PRESS RELEASE (技術)
2014年12月5日
株式会社富士通研究所
省電力システムを実現するセンシング・ミドルウェアを開発
ウェアラブル機器で人の状況を常時とらえ続けることが可能に
株式会社富士通研究所(注1)は、様々なウェアラブル機器を意識することなく利用可能な環境の実現に向け、ウェアラブル機器向けにセンシング・ミドルウェアを開発し、省電力なアプリケーションを簡単に提供できるフレームワークを構築しました。
ウェアラブル機器の多くはバッテリーの電力で動作するため、長時間使用するには消費電力を抑える工夫をアプリケーションに実装する必要がありました。
今回、個別のセンサーごとの実装を不要にし、各機器に搭載したセンサーを自動的に使い分けて最も少ない消費電力になるようにセンシングを実行する、センシング・ミドルウェアを開発しました。本ミドルウェアに対応したファームウェアをウェアラブル機器に組み込むことで、アプリケーションの開発者は、人の動作や居場所などセンシングで得たい情報を指定するだけで、従来と比べ約10分の1の工数で、簡単に省電力アプリケーションを開発することができます。
本技術を広く普及させることで、常時センシング可能なウェアラブル機器の開発を推進し、ハンズフリーでの現場業務支援や詳細な作業内容の自動記録など様々なICTサービスを自然に受けられる社会を目指します。
開発の背景
携帯電話やスマートフォンには様々なセンサーが搭載され、近隣の店舗検索や健康管理など新しい情報サービスに利用されてきました。近年は、多様なウェアラブル機器が登場しており、身に着けた人の場所や動きといった情報をより多く捉え、さらにきめ細かいサービスの実現が期待されています。
特に保守、製造、流通といった現場では、ウェアラブル機器によってICTを活用できる場面の拡大が期待されています。ウェアラブル機器は、スマートフォンやタブレットと違ってハンズフリーで情報にアクセスできるため、端末操作のために作業を中断することなく業務を遂行できます。工場や倉庫、病院、店舗などで、例えば歩行中は作業場所への誘導を、作業場所で立ち止まると作業に必要な支援情報を提供するといった人の行動や周囲の状況に合わせてタイムリーに情報を提供することで、現場での作業ミスを減らし作業効率を向上させることが可能になります(図1)。
図1 ウェアラブル機器による現場作業支援の例
課題
人の状況に合わせてタイムリーに情報提供するには、機器の操作有無に関わらず、常に人の情報を採取し判断し続ける必要があります。しかし、スマートフォンやウェアラブル機器はバッテリーの電力で常時稼働しているため、動作するアプリケーションや対応するサービスの開発には、センサーを上手に使いこなしながら消費電力を抑える工夫が必要でした。
例えばスマート端末では、センサー用APIを通じてセンシングを使う様々なアプリケーションを容易に開発できますが、稼働させるセンサーを必要最小限に絞り、こまめにそれぞれを電源制御するような省電力化は開発工数とノウハウが必要で、開発者が専用に作り込む必要があります。また、センシング処理を低消費電力のマイコンに任せてスマート端末本体の消費電力を抑える方法もありますが、処理内容自体は専用のファームウェアとして開発する必要があります。
開発した技術
今回、低消費電力なセンシング・アプリケーションを簡単に開発できるフレームワークを開発しました(図2)。
開発した技術の特長は以下のとおりです。
- センシング・ミドルウェア
アプリケーションからのセンシング要求に対して、消費電力を抑えるように自動でウェアラブル機器へセンシングの処理を振り分けるミドルウェアです。以下の手順で振り分けを行います。
- ミドルウェアはウェアラブル機器の接続状況を監視し、利用できるセンサーの情報を収集。
- アプリケーションからの要求を受けたら、その要求内容とセンサーの情報を照らし合わせ、個々のセンサーの消費電力や通信の発生頻度などから、センシング処理を最も少ない消費電力で実行できるように稼働させるセンサーの組合せを決定。
- 稼働させるセンサーの組合せに基づいて各ウェアラブル機器に常時センシング処理を指示。
- 指示を出した後は、基本的にウェアラブル機器がセンシング処理を続けるため、ウェアラブル機器から通知が届くまでスマートフォン本体は低消費電力の待機状態に。
このように、アプリケーションからの要求に基づいて自動的に省電力なセンシング方法を選択して実行します。
- センシング・ノード
センシング・ミドルウェアから送り込まれる指示に従って常時センシング処理を行うウェアラブル機器側のファームウェアモジュールです。ウェアラブル機器が備えたセンサーと低消費電力のプロセッサを用いて、センサーデータの取得、加工、条件判定を低消費電力で長時間継続します。ミドルウェアから新たな指示が届くことで、ノードでの処理内容が変わるため、アプリケーションに合わせて様々なセンシングを行うことができます。
図2 センシング・アプリケーション開発フレームワークの概要
効果
本技術を活用することで、常時センシングするアプリケーションを、センシングや省電力制御のノウハウがなくても簡単に開発できるようになり、センシングを活用したソリューション構築に要する開発工数を従来の約10分の1に短縮すると同時に消費電力を3分の1以下に低減できます。さらに、利用するウェアラブル機器が類似のほかの機器に変わっても、対応ファームウェアを備えたセンシング・ノードであれば、アプリケーションを作り直すことなく使うことができます。
これまでは、ウェアラブル機器の省電力化をソリューションごとに行う必要がありましたが、本技術によってウェアラブル機器側のカスタマイズ開発を大幅に削減できるため、開発期間やコストを抑えることができ、ウェアラブル機器を様々なソリューションに導入して活用することが可能になります。
今後
富士通研究所は、本技術の2015年度中の実用化を目指します。また、ウェアラブル機器を本技術に対応させるためのインターフェース仕様は、機器メーカーなどに公開し、対応機器の開発を促進する予定です。
商標について
記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
以上
注釈
本件に関するお問い合わせ
株式会社富士通研究所
ユビキタスプラットフォーム研究所 エンベデッドプラットフォーム研究部
044-754-2695(直通)
mobilesensing-pr@ml.labs.fujitsu.com
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