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PRESS RELEASE (導入事例)

2016年5月26日
東京大学 大学発教育支援コンソーシアム推進機構
埼玉県教育委員会
学校法人河合塾
富士通株式会社

対話型授業中の学習者の発話とメモを即時にデジタル化し、授業改善に役立てる実証研究を開始

深い学び、対話的な学び、主体的な学びの実現に向けて

東京大学 大学発教育支援コンソーシアム推進機構(以下、CoREF、注1)、埼玉県教育委員会(注2)、学校法人河合塾(以下、河合塾、注3)、富士通株式会社(以下、富士通、注4)は、埼玉県内の公立高校と河合塾において、対話型の授業における学習者の発話と手書きメモをデータ化して蓄積し、生徒ごとの発話の量と内容を授業改善に役立てる実証研究を2016年6月から2017年3月まで実施します。

本研究では、富士通が提供するアプリケーションを利用し、対話型授業におけるグループ学習などの各学習者の発話や手書きメモの内容をリアルタイムでテキストデータ化して蓄積します。発話内容テキストは、学習者ごとの発言量の推移をグラフ化した発話量グラフとともに教員のタブレットに表示され、手書きメモのテキストデータは、メモした学習者本人と教員が閲覧できるため、教員は、発言が少ない生徒でも、どのようなメモを取ったか確認できます。

CoREF、埼玉県教育委員会、河合塾、富士通は、公立高校、および河合塾の様々な科目において、本実証研究を行い、対話型授業での発話・メモデータを蓄積して分析することが、授業改善に有効かどうかを評価します。

背景

システムのイメージ
システムのイメージ

現在、文部科学省が検討を進めている次期学習指導要領の議論においては、“どのように学ぶか”が重要な論点の一つとなっています。

文部科学省“教育課程企画特別部会における論点整理について(報告)”(注5)では、習得・活用・探究という学習プロセスの中で、問題発見・解決を念頭に置いた深い学びの過程が実現できているか、他者との協働や外界との相互作用を通じて、自らの考えを広げ深める、対話的な学びの過程が実現できているか、子供たちが見通しを持って粘り強く取り組み、自らの学習活動を振り返って次につなげる、主体的な学びの過程が実現できているか、というアクティブ・ラーニングの3つの視点からの不断の授業改善の重要性が謳われています。

この不断の授業改善を実現するために、学習者が実際に学んでいるプロセスに関するデータの収集や記録・分析が極めて重要になります。

研究概要

CoREF、埼玉県教育委員会、河合塾、富士通は、埼玉県の公立高校と河合塾をフィールドに協調学習が起きやすい環境を教室に創り出す手法の一つである知識構成型ジグソー法(注6)を用い、富士通が提供するアプリケーションを利用した実証研究を行います。

  1. 研究期間: 2016年6月~2017年3月
  2. 実施校: 埼玉県内公立高校、河合塾(今後、実施校を決定。)
  3. 役割分担:

    CoREF、埼玉県教育委員会、河合塾は、システムによって可視化された生徒一人ひとりのグループ学習での発話量や内容、メモの内容などのデータを分析し、授業のデザインや指導の改善、多面的な評価に活用可能かどうかを評価します。また、どのようなデータを取得してどのように活用すべきか、学習者にとって使いやすいシステムはどうあるべきか、などを富士通へフィードバックします。

    富士通は、その分析・評価に資するデータを取得するため、本実証研究で利用する教室の通信ネットワーク環境を整備して生徒用と教員用のタブレットを貸与し、グループ学習での発話やメモ記入状況をデジタル化し、学びの過程を可視化するためのアプリケーションを提供します。

  4. 研究内容

    (1) グループ学習中の発話内容の可視化・分析
    「FUJITSU Software LiveTalk(フジツウ ソフトウェア ライブトーク)」(注7)を活用し、グループの発言をリアルタイムにテキスト化した後、富士通が新たに開発した発話表示アプリケーションにより、グループ学習における学習者の発話をリアルタイムにテキストデータに発話量グラフを添えて表示し、蓄積します。教員は、全員の発話内容と学習者ごとの発話量の推移を、自分のタブレットで確認できます。

    (2) グループ学習中のメモ内容の可視化・分析
    学習者は、富士通が開発したワークシート・アプリケーションに、グループ学習中のメモを手書き入力します。手書き入力された内容はテキストデータ化され、蓄積されます。教員は学習者全員のメモデータを確認できます。

    (3) 授業改善への適用と評価
    教員などの授業者がグループ学習で収集した発話データやメモデータを分析し、授業のデザインや指導の改善をはかります。CoREFは、認知科学、学習科学の知見に基づき、授業改善や学びの過程の状況を分析・評価します。

