お知らせ
2015年5月21日
富士通株式会社
株式会社富士通研究所
平成27年度全国発明表彰「発明賞」を受賞
富士通株式会社(以下、富士通)(注1)の指向性受音方式に関する発明が、このほど公益社団法人発明協会(注2)が主催する「平成27年度全国発明表彰」において、「発明賞」を受賞しました。受賞対象は、2006年に富士通が出願し、2012年に特許として登録された「指向性受音方式の発明(特許第4912036号)」です。
本発明は、多くの方向から雑音が来る車室内において、2個のマイクで運転手方向からの音を強調して音声認識率を高める指向性受音技術に関するものです。
カーナビなどの車載機器用マイクとしてグローバルに採用されており、さらに、本技術を「らくらくホン」などの当社の携帯電話に適用することで、街中のような雑音環境における通話の音声品質向上にも貢献しています。
表彰式は、6月17日(水曜日)にホテルオークラ東京(東京都港区)にて開催予定です。
全国発明表彰について
全国発明表彰は、我が国における発明、考案、または意匠の創作者ならびに発明の実施および奨励に関し、功績のあった方々を顕彰することにより、科学技術の向上および産業の発展に寄与することを目的としています。
受賞者
[発明賞] 指向性受音方式の発明(特許第4912036号)
松尾 直司 株式会社富士通研究所(注3) メディア処理研究所 メディアインターフェースプロジェクト
受賞技術
- 背景と従来技術
車室内における音声入力インターフェースは、カーナビなど車載機器の操作を走行中であっても安全に行うことができます。しかし、走行音や同乗者音声などが雑音となり、運転手音声の認識精度が低下するため、車室内の狭いスペースに設置可能な小型のマイクユニットにより、様々な方向から来る雑音に対する高い抑圧性能が求められています。
複数のマイクを並べたマイクアレイを用いる従来技術としては、雑音が各マイクに到達する時間差を遅延処理で吸収した後に、減算で雑音を抑圧する同期減算技術があります。しかし、雑音抑圧量はマイク数に大きく依存するため、例えば2個のマイクを用いるような車室内に設置可能な程度の小型のマイクユニットでは、抑圧量が不十分でした。
- 発明技術
本発明は、走行音や同乗者音声など様々な雑音がある車室内において、運転手方向からの音を強調して音声認識率を高める、マイクアレイを用いた指向性受音技術に関するものです。
2個のマイクから成る小型のマイクアレイを車のルーフに設置することによって、助手席側から来る複数の雑音を同時に抑圧することが可能です(図1)。
図1 本発明を用いたマイクアレイと雑音抑圧範囲今回、2個のマイクの入力信号を用いた音源方向検出と雑音抑圧の処理を周波数軸上で行いました。この際、帯域ごとに独立して音源方向を検出し、検出した音源方向が図1の雑音抑圧範囲の場合にその帯域の信号成分を抑圧することで、2個のマイクを用いて帯域全体で高い雑音抑圧性能を実現しています。これは人間の聴覚特性に似た処理方法です。本発明を用いたマイクアレイを音声認識機器と繋いで富士通研究所にて評価したところ、従来の同期減算技術に比べて助手席側からの雑音の抑圧量が100倍以上になることを確認しました(図2)。これにより、音声認識率の向上が期待されます。
図2 2個のマイクを用いた場合の指向特性 - 産業上の応用
本発明を用いたマイクアレイは、雑音抑圧範囲が広く、車の室内の広さに合わせた個別調整が不要で、言語非依存であることから、カーナビなど車載機器の音声入力インターフェースとしてグローバルに採用されています。また、特に海外で普及している車載用ハンズフリーテレホン向けのマイクアレイユニットとして適用が検討されています。さらに、車向けの基本技術を「らくらくホン」などの当社製携帯電話のマイクに適用することで、道路沿いや駅など街中の雑音環境における通話品質向上にも貢献しています。
商標について
記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
以上
注釈
- 注1 富士通株式会社:
- 本社 東京都港区、代表取締役社長 山本正已。
- 注2 公益社団法人発明協会:
- 所在地 東京都港区、総裁 常陸宮殿下、会長 庄山悦彦。
- 注3 株式会社富士通研究所:
- 本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 佐相秀幸。
本件に関するお問い合わせ
株式会社富士通研究所
メディア処理研究所
044-874-2489(直通)
patent_microphone_array@ml.labs.fujitsu.com
プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容、お問い合わせ先などは、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。