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PRESS RELEASE (技術)

2016年3月22日
株式会社富士通研究所
富士通研究開発中心有限公司

次世代の毎秒400ギガビット光送受信方式を開発

100キロメートル圏内のデータセンター間大容量通信の低コスト化を実現

株式会社富士通研究所(注1)(以下、富士通研究所)と富士通研究開発中心有限公司(注2)(以下、FRDC)は、大都市圏内に点在する複数のデータセンター間を大容量かつ低コストで接続するため、1波長あたり毎秒400ギガビット(Gbps)光送受信器に向けたデジタル信号処理の基本方式を開発しました。

今回、送信側から独自の基準信号を送信し、受信側でこの信号を用いてひずみを効果的に補正する新しい通信方式を開発し、160kmの無中継伝送実験に成功しました。本技術により、光送受信器における構成部品の特性のばらつきや伝送路によるひずみの影響を高精度に補正することが可能となり、安価な光送受信部品を用いて1波長あたり400Gbpsの送受信が可能となります。

本技術は、低コスト化が期待されるシリコンフォトニクス技術を用いた光送受信部品の集積化にも適用可能であり、5Gモバイルネットワークや多様なIoTサービスを支える次世代分散コンピューティング基盤の構築に貢献します。

本技術の詳細は、3月20日(日曜日)から米国アナハイムで開催の国際会議「The Optical Fiber Communication Conference and Exhibition (OFC) 2016」にて発表します。

開発の背景

5GモバイルネットワークとIoTの進展によって、利用者が、より多くの機器やデータにアクセスしながら、一層リアルタイム性の高いサービスを享受する時代が、数年以内に訪れるといわれています。そのための基盤として、大都市圏内に複数のデータセンターを分散して配置し、互いに連携協調させる分散コンピューティング基盤の開発が進められています(図1)。これら複数のデータセンターを結ぶ光ファイバーネットワークには、現在主流である1波長あたり100Gbpsのデータ送受信にとどまらず、200Gbps、さらには400Gbpsと大容量化が求められており、その実現に向けた研究開発が進められています。

図1 分散コンピューティング基盤を実現する都市圏データセンター間ネットワーク
図1 分散コンピューティング基盤を実現する都市圏データセンター間ネットワーク

課題

これまで、1波長あたり400Gbpsの光通信速度については、用途ごとに最適化・選別された高価な部品を使うことで実現されています。光送受信器の構成部品については、より安価な部品の利用や、別途開発が進められているCMOS技術やシリコンフォトニクス技術を用いることによる低コスト化が期待されますが、用途ごとに最適化・選別された高価な部品と比較すると性能が低くなり、性能にばらつきも発生するため、そのままでは、データセンター間の通信距離として求められる100km程度の伝送距離を実現できませんでした。

開発した技術

今回、光送受信器のコスト削減において、特に大きな性能劣化が想定される送信器のひずみを受信器側で補正する新しい光通信方式を開発しました。

開発した方式では、送信器側で伝送路における信号ひずみの影響を受けにくい独自の基準信号をデータ信号とあわせて送信し、受信器側で送信器の信号ひずみを効果的に補正します(図2)。

開発した方式の特長は以下のとおりです。

  1. 独自の基準信号を用いた新しい通信方式

    従来は、送信器の出力信号を観測しながら信号ひずみを補正することによって、送信器として可能な限り品質の良い信号を送信することが一般的でした。しかし400Gbpsにおいては、求められる処理精度が高くなるため、送信器側で補正することが難しくなり、部品・回路コストが増大します。そこで、独自の基準信号を送信することにより、受信器側で送信器の信号ひずみを補正可能とする新しいデジタル信号処理方式を開発しました。

  2. 受信器における新しい補正技術

    従来の光受信器では、伝送路のひずみを補正してから信号検出のための位相再生処理を行う必要がありましたが、送信器のひずみの影響が大きい場合は補正が困難でした。今回、独自の基準信号を用いることで伝送路のひずみを補正せずに位相再生を可能とする技術を開発しました。本技術により受信器は、まず位相再生と送信器のひずみ補正を行い、その後、伝送路のひずみ補正を行うことで、大きくひずんだ信号からでも変調されたデータの再生を可能にします(図3)。

    図2 光送受信器の構成
    図2 光送受信器の構成
    拡大イメージ

    図3 送信器ひずみ補正の効果
    図3 送信器ひずみ補正の効果

    図4 開発技術を適用した160km無中継伝送実験システムの構成
    図4 開発技術を適用した160km無中継伝送実験システムの構成

効果

本技術を用いることで、都市圏内に配置したデータセンター間の広帯域ネットワーク構築に十分な距離を想定した160kmの光ファイバーで400Gbps信号の伝送実験(図4)に成功しました。また、課題であった低コスト部品などを利用した場合の特性ばらつきの補償に対しても適用可能です。これにより、次世代の分散コンピューティング基盤を構成する、1波長あたり400Gbpsの光送受信器の低コスト化が実現できます。

今後

富士通研究所では、シリコンフォトニクス技術と組み合わせた検証をすすめ、400Gbps光送受信器として2019年の実用化を目指します。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 株式会社富士通研究所:
本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 佐相秀幸。
注2 富士通研究開発中心有限公司:
本拠地 中国北京、董事長 佐々木繁。

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
ネットワークシステム研究所
電話 044-754-2643(直通)
メール 400g_sc@ml.labs.fujitsu.com


プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容、お問い合わせ先などは、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。