PRESS RELEASE
2018年9月13日
富士通株式会社
シンガポール科学技術研究庁
Singapore Management University
UrbanFox Pte. Ltd.
富士通、SMU、A*STAR、UrbanFox
シンガポールにおいてクラウドソース配送の実証実験を開始
富士通株式会社(注1、以下 富士通)、シンガポール科学技術研究庁(注2、以下 A*STAR)の組織Institute for Infocomm Research(I2R)、Singapore Management University(注3、以下 SMU)、そしてKeppel Logistics Pte. Ltd.(注4、以下 Keppel Logistics)の子会社UrbanFox Pte. Ltd.(以下 UrbanFox)は、物流業界の人手不足の解消に向けて、シンガポールにおいて、UrbanFoxに配達員として登録した一般市民が専用のスマホアプリを介して、AIによりレコメンドされた最適な宅配を行うクラウドソース配送(注5)の実証実験を開始しました。
シンガポールは、東南アジアの主要経済国の中でも、小売業の売上に占めるECサイトなどのオンライン取引の割合が5.4%と最も高く、宅配需要の急増に伴う人手不足が課題となっています。
UrbanFoxは、一日平均で5,000件以上、繁忙期には通常の2倍以上の配送を請け負っており、配送環境の急速な変化に対応するため、宅配を一般市民が代行する革新的な取り組みを始めています。そのような中、同社に登録済みの一般市民(以下 デリバリー・パートナー)が、大量の配送オーダーの中から、宅配を選択することが難しくなっており、効率的な配送ルートを考慮した最適な宅配を選ぶためのより高度なソリューションが必要となっています。
今回、富士通、A*STARのI2R、SMUは、UrbanFoxが管理する配送オーダーとデリバリー・パートナーの居住エリアや過去の配送実績などの情報をもとに、最適な宅配をAIがレコメンドする技術の有効性を検証します。
共同実証の概要
本実証において、富士通、A*STARのI2R、SMUは、AI技術を用いて、デリバリー・パートナーに対して、最適な宅配や配送ルートをレコメンドするシステムを構築し、宅配の人手不足の解消を、また、UrbanFoxはさらなる生産性向上を目指します。
2018年9月から開始する実証実験では、過去の配送オーダーやデリバリー・パートナーの行動特性と配送実績の相関関係などを分析し、それらのパターンをAIが学習することで、宅配のレコメンド精度を向上させていきます。
あわせて、デリバリー・パートナーがレコメンドされた宅配に対する選択結果も学習させ、継続的にレコメンドの有効性を検証していきます。
- 実証期間:2018年9月~2019年7月
- デリバリー・パートナーの参加人数:約30人
図.AIにより最適化されたクラウドソース配送のイメージ
拡大イメージ
共同実証における活用技術
A*STARの組織である I2Rは、配送プロセスの最適化に向けて、独自のAIによる傾向分析や予測解析のアルゴリズムをシステムに組み込みます。これにより、地域ごとの配送傾向を把握でき、過去の配送実績やセールなどのイベント情報に紐づけて、高精度な配送の需要予測を可能とします。
本アルゴリズムは、配送オーダーを受けると、荷物の大きさや配送ルートといった配送条件を考慮し、デリバリー・パートナーとUrbanFoxの配送トラックのどちらを利用するとより効率良く配送できるかを分析することで、配送プロセスの最適化を実現します。
SMUは、デリバリー・パートナー一人ひとりに最適な宅配を組み合わせ、まとめてレコメンドするAI技術の研究を行います。こうしたレコメンドは、デリバリー・パートナーの業務スケジュールと宅配需要をリアルタイムに反映し、最適な宅配を導き出します。さらに、富士通は、長年培った配車計画技術をもとにデリバリー・パートナーによる宅配物の配送計画や効率的な配送ルートの算出を行い、アプリで通知します。
今後は、共同実証で得られた知見やノウハウを融合し、富士通は、物流事業者向けに、一般配達員への業務と配送ルートのレコメンド機能をサービスとして提供することを検討していきます。
今後の展望
4社は今回の共同実証をモデルケースに、今後、シンガポール内でのさらなる展開およびアジア諸国への展開を進めていきます。
UrbanFoxは、実証結果を踏まえ、本システムの本格導入を検討していきます。
富士通は、実証で得られた知見やノウハウをもとに、日本をはじめグローバルな宅配事業者への適用に向けてソリューション開発を行い、提案活動を推進していきます。
UrbanFox Pte. Ltd. マネージング・ディレクター Joe Choa氏のコメント
UrbanFoxは、様々な企業のオムニチャネルを活用した物流の強化を目指しています。オフラインとオンラインのチャネルを統合し、サプライチェーンの最適化や従来のB2Bビジネスを行っていた企業がECサイトを通じた消費者への直接販売や配送を可能とするワンストップ・ソリューションを提供していきます。このソリューションの実現に向けて、富士通、A*STAR、SMUと協業し、シンガポールにおける物流向けクラウドソーシング技術のパイオニアの1社として、企業や消費者、そしてデリバリー・パートナーのために、配送効率性を向上に努めていきます。
A*STARのInstitute for Infocomm Research エグゼクティブ・ディレクター Dim-Lee Kwong氏のコメント
A*STARの I2Rは、AIが物流の生産性を高める重要な技術だと確信しています。AIをクラウドソーシングなどの新たなソリューションに適用することで、シンガポールが抱える物流の課題に対する革新的な解決策が生まれることを目指しています。 I2RのAIアルゴリズムは、シンガポールの経済をより活性化させるために、あらゆる業界での活用が期待されています。今回の共同実証を通して、UrbanFoxや富士通、SMUとともに、実社会の課題解決に向けて、AIをどのように活用できるかを検証していきます。
Fujitsu-SMU Urban Computing & Engineering Corporate Lab ディレクター Lau Hoong Chuin氏のコメント
ラストワンマイルの物流は、サプライチェーンにおいて最も複雑でコストを要します。クラウドソーシングによるラストワンマイルの配送は、シェアリングエコノミーとモバイル・アプリによって強化され、可能性を秘めたモデルとなっています。SMUでは、クラウドソーシングとラストワンマイルの物流に関する研究において、配送計画やクラウドソーシングのスケジュール調整にAIを活用し、富士通やA*STARとともに、UrbanFoxのような物流業者がサービスの効率性を向上させる統合プラットフォームの開発を目指しています。
富士通株式会社 共創ビジネスグループ VP 佐藤俊也のコメント
シェアリングエコノミーの普及やEコマースの拡大を踏まえ、クラウドソース配送は世界に広がる画期的なビジネスだと確信しています。
今回の実証では、クラウドソース配送のパイオニアの1社であるUrbanFox社や、先進的な研究開発機関であるA*STARやSMUと協業することで、クラウドソース配達員の生産性を向上させることで、富士通が物流業界に貢献できることを期待しています。
以上
注釈
- 注1 富士通株式会社:
- 本社 東京都港区、代表取締役社長 田中 達也。
- 注2 シンガポール科学技術研究庁(Agency for Science, Technology and Research):
- 所在地 シンガポール、長官 リム・チャン・ポウ。
- 注3 Singapore Management University:
- 所在地 シンガポール、学長 Arnoud De Meyer。
- 注4 Keppel Logistics Pte. Ltd.:
- 所在地 シンガポール、CEO Desmond Gay。
- 注5 クラウドソース配送:
- 配送のクラウドソーシング。クラウドソーシングとは、群衆(crowd)と業務委託(sourcing)を組み合わせた造語で、今回は一般市民による配送を指す。
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