PRESS RELEASE (ソフトウェア)
2015年3月24日
富士通株式会社
磁界シミュレータ「EXAMAG LLGシミュレータ」の新バージョンを販売開始
次世代デバイスへの活用が期待されるスピントルク効果を実装
当社は、大規模な並列計算に対応した磁界シミュレーションパッケージソフトウェア「FUJITSU Manufacturing Industry Solution EXAMAG LLGシミュレータ(フジツウ マニュファクチュアリング インダストリー ソリューション エクサマグ エルエルジー シミュレータ)」(以下、EXAMAG LLGシミュレータ)(注1)を強化し、新バージョンを3月24日より販売開始します。
本製品は、磁性材料の磁化過程の速さや安定性といった磁性体の挙動をシミュレーションすることで、HDD用磁気ヘッドやメモリデバイスなどの磁気デバイスの開発において、試作回数の削減や高性能化を実現するソフトウェアです。今回、新たに、電流を流すことで電子の磁化方向を変化させるスピントルク効果を実装し、低消費電力かつ高速な次世代の磁性メモリのデータ記録過程をシミュレーションできる機能を追加しました。また、磁性体の挙動の計算結果をグラフィック動画で表示する際の高速化を実現するとともに、従来のLinux OSに加えWindows OSにも対応します。
本製品を活用することで、新規磁性材料の開発や、スピントルク効果を用いた新たな磁気デバイスの設計が可能になります。
動画1. スピントルクによる磁壁の移動(再生時間: 5秒 / 音声なし)
動画2. MRAMの磁化反転(再生時間: 10秒 / 音声なし)
図.スピントルクによる磁壁の移動
磁性材料は、HDD用磁気ヘッドやメモリデバイス、DC/DCコンバーター、非接触給電といった磁気デバイスに幅広く用いられています。このようなデバイスの設計には、磁性材料の磁化過程の速さや安定性といった磁性体の挙動を把握することが重要です。磁性材料の種類、形状、動作条件によって変化する磁性体の動きをシミュレーションすることで、様々なデバイスの高機能化・高性能化を追求した最適設計が行えます。
今回、さらなるデバイスの高機能化・高性能化のニーズに応え、高速・省電力の磁性メモリや高記録密度のHDD磁気ヘッドなどで研究されているスピントルク効果のシミュレーション機能を新たに実装し、販売を開始します。
新製品の特長
「EXAMAG LLGシミュレータ」は、大規模な並列計算を適用することで高速なシミュレーションを実現するほか、マイクロマグネティックスの手法(注2)と有限要素法(注3)を組み合わせ、大規模計算になる複雑な形状の磁性材料の磁化過程や磁性デバイスの設計をPCサーバ上で解析できることが特長です。
今回、強化した機能は以下のとおりです。
- 次世代デバイス開発で期待されるスピントルク効果の実装
スピントルク効果は、磁性体において電気伝導を行う伝導電子と磁性体内の電子の相互作用によって電子間にトルク(回転力)が発生し、磁化が反転する現象です。従来の磁界を用いて電子を反転させる方式と比べ低消費電力かつ高速に電子が作用するため、次世代デバイスに活用できる効果として期待されています。今回、磁性体に伝導電子を注入するスピン注入型のスピントルクと、電流そのものでスピントルクを発生させる電流駆動型のスピントルクに対応し、MRAMのようなメモリ素子への適用のほか、磁区を記録ビットとする新規構造の磁壁移動型メモリ素子への適用も可能となります。また、スピントルク効果による高周波発振器を組み込んだ次世代HDD用磁気ヘッド(MAMR)の解析も行えます。
- 操作性向上を実現
快適な解析環境を提供するためユーザーインターフェースを大幅に見直し、従来製品に比べてシミュレーション結果のグラフィック画面表示を10倍以上高速化しました。また、多様な計算機環境に対応するため、Linux OSに加えてWindows OSの PCサーバにも対応しました。
なお、本製品は、株式会社富士通研究所(本社:神奈川県川崎市、代表取締役社長:佐相秀幸)と共同で開発しています。
販売価格および提供時期
ソフトウェア名 | 販売価格 (税別) | 提供時期 |
---|---|---|
EXAMAG LLGシミュレータV2 4並列 | 300万円 | 2015年3月24日より |
EXAMAG LLGシミュレータV2 8並列 | 570万円 | |
EXAMAG LLGシミュレータV2 16並列 | 800万円 |
※年間ライセンス + 年間サポート(保守)での提供価格。
※並列とは一度に同時計算可能な並列計算数のこと。
※その他、32並列、64並列、128並列があり。
商標について
記載されている商品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
以上
注釈
- 注1 LLGシミュレータ:
- ランダウ(Landau)-リフシッツ(Lifshitz)-ギルバート(Gilbert)の3名の物理学者に由来する磁化の運動方程式をLLG方程式という。本製品はこの方程式に基づくシミュレータ。
- 注2 マイクロマグネティックスの手法:
- 磁性材料の内部の微細な磁化状態を解析する手法。
- 注3 有限要素法:
- 数値解析手法のひとつ。構造解析や電磁界解析で広く適用。
本件に関するお問い合わせ
富士通株式会社
次世代テクニカルコンピューティング開発本部
044-754-8768 (直通)
examag@cs.jp.fujitsu.com
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