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PRESS RELEASE (技術)

2016年6月29日
株式会社富士通研究所

データセンターの空調の省エネを実現する技術を開発

高精度な予測技術により空調電力を20%削減

株式会社富士通研究所(注1)(以下、富士通研究所)は、データセンターの空調設備の省エネ運用を可能にする、温度や湿度などの高精度な予測技術を開発しました。

地球温暖化防止に向け、データセンターにおいても、特に全電力量の30%から50%を占める空調設備の省電力化が求められています。今回、データセンター特有の課題であった情報機器の出し入れやラック配置の変更など動的な状態変化に柔軟に対応するため、得られたデータから空調の効果を予測するモデルを逐次構築する、高精度な予測技術を開発し、空調の省電力化を可能にしました。

これにより、データセンターの電力消費量を削減でき、地球温暖化防止に貢献します。

本技術の詳細は、6月29日(水曜日)からデンマークのオールボーで開催予定の国際会議「ECC 2016 (European Control Conference 2016)」にて発表します。

開発の背景

現在、データセンター市場が成長するとともに消費電力量も増加し、データセンターの電力消費量が、全電力量の1%から2%程度を占めるとも言われています。さらに今後もIoTシステムの伸長とともにデータセンターの電力量増加が見込まれます。地球温暖化防止のためには、データセンターの電力量の削減も重要な要素の一つと言えます。

課題

データセンターの省電力化のためには、全電力量の30%から50%を占める空調設備の電力削減が効果的であり重要です。従来のデータセンターの空調設備は、設置されているサーバなどICT機器の稼働率が増加しても管理温度や湿度が維持されるよう、データセンター内に設置された各種センサー情報に基づいて運用されており、一定の設定値を超えると安全のため急速に冷却をするなど過剰な空調運用が行われていました。これに対し、溶鉱炉や自動車、ロボットなどで活用されている、将来の値を予測するモデルベース制御と(図1)いう手法を用いる事により、過剰運用低減による空調電力削減が期待できますが、データセンターにおいては内部の情報機器、レイアウト、空調設備など設置機器が頻繁に変更されるため(図2)、構築したモデルが実際と乖離していくことから、予測精度が低下しデータセンターに適用することが困難でした。

図1 モデルベース空調制御システム
図1 モデルベース空調制御システム

図2 データセンター内の動的な状態変化
図2 データセンター内の動的な状態変化

開発した技術

データセンターにモデルベース制御を適用するため、状態に応じてモデルを構築できるJIT(Just In Time)モデリング(図3)を適用しました。従来のJITモデリングでは、温度や湿度などの測定データから数学的な処理で有用な情報を選択し、予測モデルを作成して予測値を算出しますが、これらの測定データからだけでは、データセンターの動的な状態変化に即座に反映するための有用な情報が十分に選択されず、高精度な予測が困難でした。今回、新たに、機械の稼働率や風量など空調機設備の状態を新たに組み込んだデータベースを作成し、予測対象に対し有用な情報を計測データからだけでなく、空調機設備状態からも最低1つ以上自動で選択するという条件を設定しました。選択した変数を使って予測精度の高い予測モデルを作成する(図4)ことにより、予測精度の向上に成功しました。これにより、データセンターの頻繁な状態変化に対応可能な、逐次モデルを構築する高精度な先読み予測技術が実現しました。

図3 適用したJITモデリングの概要
図3 適用したJITモデリングの概要

図4 開発技術の概要
図4 開発技術の概要
拡大イメージ

効果

今回開発した技術について100ラック規模の実データを利用したシミュレーションを行い、頻繁な状態変化においてもサーバ給気の予測温度を最大±2.1℃、平均±0.17℃の高い精度で予測できることを確認しました。その結果をもとに年間のサーバ電力量7,000万kWh、空調電力量2,200万kWhである 1,000ラック規模のデータセンターの条件で試算すると、約20%にあたる450万kWhの省電力化が見込まれます。これにより、今後電力使用量の増大が見込まれるデータセンターの省電力化を実現し、地球環境の温暖化防止に貢献できます。

今後

富士通研究所では、本技術を富士通株式会社(以下、富士通)の運営するデータセンターで2016年度中にトライアル後、2017年度に実稼働と、富士通の運用管理向けインフラストラクチャーソフトウェア「FUJITSU Software ServerView Infrastructure Manager」への実装を予定しています。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 株式会社富士通研究所:
本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 佐々木繁。

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
コンピュータシステム研究所
電話 044-754-2931(直通)
メール ngcs_dc@ml.labs.fujitsu.com


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