    システムの位置づけと授業改善のイメージ
    システムの位置づけと授業改善のイメージ

  5. 参加団体、企業について
    • CoREF:

      CoREFは、“人はいかにして学ぶものか”について、認知科学、学習科学の研究成果に基づき、教室で行われている授業の質を上げ、学習者が自分たちで考え、理解し、次に学びたいことを見つけ出していける新しい学びのゴールを追求しています。学習者が自ら考え、そして仲間と議論し、理解を深め、答えを作り上げていく協調学習を引き起こす授業づくりのため、実践的な研究・活動を推進しています。

    • 埼玉県教育委員会:

      埼玉県教育委員会は、2010年度から、CoREFとの研究連携事業“未来を拓く「学び」プロジェクト”(注8)などを通して、高等学校を中心とした研究開発校において協調学習の手法を取り入れた授業づくりと実践・検証に取り組んでいます。生徒のコミュニケーション能力、問題解決能力、情報活用能力など、これからの時代を主体的に生きるために必要な資質・能力の育成を目指しています。

    • 河合塾:

      河合塾は、教科学力に加え、社会に出てから必要とされる力を身につけるための学びの研究開発を行うとともに、新しい学びの評価方法とその指標の提案に取り組んでいます。

    • 富士通:

      富士通は、2010年からの総務省様の「フューチャースクール推進事業」と、2011年からの文部科学省様の「学びのイノベーション事業」にソリューションベンダーとして参加するほか、2014年には明日の学びプロジェクト(注9)を自ら立ち上げ、教育現場に学びを支援するICT環境とアプリケーションを提供し、学びの可能性を広げる取り組みを積極的に行っています。

今後について

CoREF、埼玉県教育委員会、河合塾、富士通は、学習プロセスに関するデータの収集や記録・分析により、アクティブ・ラーニングの視点に基づく授業改善が促進され、学びが改善されることによって、学習者が学ぶ内容の理解を対話型授業の参加者同士で深めつつ、育成すべき資質・能力を発揮し、かつ高めていくことが可能な教育の実現を目指します。

また、富士通は、本実証研究で利用するアプリケーションを今後、製品化する予定です。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 東京大学 大学発教育支援コンソーシアム推進機構:
所在地 東京都文京区、機構長 白水 始。
注2 埼玉県教育委員会:
所在地 埼玉県さいたま市、教育長 関根 郁夫。
注3 学校法人河合塾:
所在地 愛知県名古屋市、理事長 河合 弘登。
注4 富士通株式会社:
本社 東京都港区、代表取締役社長 田中 達也。
注5 “教育課程企画特別部会における論点整理について(報告)”:
2015年8月に文部科学省 中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会 教育課程企画特別部会において、2030年の社会と、そして、さらにその先の豊かな未来を築くために、教育課程を通じて初等中等教育が果たすべき役割を示すことを意図し、まとめられた資料。詳細はこちら
PDF http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2015/12/11/1361110.pdf (478KB)
注6 知識構成型ジグソー法:
Aronson(1978)のジグソー法をもとにCoREFが開発した協調学習を引き起こす授業づくりのための学習法。詳細はこちら http://coref.u-tokyo.ac.jp/archives/5515
注7 「FUJITSU Software LiveTalk」:
株式会社富士通ソーシャルサイエンスラボラトリ(本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 林 恒雄)が開発・製品化を行った、聴覚障がい者参加型コミュニケーションツール。会議や打ち合わせなど複数人が情報を共有する場において、発話者の発言を音声認識し、即時テキストに自動変換して複数のパソコン画面に表示することで、参加者全員がリアルタイムに情報を共有できる。
注8 “未来を拓く「学び」プロジェクト”:
生徒のコミュニケーション能力、問題解決能力、情報活用能力など、これからの時代を主体的に生きるために必要な資質・能力の育成を目指し、知識構成型ジグソー法による協調学習の授業づくりを中心とするアクティブ・ラーニングに関する研究に取り組むプロジェクト。詳細はこちら http://coref.u-tokyo.ac.jp/archives/6114
注9 明日の学びプロジェクト:
21世紀にふさわしい学校教育の実現を目指した普通教室でのICT活用に関する実証プロジェクト。詳細はこちら http://pr.fujitsu.com/jp/news/2014/10/16.html

関連リンク

本件に関するお問い合わせ

東京大学
大学発教育支援コンソーシアム推進機構
電話 03-5841-3682(直通)

埼玉県 教育局
県立学校部 高校教育指導課 学びの改革担当
電話 048-830-6625(直通)

学校法人河合塾
グループ経営戦略本部 経営戦略担当
電話 03-6811-5508(直通)

富士通株式会社
行政・文教システム事業本部
第六ソリューション統括部ソリューション部
電話 03-6424-6192(直通)


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