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PRESS RELEASE (技術)

2017年5月23日
株式会社富士通研究所

仮想デスクトップシステムの性能劣化要因を特定する自動分析技術を開発

株式会社富士通研究所(注1)(以下、富士通研究所)は、仮想デスクトップシステムにおける、レスポンス低下などの性能劣化要因を特定する自動分析技術を開発しました。

今回、ネットワーク上のパケットを監視することで、システムの動作に影響を与えずに、ストレージが原因となるボトルネックを分析できる業界初の技術を開発しました。また、本技術と開発済みの仮想ネットワーク分析技術(注2)を組み合わせることにより、仮想デスクトップシステムにおける性能劣化時のボトルネック箇所を自動的に特定する分析技術を開発しました。

本技術による試作システムを、仮想マシン(VM : Virtual Machine)が300台規模で稼働する環境で実証したところ、性能が劣化する原因の推定・影響調査・再現・分析といった運用管理者による一連の原因特定作業を約10分の1に削減できました。従来は1回の分析サイクルで特定に至らないケースも多く、2、3回程度の繰り返し作業が必要でしたが、本技術では数週間規模のデータから、性能分析に必要となる情報だけを蓄積して網羅的に分析できることから、1回での原因特定を実現します。

本技術により、仮想デスクトップシステム運用管理者の業務負荷を大きく削減するとともに、従来以上に安定したシステム稼働を実現し、仮想デスクトップシステム導入を検討しているお客様の不安解消につながることが期待できます。

今後、仮想マシンが数千台規模で稼働する、より大規模な仮想デスクトップシステムでの検証を行い、2018年度中に富士通株式会社のサービスとして提供を予定しています。

本技術による実証の結果については、2017年5月22日(月曜日)から24日(水曜日)までイスラエルで開催されるストレージに関する国際会議「The 10th ACM International Systems and Storage Conference(SYSTOR 2017)」にて発表します。

開発の背景

高いセキュリティを保持しながら、場所にとらわれない働き方を実現する仮想デスクトップシステムは、多様な人材の活躍を支援するための重要なICTインフラとして普及が進んでおり、仮想デスクトップシステムの安定的な運用は生産性維持の観点から重要となっています。一方で、OSや業務アプリケーションのアップデートなど一時的なアクセス集中や、ユーザーの増加、ストレージシステムの構成変更など様々な要因によってレスポンスの劣化やセッションの切断などが発生しており、この原因を特定して解消するシステムの運用管理者に大きな負担が生じています。

課題

仮想デスクトップシステムの性能劣化要因を特定するためには、サーバやストレージ、ネットワークおよびそれらを仮想化したシステムの状態を総合的に判断して、ボトルネックになっている箇所や原因を特定する必要があります。このため、運用管理者は疑いのある箇所を見つけ、詳細な統計情報やログ情報の取得を有効化して分析することを繰り返して原因を特定していきますが、この分析により機器の処理負荷が上昇すると新たなレスポンスの劣化を引き起こすことがあるため、システムへの影響を最小限に抑えながら、時間と工数をかけて繰り返し分析することが必要でした。特にストレージは始業時やアプリのアップデートなどアクセス集中による輻輳が多く発生し、ボトルネックの大きな要因の一つとなっていましたが、短いデータ単位で読み書きされるためアクセス頻度が高く、これまでログを記録して分析することは困難でした。

開発した技術

今回、仮想デスクトップシステムのネットワーク上のパケットを観測することにより、ストレージが原因となるボトルネックを分析する技術を業界で初めて開発し、開発済みのサーバ間の仮想ネットワーク分析技術と組み合わせることで、仮想デスクトップシステムのボトルネック箇所を自動的に特定する技術を開発しました(図1)。本技術により運用管理者は、性能劣化の原因特定のための切り分け作業に時間をかけることなく、さらに稼働中のシステムへ負荷をかけずに網羅的に原因を調査し、対策することができます。開発した技術の特長は以下の通りです。

図1 開発した技術の概要
図1 開発した技術の概要
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  1. ストレージ性能分析技術

    ストレージネットワークは、サーバ・仮想マシン間ネットワークとは異なり短いデータでの通信が多く、すべてのパケットを観測した場合には、データ量が膨大となります。今回、ストレージ機器の入出力パケットの情報(Read・Writeの種別、データ長、IDなど)についてパケットヘッダーを分析し、不要なデータ部分を削除するだけではなく、分析に必要となる一連の動作の特徴のみを抽出することにより、蓄積データを削減する性能劣化の分析技術(図2)を業界で初めて開発しました。本技術により仮想デスクトップシステムの性能を損なうことなく、ストレージの性能分析に必要な蓄積データの削減が可能となります。本技術は開発済みのサーバ間の仮想ネットワーク分析技術を応用して開発したものです。

    例えば、仮想マシンが300台規模で稼働するシステムにおいて、本技術によりストレージの性能分析に必要な数週間規模の蓄積データを約5分の1に削減できることを確認しました。

    図2 ストレージの性能劣化を分析する技術
    図2 ストレージの性能劣化を分析する技術
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  2. 性能劣化分析技術

    今回、サーバ・仮想マシン間ネットワークとストレージネットワークの2つのネットワークのパケットを取得して分析する技術により、数週間規模のデータを蓄積し、網羅的に相関分析することによりシステム全体からボトルネックとなっている箇所を自動的に分析する技術を開発しました。時系列で記録したストレージ性能とサーバ・仮想マシン間ネットワークそれぞれの分析結果を基に、ストレージの状態と動作していたアプリケーション種別を関連付けて解析することにより、システムに負荷を掛けることなく網羅的にシステムの性能劣化原因を分析できます。

効果

本技術による試作システムを仮想マシンが300台規模で稼働する環境で実証したところ、これまでサーバ・ネットワーク・ストレージの専門家が、性能ボトルネック原因の推定・影響調査・再現・分析といった一連の原因特定作業に2日程度かけて行っていたのに対し、2時間程度と約10分の1の時間で分析が完了しました。従来は1回の分析サイクルで特定に至らないケースも多く、2、3回程度の繰り返し作業が必要となりますが、本技術では網羅的に分析できることから、1回で原因を特定することが可能です。

本技術により、仮想デスクトップシステム運用管理者の業務負荷を大きく削減するとともに、従来以上に安定したシステム稼働を実現するとともに、仮想デスクトップシステム導入を検討しているお客様の不安解消につながることが期待できます。

今後

富士通研究所では、今後実用化に向けて仮想マシンが数千台規模で稼働する大規模な仮想デスクトップシステムでの検証を行い、2018年度中に富士通株式会社のサービスとして提供を予定しています。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 株式会社富士通研究所:
本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 佐々木繁。
注2 仮想ネットワーク分析技術:
2014年4月14日プレスリリース 「40Gbpsの通信データを蓄積しながら高速検索する技術を開発」、2015年4月2日プレスリリース「世界最高速の200Gbpsで通信をモニタしながら品質解析するソフトウェアを開発」など、ソフトウェアにより高速に検索しながら蓄積する技術。

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
コンピュータシステム研究所
電話 044-754-2177(直通)
メール vdianalyze-press2017@ml.labs.fujitsu.com


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