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PRESS RELEASE (技術)

2015年5月29日
株式会社富士通研究所

Webアプリケーションの安全性と操作性を両立する仮想化技術を開発

実行時の自動分散処理により追加開発不要で高い操作性を実現

株式会社富士通研究所(注1)は、スマート端末やウェアラブル端末で動作するWebアプリケーション(注2)をシンクライアントと同様の安全性とすぐれた操作感で利用できる技術を開発しました。

近年、様々な現場でスマート端末やウェアラブル端末を活用した業務効率化が期待されています。こうした端末が扱うデータで、患者情報や社外秘情報といった高い秘匿性が求められる場合、安全性の観点では端末にデータを残さないシンクライアント環境が理想です。一般にシンクライアント環境は、画面情報の送受信が頻繁に発生します。このため、モバイルネットワークの状況や端末側の処理能力によっては、人が遅いと感じる数百ミリ秒から1秒程度の遅延が発生することがあり、スワイプ操作などスマート端末特有の操作に影響します。

今回、スマート端末向けに開発されたWebアプリケーションをユーザーインターフェース処理(UI処理)とデータ処理に自動で分離し、データ処理はクラウド側(サーバ)で実行し、UI処理はスマート端末側で実行する新しい仮想化技術を開発しました。これにより、今後、新たにスマート端末やウェアラブル端末で動作するWebアプリケーションに対して、シンクライアント環境と同様の安全性とすぐれた操作性を両立した業務アプリケーション実行環境を実現できます。

背景

近年、様々な現場でスマート端末を業務に活用する動きが盛んになってきています。さらにスマートグラスなどのウェアラブル端末の実用化とともにウェアラブル端末とスマート端末を連携させることによる現場での業務の効率化が期待されています(図1)。

図1 スマート端末を活用した業務のイメージ
図1 スマート端末を活用した業務のイメージ

課題

スマート端末向けに開発されたWebアプリケーションでは、例えば、カメラや音声など、一度端末に保存したデータを利用することがあります。また、クラウドからデータを取得して端末に保存してから業務ロジックを実行する場合があります。スマート端末が扱うデータで患者情報や社外秘情報といった高い秘匿性が求められる場合、安全面では端末にデータを残さないシンクライアント環境が理想ですが、モバイルネットワークの状況や端末側の処理能力によっては、人が遅いと感じる数百ミリ秒から1秒程度の遅延が発生することがあり、スワイプ操作やタップ操作などスマート端末特有の操作に影響することが課題でした(図2)。

図2 サーバ上でWebアプリケーションを利用する場合の課題
図2 サーバ上でWebアプリケーションを利用する場合の課題

開発した技術

今回、スマート端末上で実行するために開発されたWebアプリケーションのソースコードをサーバ上に配置して、端末からWebアプリケーションを実行する際に自動解釈し、データ処理はサーバで、UI処理はスマート端末で分散して処理可能な技術を開発しました(図3、図4)。

開発した技術の特長は以下のとおりです。

  1. Webアプリケーションの分散

    端末とサーバには新たに開発したスマートフォンを仮想化するエンジンをそれぞれ搭載し、UI処理の移動や処理内容の実行などを行います。また、従来のWebアプリケーション・ライブラリは、仮想化に対応するため、独自開発した仮想化対応版のWebアプリケーション・ライブラリに置き換えています。

    Webアプリケーションの実行時にソースコードを解析し、Webアプリケーションの実行に必要なライブラリ(Webアプリケーション・ライブラリ)で定義されたUIに関連するAPIが記述された部分をソースコードのUI処理と推定して分離します。

    端末からサーバにWebアプリケーションの実行が通知されると、ソースコードのUI処理部分と仮想化対応版のWebアプリケーション・ライブラリをスマート端末に転送します。

    分離したUI処理以外のソースコードをデータ処理としてサーバ側で実行し、転送したUI処理はスマート端末で分散して実行することで、安全性と高い操作性を確保しました。これらは、Webアプリケーション実行時に動的に処理するため、分散処理に必要な再設計・再開発不要です。

    図3 Webアプリケーションの分散(左:分散前、右:分散後)
    図3 Webアプリケーションの分散(左:分散前、右:分散後)
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  2. 操作内容に応じた分散処理

    スマート端末で利用者の操作や処理時間、操作頻度を分析し、UI処理の中で操作性への影響が小さい処理はサーバに動的に移動する機能をさらに開発しました。これにより、操作性を維持しながら、より安全なシステムを実現できます。

    図4 操作内容に応じた処理の移動(左:移動前、右:移動後)
    図4 操作内容に応じた処理の移動(左:移動前、右:移動後)
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効果

今回開発した仮想化技術を用いることで、スマート端末を業務に活用してモバイル環境からWebアプリケーションを利用する場合の安全性とスマート端末特有の高い操作性の両立を実現しました。

さらに、実用化が進むスマートグラスなどのウェアラブル機器と連携するWebアプリケーションに本技術を適用することで、高い秘匿性が要求される情報を多く扱う業務での活用など、今後、新たにシンクライアント環境をスマート端末やウェアラブル機器上で動作するWebアプリケーションにも拡大して提供することが可能となります。

今後

富士通研究所は、開発した仮想化技術のサーバでの多重実行性能の向上や操作分析の高精度化などを進め、2016年度中の実用化を目指します。

さらに、サーバやストレージのみならずIoT環境など様々なクラウドが連携する「ハイパーコネクテッド・クラウド」の実現に向け、実行状態やネットワーク環境などに応じて端末やネットワーク装置、サーバなどに最適に分散実行する技術開発を進めていきます。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 株式会社富士通研究所:
本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 佐相秀幸。
注2 Webアプリケーション:
Android OSなどのスマート端末やウェアラブル端末用のOS上で実行するためにHTMLやJavaScriptを用いて実装されたアプリケーション。

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
ネットワークシステム研究所
電話  044-754-2667(直通)
メール vsp-2015@ml.labs.fujitsu.com


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