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PRESS RELEASE (技術)

2018年9月20日
株式会社富士通研究所

業種業界を超えたデータ流通の信頼性を向上する技術を開発

データの出所や加工履歴、個人データの提供同意状況などを一元管理

株式会社富士通研究所(注1)(以下、富士通研究所)は、様々な企業や個人から入手したデータの出所や加工履歴といったデータの成り立ちを示す来歴情報が確認でき、安心してデータ利活用が可能なブロックチェーン拡張技術「ChainedLineage(チェーンドリネージュ)」を開発しました。

企業間で利活用可能なデータは、いくつものデータから生成されていることが多く、かつ複数の企業によって加工されている場合があります。それらのデータを活用する企業にとって、入手するデータの信頼性確保が重要ですが、現状は一つ一つデータを遡って来歴情報を問い合わせる必要があります。また、個人情報保護法やGDPR(注2)などに準拠したデータ入手も課題となっています。

本技術により、企業などが公開したデータの来歴情報を一元管理できるため、複数の企業を経由したデータ加工の履歴を容易に追跡できるほか、同意済み個人データの効率的な入手も可能になります。富士通研究所は、本技術を様々なデータ活用の分野に適用することで、トラストなデータ社会の実現を目指します。

開発の背景

昨今、企業が管理するIoTや個人が持つスマートフォンなど、デバイスが生み出す膨大なデータを活用して新サービスを創出する機運が高まっています。また、政府においても、政府や自治体、企業、団体などが保有するデータを業界や業種をまたいで積極的に活用することを推進しており、今後ますますデータ利活用の動きが広がると想定されます。

その中で、ビッグデータやAIなど、大量のデータを活用して分析する技術が今後さらに進化するにあたり、低品質なデータを使用してしまうと、サービスの精度が低下するという課題が生じます。また、GDPRをはじめとする個人情報を保護する法律の施行に伴い、個人データを第三者の企業へ提供するためには本人の提供同意確認が必須となっており、透明性を確保しつつ、活発に活用するうえでの工夫も必要になっています。今後、多くの企業や団体が個人情報も含んだデータの生成・加工に関わることで、多様かつ有用なデータが増えていく一方、データに関わる関係者が増えることによる信頼性の低下が懸念されており、データの成り立ちを把握するニーズが高まっています。

課題

企業間で利活用可能なデータの大半は加工や他のデータとの合成などが加わっているため、データの信頼性を向上するために、どのようなデータを使ってどのように加工・分析したかという来歴情報の管理が重要となります。従来、データの加工・分析に関わる履歴管理は、各企業に閉じて行われており、各社に分散して存在する履歴情報を統合し管理する手段がありませんでした。また、各社が保有する個人データの利用目的、提供データ、提供先などに変更が生じる場合、データ提供者は本人同意の取り直しが必要です。さらに、データ利用者は同意の結果に基づいて個別に個人データを取得するための工数がかかっていました。

開発した技術

今回、データを活用したい企業のために、そのデータの生成・加工履歴および個人データに対する本人提供同意状況といった来歴情報を、データ提供の大元から現在のデータにいたるまで、安全に管理し、関係者で共有する技術を開発しました。開発した技術の特長は以下のとおりです。

図1 「ChainedLineage」全体図
図1 「ChainedLineage」全体図
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  1. 複数の企業を経由して生成・加工されたデータ履歴の情報を統合する技術を開発

    従来、企業ごとに保有していたデータ加工履歴情報と、ブロックチェーン上で共有されている企業間データ取引履歴情報を、他の企業からも確認できるように、加工履歴情報およびデータ取引履歴情報のハッシュ値(注3)を介して統合する技術を開発しました。ある企業が生成・加工したデータがさらに別の企業に活用されていくデータ活用環境で、加工履歴情報は企業をまたがってチェーン状に統合されていきます。このデータ構造は、データ提供元企業の加工履歴情報のハッシュ値がデータ提供先企業への取引履歴情報の中に含まれ、データ取引履歴情報のハッシュ値がデータ提供先企業の加工履歴情報の中に含まれるように構成されるため、企業をまたがった追跡や改ざんの検出を可能とします。

    図2 データ履歴情報を企業間で統合する技術
    図2 データ履歴情報を企業間で統合する技術
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  2. 複数の個人データを条件指定によるリクエストで一括取得する技術

    データ流通基盤である「富士通VPXテクノロジー」(注4)上に、個人データ利用許可の同意ポータルを配置し、アクセス管理プロトコル標準であるUMA2.0(注5)を用いて、データ要求元に対する本人の提供同意が済か否かを確認し、データへのアクセス権を与えます。また、このアクセス権をデータ取得リクエスト時に指定する条件(性別、年齢層など)と関連付けることにより、複数人の利用許可済個人データの一括取得を可能にします。

    図3 同意ポータルによる個人データの一括取得技術
    図3 同意ポータルによる個人データの一括取得技術

効果

今回開発した技術を用いることで、これまで実質的にできなかった企業をまたいだ来歴情報確認を簡単かつ安全に実施することができ、高信頼のデータ利活用が可能になります。また、GDPRの要件として求められる本人同意済みの個人データも入手することができます。

今後

GDPRの要件に対応する本人同意の制御技術は、ブロックチェーン技術を活用したデータ活用のためのクラウドサービス「FUJITSU Intelligent Data Service Virtuora DX データ流通・利活用サービス」の拡張機能として2018年度中の実装を目指します。企業をまたぐ来歴管理技術を含めた「ChainedLineage」の全体システムとしては、2019年度の実用化を目指し、今後データ利活用シーンにおけるフィールド実証実験を進めていく予定です。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 株式会社富士通研究所:
本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 佐々木 繁。
注2 GDPR:
一般データ保護規則。2018年5月25日に欧州で施行された個人情報保護に関する法律。
注3 ハッシュ値:
データから計算して得られる固有情報。データが改変されるとハッシュ値も異なる。
注4 「富士通VPXテクノロジー」:
富士通研究所が開発した、ブロックチェーンの応用によるデータ流通ネットワーク技術。
注5 UMA2.0:
User-Managed Access 2.0の略。アクセス管理プロトコルの標準の一つ。

関連リンク

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
ソフトウェア研究所
電話 044-754-2575(直通)
メール cl-press2018@ml.labs.fujitsu.com


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