PRESS RELEASE
2015年4月20日
株式会社KDDI研究所
三菱電機株式会社
国立研究開発法人情報通信研究機構
慶應義塾大学
富士通株式会社
イクシアコミュニケーションズ株式会社
株式会社東陽テクニカ
世界初、複数の異なる光トランスポートネットワークを相互接続し、マルチSDNコントローラにより全国規模でのフロー/パス設定に成功
将来の世界規模の統合ネットワークサービス実現に向けて前進
株式会社KDDI研究所(以下KDDI研、代表取締役所長:中島康之)、三菱電機株式会社(以下三菱電機、執行役社長:柵山正樹)、国立研究開発法人 情報通信研究機構(以下NICT、理事長:坂内正夫)、慶應義塾大学(以下慶應大、塾長:清家篤)、富士通株式会社(以下富士通、代表取締役社長:山本正已)、イクシアコミュニケーションズ株式会社(以下イクシア、代表取締役:村上憲司)、株式会社東陽テクニカ(以下東陽テクニカ、代表取締役社長:五味勝)の7者は、通信技術や管理手法など、アーキテクチャの異なる複数のネットワークドメインからなる全国規模の光トランスポートネットワーク(注1)を構築し、SDN(Software Defined Networking)技術(注2)を用いて、これらネットワークドメインをまたがるシームレスな通信フローを動的に生成する相互接続実験に成功しました。本技術は、ネットワークサービスとクラウド上の様々なサービスを融合した将来の世界規模の統合ネットワークサービス構築への応用が期待できます。
本実験の内容は、4月20日~22日に那覇市で開催される国際会議11th International Conference on IP + Optical Network(iPOP2015)にて相互接続デモンストレーションとして公開いたします。
背景
グローバルな人・モノの流通がコモディティ化していくに伴って、世界中どこからでもシームレスに提供可能な通信サービスに対する需要が高まっています。一方で、各国あるいは地域単位で構成されるネットワークは、通信事業者が地域事情に合わせ、異なるアーキテクチャ、およびテクノロジで構成しています。これら複数のネットワークを一元的に集中制御することでネットワークをまたがった通信サービスを迅速に開通・提供することが可能となりますが、膨大な処理・すべてのテクノロジに対する依存性を考慮しなければならないなど、実現は困難とされていました。
今回の成果と公開デモンストレーションの内容
全国に構築した異なるテクノロジのトランスポートネットワークを、新世代通信網テストベットJGN-X(注3)等を用いて接続した大規模トランスポートネットワーク(図1参照)を構築し、各ネットワークドメインに配備したSDNコントローラが連携制御することで、複数のトランスポートネットワークドメインをまたがる通信フローを設定する相互接続実験に成功しました。
4月20日~22日に開催される国際会議iPOP2015の公開デモンストレーションでは、日本電信電話株式会社(以下NTT)、一般社団法人沖縄オープンラボラトリ(以下OOL、注4)、及び広域ネットワークへのSDN適用を目指す研究開発「O3プロジェクト(注5)」と協力して、関東3拠点(小金井、武蔵野、大手町)、及び沖縄1拠点(iPOP2015会場)に構築したトランスポートネットワークドメインと、国内広域に展開されているRISEテストベッド(注6)のネットワークドメイン(RISE沖縄、RISE関東)、さらにはインターネット経由で米国拠点(ISOCORE、注7)の計7拠点を接続したトランスポートネットワークを用意し、iPOP2015会場に設置したSDN/OpenFlow(注8)ベースの制御装置からの遠隔制御により、関東の各拠点とiPOP2015会場を接続する複数の通信フローを設定できることをお見せします。
NICT小金井を拠点とするトランスポートドメインは、SDN/OpenFlowベースの制御装置により制御されるマルチドメイン/マルチテクノロジのトランスポートネットワークとして、100ギガビット級DWDMトランスポートシステム(注9、三菱電機提供)と、100ギガビット級光パケット・光パス統合ネットワークシステム(注10、NICT提供)で構築される大容量メトロコア光ネットワークと、エラスティック性(注11)を有する次世代光アグリゲーションネットワーク(注12)のプロトタイプ機器(注13、慶應大提供)と、広域ネットワークに対応する高速パケット転送を行う仮想ノード(注14、富士通提供)で構築された光アグリゲーションネットワークを構築し、iPOP2015会場に設置した統合制御装置(注15、KDDI研提供)からの遠隔制御により、仮想光ネットワークを構築します。
