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PRESS RELEASE (技術)

2018年10月19日
株式会社富士通研究所

データセンターの空調電力を大幅に削減する空調制御技術を開発

内気循環と外気導入の適切な組み合わせ算出などにより、空調設備の消費電力を29%削減

株式会社富士通研究所(注1)(以下、富士通研究所)は、データセンターの空調設備の電力を大幅に削減する空調制御技術を開発しました。

データセンターでは、AIサービスの急速な普及により、高性能かつ高発熱なコンピューティングシステムが設置され、今後ますます消費電力の増加が見込まれます。このため、データセンターでは、全電力量の30%から50%を占める空調設備の省電力化が特に求められています。現在、冷たい外気を取り入れる空調機や、最適な電力最小設定を探索する制御方法など、各データセンターで様々な工夫がされていますが、さらなる電力効率の最大化を進める必要があります。今回、温度と湿度の両方の観点から外気の導入率を判断し、かつ各空調機がエリアごとにおよぼす冷却の影響度を測ることで最適な設定温度を算出する空調制御技術を開発し、空調設備の大幅な省電力化を可能にしました。

これにより、29%の空調電力削減を確認することができ、増大するデータセンターの電力消費量の削減に貢献します。

本技術の詳細は、韓国の平昌で開催中の国際会議「ICCAS2018 (International Conference on Control, Automation and Systems 2018)」にて10月19日(金曜日)に発表します。

開発の背景

AIやIoT市場の急速な拡大に伴い、データセンターに代表される大規模コンピューティングシステムでは、AI処理に特化した高発熱デバイスを搭載することによる高性能化が進んでいます。データセンターが使用している電力量は現在でも世界全体の電力消費量の約2%を占めており、この割合は今後ますます増加していくことから、電力コストだけでなく地球環境への影響も深刻となってきます。この課題に対し、データセンター全体の電力量の約半分を占める空調設備の電力削減に着目し、様々な検討が進められています。

課題

データセンターの空調機の消費電力を削減するために、自然エネルギーである外気を利用する外気導入式空調機が普及しています。外気温度が室内温度より低いときに外気を導入することで、低消費電力での温度管理が可能となりますが、空調機には湿度管理の要件もあり、温度だけでなく湿度も含めた場合に必ずしも最適な制御ができていませんでした。

また、データセンターでは電力消費の異なるお客様の多様なサービスが実行されることになり、各サーバ機器の発熱量が大きく変動しがちです。さらなる電力消費削減を実現するためには、各サーバの温湿度環境を決められた管理条件に保ちつつ、発熱変動が起こったサーバ機器に追従しながら各空調機の設定値を動的に制御していくことがより重要になります。

開発した技術

今回、空調機電力をより最小化する外気導入制御と、発熱エリアを特定し効率よく冷却するアルゴリズムを開発しました。開発したシステムは、富士通研究所でこれまで開発してきた、データセンターにおける温度変化の高精度予測技術と組み合わせることで、たとえば1時間先の状況を予測し、逐次電力が最小となるよう効果的に動作させることが可能です。

  1. 空調機電力効率に基づいた外気導入制御

    室内の空調機近辺や屋外に温湿度を測定するセンサーを設置し、空調機の設定値に対して、内気循環時および外気導入時の冷却・除湿に要する消費電力を計算します。その上で、消費電力が最も小さくなるように、内気循環と外気導入の比率を制御可能な技術を開発しました。これにより、温度および湿度を低消費電力で適切に管理することができます。

    図1 外気導入制御技術
    図1 外気導入制御技術

  2. サーバの発熱変動に追従し、空調機電力を最小化する制御アルゴリズム

    設定温度を変更した際に、過去の室内温度分布の変化を分析し、空調機ごとの各エリアへの影響の大きさを算出します。あるエリアのサーバ温度が上がった時に、サーバが設置されているエリアへの影響が大きい空調機の設定温度を制御することで、最低限の消費電力での温度管理が可能となります。

    図2 吹出冷気制御技術
    図2 吹出冷気制御技術

効果

今回開発した空調制御技術を、300ラック規模の実稼働している社内データセンターにてトライアルを行ったところ、これまでの運用条件と比較して、29%の空調電力削減を実現しました。その結果をもとに年間のサーバ電力量7,000万kWh、空調電力量2,200万kWhとなる 1,000ラック規模のデータセンターの条件で試算すると、年間640万kWhの省電力化が見込まれます。これにより、今後電力使用量の増大が見込まれるデータセンターの省電力化を実現し、地球環境の温暖化防止に貢献できます。

今後

開発した空調制御技術を、富士通株式会社の運営するデータセンターへ2019年度から順次導入していくとともに、本技術を一体として設計された低電力かつ効果的な空調管理が行えるコンピューティングシステムへと展開していく予定です。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 株式会社富士通研究所:
本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 佐々木繁。

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
コンピュータシステム研究所
電話 044-874-0324(直通)
メール acs_system_dc@ml.labs.fujitsu.com


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