽性率と偽陽性率の変化を2次元グラフとして表現した曲線の下の部分の面積を指す。0から1までの値で表現し、値が1に近いほど判別性能が高いことを示す。

本件に関するお問い合わせ

富士通コンタクトライン(総合窓口)
電話 0120-933-200
受付時間: 9時~17時30分(土曜日・日曜日・祝日・富士通指定の休業日を除く)

札幌医科大学附属病院
医療情報部 (大西浩文、射場浩介、千葉弘文、廣田健一)
電話011-611-2111(内線:31030、38520)


プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容、お問い合わせ先などは、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。