NTT武蔵野を拠点とするトランスポートネットワークドメインは、スイッチ群を仮想資源として管理し(注16)、SDN/OpenFlowベースの制御装置からの指示に応じて、迅速に仮想網を構築します。同時に、ドメイン内コントローラが、網状況に応じてトランスポートパスの動的な経路最適化等のトラヒックエンジニアリングも実施します。
RISE沖縄拠点には、データセンタを模擬するための仮想マシン群が配備され、RISEテストベッドを通じて、関東拠点の仮想マシン群との間で、データセンタ間接続のトランスポートネットワークドメインを構成しています。また、iPOP2015会場には、各トランスポートネットワークドメインを制御するSDN/OpenFlowベースの制御装置と、次世代光アグリゲーションプロトタイプ機器(慶應大提供)が配備され、関東各拠点に構築したトランスポートドメインと接続された広域のトランスポートネットワークドメインを構成しています。
米国拠点には、ネットワークテスタが配備され、インターネット経由でNICT小金井拠点に対して背景トラヒックを提供しています。
これらは、全国7拠点に構築したトランスポートネットワークを相互に接続した全国規模ネットワークのSDN/OpenFlow制御の初の公開デモンストレーション(注17)です。
図1 トランスポートネットワーク構成
拡大イメージ
商標について
記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
以上
注釈
- 注1 光トランスポートネットワーク:
- 通信ネットワークの基盤であり、光信号等を用いてデータを転送するネットワークを意味します。
- 注2 SDN(Software Defined Networking)技術:
- ネットワーク構成をソフトウェアで動的に設定・変更できるネットワーク技術です。
- 注3 新世代通信網テストベットJGN-X:
- NICTが2011年4月から運用している新世代ネットワーク技術の実現とその展開のための新たなテストベッド環境です。研究開発のために広く一般に開放されています。
- 注4 一般社団法人沖縄オープンラボラトリ:
- 一般社団法人沖縄オープンラボラトリ(OOL)は、クラウドコンピューティングとSoftware-Defined Networking(SDN)を融合した次世代ICT基盤技術の実用化や普及を目的とし、オープンコミュニティ、標準化推進団体と国際的な連携活動を推進するとともに、当該技術領域に関する技術者育成を図るための研究開発活動を、国内およびアジアを中心とする各国の有力企業、団体、教育機関、研究機関が参加し、国際的かつオープンに推進しています。OOLは、iPOP2015の主催者でもあります。
- 注5 O3プロジェクト:
- 総務省の委託研究「ネットワーク仮想化技術の研究開発」として、日本電気株式会社、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社、NTT、富士通、株式会社日立製作所が、マルチユーザ・マルチレイヤ・マルチドメインの広域仮想ネットワーク統合制御の研究開発 に取り組んでおり、成果の一部をOSS(オープンソースソフトウェア)として公開しています。 http://www.o3project.org
- 注6 RISEテストベッド:
- NICTがJGN-X上で2011年10月からサービスを開始しているSDN/OpenFlow技術のための広域テストベッド環境です。JGN-Xと同様に広く一般に開放されています。国内11拠点および海外5拠点に展開されているOpenFlowスイッチおよび仮想ホスト環境による分散ICT環境が提供されており、ユーザは自身のコントローラソフトウェアを用いて大規模インフラ制御の実証実験が可能です。
- 注7 ISOCORE:
- ISOCORE(http://www.isocore.com/)は、米国バージニア州にある相互接続性検証サイトを提供する会社です。MPLSやSDNの標準化においては、ISOCOREでの検証実施が大きな影響を与えています。ISOCOREは、iPOP2015の主催者でもあります。
- 注8 OpenFlow:
- OpenFlowはOpen Networking Foundation(ONF)の登録商標です。
- 注9 100ギガビット級DWDMトランスポートシステム:
- 1本の光ファイバ上で波長多重した光信号を伝送する光通信装置です。今回の相互接続実験で使用している装置は1波長あたり毎秒100ギガビット、光ファイバ1本あたり毎秒数テラビットの伝送が可能です。本研究開発の一部は、平成21年度から平成23年度に実施した総務省の委託研究「超高速光伝送システム技術の研究開発(デジタルコヒーレント光送受信技術)」および「超高速光エッジノード技術の研究開発」の成果を利用しています。
- 注10 100ギガビット級光パケット・光パス統合ネットワークシステム:
