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PRESS RELEASE

2016年11月10日
富士通株式会社

(本資料は、Fujitsu Laboratories of Europe、Fujitsu Spainが発行したプレスリリースの抄訳です。)

富士通の人工知能技術により、医師の迅速な意思決定を支援

[ロンドン, マドリッド, 2016年11月10日]Fujitsu Laboratories of Europe(以下、FLE)とFujitsu Spain(以下、富士通スペイン)は、医師による迅速な意思決定プロセスを支援する新しいヘルスケアシステムAdvanced Clinical Research Information Systemを試作しマドリッドのサン・カルロス医療病院で実証を行いました。

本システムはサン・カルロス医療病院の精神病の分野における専門医とFLE、富士通スペインが連携し、スペインの医療現場で求められる要件を満たすために、FLEの先端的データ解析技術と株式会社富士通研究所の匿名化技術を組み合わせ、ヘルスケア分野に応用して開発したものです。本システムの実証を行った結果、患者の記録を基にした診断にかかる時間を半減できました。これにより、医師は患者の問診により多くの時間をかけることが可能となります。さらに、従来よりも高精度に患者の潜在的なリスクを発見することが可能となります。

今回開発した技術は、富士通スペインのクラウドサービスまたはプライベートクラウドサービスにおいて、将来の新しい医療API(Application Programming Interface)の基盤としていく予定です。

富士通スペインのイノベーション・ディレクターである鈴木國男は、以下のように述べています。

「サン・カルロス医療病院の医師の協力を得て、今回のような方法で医療における意思決定プロセスをサポートすることは意義が大きいことが明らかとなりました。将来は、われわれの医療APIの基盤を通じて、診療に関するデータや医療関連の論文などのデータを集約・統合したデータベースに医師が迅速にアクセスすることが可能となります。このようなデータは、従来は紙でしか利用することができず、異なるフォーマットで記載された様々な資料を調べる必要がありましたが、実証の結果、医師が患者の記録を選別する時間を半分以下に短縮し、患者の問診時間を増やすことができることを実証しました。若い医師の研修などほかの分野にも利用可能であり、本成果の意義は大きいと考えています。」

実証は6か月以上にわたり、サン・カルロス医療病院の精神病の専門医が参加して、匿名化された3万6,000名以上の患者の情報を使用しました。Advanced Clinical Research Information Systemは、この患者の情報や医療関連の論文情報などの関係性をグラフ構造で表現したデータを入力情報として、グラフデータ解析技術(注1)、セマンティックモデル化技術(注2)などの人工知能技術を実装して開発されました。本実証において各医師が、患者のこれまでの診断結果や合併症、自殺の潜在的リスク、薬物依存、アルコール依存などの未解決問題の関連性について本システムを利用して調査したところ、迅速に鍵となる臨床データを系統立てて検証でき、臨床における既存の問題点を特定できるなど、非常に高い精度のリスクアセスメントが実現できました。その結果、自殺・アルコール依存・薬物依存のリスクを85%以上の精度で算出できました。

サン・カルロス医療病院のChief Medical & Innovation OfficerであるJulio Mayol 博士は以下のように述べています。

「われわれは富士通スペインとの共同プロジェクトによって本当に価値ある結果を得られたため、より多くの医師がアクセスできるようなシステムを構築しています。患者の潜在的なリスクを正しく評価することは医師にとって重要で、これにより適切な処置をすることが可能となります。そのためには患者の診察履歴だけでなく現状を考慮し、総合的なリスクや診断アセスメントが必要となります。このような診療行為はスペインにおいて25万人以上の医師が毎日行っています。緊急診療部・入院サービス・精神病外来といった様々な医局からの情報を統合することにより、即時に大局的な診断が可能となります。従来は何時間もかかっていたのに対し、本システムは数秒で結果にアクセスできるため、医師はこれまで以上の時間を患者のために費やすことができます。」

FLEのCEOの博士である中田恒夫は以下のように述べています。

「サン・カルロス医療病院との協力により、イノベーションを加速し、実社会の問題を迅速かつ効果的に解決することができました。この実証の成功により新しい医療APIの開発につながると考えており、研究開発やイノベーションをどのようにしてビジネスソリューションに結び付けるべきかを示しています。われわれは医療APIを実現するためのさらなる技術の開発を続け、先進的な人工知能技術を最新のソリューションに適用し、富士通スペインのビジネスだけでなく社会にも貢献していきます。」

図: 意思決定を支援するシステム:サン・カルロス医療病院における典型的なワークフロー
図: 意思決定を支援するシステム:サン・カルロス医療病院における典型的なワークフロー

以上

注釈

注1 グラフデータ解析技術:
グラフ構造によって表現されたデータを解析する技術(ここではグラフ構造で表現された患者データを解析する技術)。
注2 セマンティックモデル化技術:
情報を意味構造を持つデータモデルに変換する技術(ここでは患者情報をグラフ構造化する技術)。

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本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
知識情報処理研究所
人工知能研究センター ナレッジシステムプロジェクト
電話 044-754-2652(直通)
メール acris@ml.labs.fujitsu.com


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