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PRESS RELEASE (技術)

2018年10月4日
株式会社富士通研究所

手ぶら決済に最適な非接触の生体認証融合技術を開発

キャッシュレス社会に向け、100万人規模の利用者のIDレス決済に対応

株式会社富士通研究所(注1)(以下、富士通研究所)は、富士通研究開発中心有限公司(注2)と共同で、キャッシュレス社会の実現に向けて、手のひら静脈と顔情報のみで本人を特定し、非接触で認証できる生体認証融合技術を開発しました。

100万人規模での利用が想定される実店舗での決済や、イベント会場の入場における本人確認を生体認証で実現するには、登録された膨大な生体認証データの検索を効率化するために、カードなどのほかの情報を活用して照合対象者を絞り込んでいました。今回、決済端末やその付近に設置したカメラを使い、端末操作中に自然に顔画像を取得し照合対象者を絞り込むため、利用者は手のひらを端末にかざすだけでスムーズな決済が可能な技術を開発しました。

本技術により、IDレスの手ぶらでの決済が可能となり、より利便性の高いキャッシュレス社会を推進していきます。

本技術の詳細は、10月7日(日曜日)からギリシャ・アテネで開催予定の国際会議「ICIP 2018 (International Conference on Image Processing 2018)」にて発表します。また、10月16日(火曜日)から幕張メッセ(千葉県千葉市)で開催される「CEATEC JAPAN 2018」へも出展します。

開発の背景

近年、認証・認可の重要性が増している一方で、増え続けるIDやパスワードの管理の煩雑さを回避するために、生体情報による認証技術が注目されています。さらなる安全性と簡便性を求めて、IDカードの提示やパスワード入力なしに、生体情報のみで本人を特定する手ぶらでの認証技術が期待されています。

図1. 利用者数規模の例と利用シーン
図1. 利用者数規模の例と利用シーン

課題

従来、手のひら静脈認証は、グローバルにおいて銀行ATMや入退室管理、PCなどの個人利用端末へのアクセス管理などで主に活用されています。銀行ATMなど、数万人規模の利用者の手のひら静脈が登録されている場合、比較照合を効率的に行うために、カードなどのほかの情報を入力することでデータの絞り込みを行ってきました。今後、100万人規模の利用が想定される実店舗での決済へと利用範囲を拡大するには、非接触によるクリーンな環境で、かつ利用の負担を感じさせないより簡便な環境での認証が求められます。

開発した技術

今回、一般的なカメラで取得できる顔情報を活用して、利便性の高い手ぶらでの認証を実現しました (図2)。
開発した技術の特長は以下のとおりです。

  1. 高速に演算できる顔特徴抽出技術

    画像から精緻に本人を特定するためには、顔の向きや表情の変化などにも対応する高精度な特徴抽出を実現するための複雑な仕組みを構築する必要がありますが、処理時間が増大するという課題があります。今回、精度を落とさずに複雑な仕組みを簡易的に模擬するアルゴリズムを開発し、処理サイズを約10分の1へ軽量化することに成功しました。これにより、高度な顔認証を瞬時に処理することが可能になります。

  2. 手のひら静脈と顔情報を融合した生体認証融合技術

    決済端末利用中の自然な動作の中でカメラから取得できる顔情報を利用して、登録されている100万人規模のデータベースの中から類似するグループに絞り込みを行います。決済時など実際に認証が必要な時に、利用者が手のひらをかざすことで、絞り込んだグループから1人を迅速に特定します。また、手のひらをかざす操作で静脈のデータが一部取得できなかった場合でも、顔情報で認証に必要な情報が補てんできるため、2つの生体情報を利用することによる認証の安定性を向上できます。さらに、手のひら静脈と顔情報の処理を分離することで認証サーバへの負荷を軽減でき、顔情報の比較演算の高速性と相まって、計算リソースの増大を抑制できます。

図2. 顔情報で照合対象者を選別して手のひら静脈で本人特定する流れ
図2. 顔情報で照合対象者を選別して手のひら静脈で本人特定する流れ

効果

今回開発した技術を用いることで、利用者にカードなどのほかの情報の入力を意識させることなく、かつ、認証サーバの計算リソースの増大を抑制しながら、100万人規模の手ぶらでの認証をリアルタイムに実現します。

今後

富士通研究所では、本技術の2020年度中の実用化を目指します。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 株式会社富士通研究所:
本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 佐々木繁。
注2 富士通研究開発中心有限公司:
本社 中国北京市、董事長 佐々木繁。

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
セキュリティ研究所
電話 044-754-2670(直通)
メール biometric-fusion-2018@ml.labs.fujitsu.com


プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容、お問い合わせ先などは、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。