- 高精細映像伝送や遠隔医療、TV会議など高品質な要求をするエンドユーザーに対しては光パスを提供し、Webアクセスや電子メールの転送、超大量端末からのセンサーデータなどの転送には、光パケット交換を用いる等、用途にあわせた通信路を提供する光装置です。本装置は、NICT の「新世代ネットワーク基盤技術に関する研究開発」「フォトニックネットワーク技術の研究開発」の研究成果を利用しています。
- 注11 エラスティック性:
- エラスティック性とはここでは光パスの信号帯域を要求帯域に応じてゴムのように伸縮自在に変更可能な性質を言います。
- 注12 次世代光アグリゲーションネットワーク:
- アグリゲーション網は、地域的に配備されサービス毎に存在するアクセス網と通信局間を接続するコア網との間に存在し、アクセス網からのトラヒックをコア網に向けて集約するサービス共通の集線網です。次世代光アグリゲーションネットワークでは、Fiber to the Home(FTTH)技術を拡張して、アグリゲーション網をアクセス網と統合してアクティブ光分配網として光化部分を拡大し、ネットワーク仮想化技術やSDN技術によるサービス対応型統合網の実現を目指しています。
- 注13 プロトタイプ機器:
- 慶應大のプロトタイプ機器は、NICTの委託研究「エラスティック光アグリゲーション技術の研究開発」の成果を利用しています。
- 注14 仮想ノード:
- 富士通の「FUJITSU Network Virtuora SN-V」は、広域ネットワークのリソース仮想化に対応したソフトウェアスイッチです。汎用IAサーバで動作し、当社独自のパケット処理技術による高速データ通信と、自律的なルート切替制御を実現しています。また、制御用標準インターフェースであるOpenFlow1.3に対応しています。
(参考)FUJITSU Network Virtuora SN-V - 注15 統合制御装置:
- KDDI研の統合制御装置(プロトタイプ)は、総務省の委託研究「スライサブルな超100Gイーサネットシステムを実現するための大規模プログラマブル光ネットワークの研究開発」の成果を利用しています。
- 注16 スイッチ群を仮想資源として管理:
- 用途毎に異なる、高機能なエッジルータ、コアルータなどの専用装置のみに頼らず、機能がシンプルな汎用製品を最大限に活用することを目指したネットワークの構成方式。
(参考)マルチサービスファブリック - 注17 全国規模ネットワークのSDN/OpenFlow制御の初の公開デモンストレーション:
- 本実験は、けいはんな情報通信オープンラボ研究推進協議会・相互接続性検証ワーキンググループ(主査:慶應義塾大学理工学部教授 山中直明)で推進する「Multi-Technology Transport Network制御技術 研究開発プロジェクト」の一環として実施するものです。
けいはんな情報通信オープンラボ研究推進協議会は、産学官連携によるICT分野の研究開発を推進することにより関西経済の発展に資することを目的とする協議会です。相互接続性検証ワーキンググループは、同協議会の傘下のワーキンググループであり、新世代の光ネットワークの相互接続性に関して、様々な提案や検証を行っている、KDDI研、三菱電機、NICT、慶應大、富士通を含む9機関からなる共同研究グループです。
国際会議iPOP2015概要
日時 | : | 2015年4月20日(月曜日)- 4月22日(水曜日) |
会場 | : | 沖縄県那覇市旭町116-37 沖縄県市町村自治会館(入場無料・当日参加登録可能) |
詳細情報 | : | http://www.pilab.jp/ipop2015/ |
*デモンストレーションは展示開催期間中(20日 10時15分~18時5分、21日 9時30分~11時、22日 9時30分~14時30分)常時ご覧いただけます。
本件に関するお問い合わせ
株式会社KDDI研究所
営業企画グループ
049-278-7319
inquiry@kddilabs.jp
三菱電機株式会社
広報部
03-3218-2359
03-3218-2431
国立研究開発法人 情報通信研究機構
広報部 報道担当
042-327-6923
042-327-7587
publicity@nict.go.jp
慶應義塾
広報室
03-5427-1541
03-5441-7640
m-koho@adst.keio.ac.jp
富士通株式会社
広報IR室
03-6252-2174
03-6252-2783
イクシアコミュニケーションズ株式会社
営業部
03-5326-1948
salesjapan@ixiacom.com
株式会社東陽テクニカ
広報部
03-3279-0771
spirent-web@toyo.co.jp
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