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PRESS RELEASE (技術)

2014年11月11日
株式会社富士通研究所

LTE-Advancedに対応した基地局配置の設計技術を開発

最適な配置でスマートフォンのつながりにくさを解消し基地局数を3割削減

株式会社富士通研究所(注1)は、LTE-Advanced(注2)に対応した無線基地局の最適な設置位置をシミュレーションにより決定し、ユーザーにとって快適な通信環境を実現する基地局配置の設計技術を世界で初めて開発しました。

データ通信が主流である現在のモバイル通信では、ユーザーの通信速度を最適化する基地局配置の設計手法が必要とされています。しかしながら、最新の通信規格であるLTE-Advancedで採用された基地局間協調伝送(注3)を想定した場合に、ユーザーの通信速度を高速に計算する手法が確立されておらず、LTE-Advancedに対応した基地局配置の設計が困難でした。今回、基地局間協調伝送を想定した場合でも、ユーザーの通信速度を高速に計算可能なアルゴリズムを開発しました。

本技術を用いた基地局配置の設計により、従来と同程度の通信速度を得るために必要な基地局数を約3割削減できると同時に、モバイル通信のつながりにくさを解消することが可能になります。

本技術の詳細は、10月30日(木曜日)からシンガポールで開催された国際会議「SmartCom 2014」にて発表しました。

開発の背景

モバイル通信のトラフィックは年々増加を続けており、通信システムの大容量化が必要とされています。最新の移動通信規格であるLTE-Advancedでは、基地局のカバー範囲が広いマクロセルに、基地局のカバー範囲が狭いスモールセルを追加することで、通信システムの大容量化が図られています。このため、スモールセル用の小型基地局を追加する際に、最適な設置位置を決定する基地局配置の設計が重要となります。

課題

近年のモバイル通信では、メールやWebアクセス、ストリーミングなどのデータ通信が主流となっており、データ通信を目的とした基地局配置の設計では、ユーザーの通信速度を最適化し、ユーザーの体感通信速度や、つながりやすさを向上することが重要になっています。そのため、ユーザーの通信速度を高速に計算するアルゴリズムの開発が行われてきました。最新の通信規格であるLTE-Advancedで採用された基地局間協調伝送では、一つの端末がマクロ基地局と小型基地局の両方から同一信号を受信することで、セル間干渉を回避することができます。

従来の手法では、各基地局が独立にユーザー割り当てのスケジューリングを行うことを仮定して、ユーザーの割当率を高速演算アルゴリズム(注4)により計算していました。この方法は基地局間協調伝送に対応していないため、ユーザーの割当率を正しく計算できず、基地局間協調の機能を持った基地局では、最適な設置位置を判定することができませんでした(図1)。

図1 従来の高速演算を用いた基地局配置の設計
図1 従来の高速演算を用いた基地局配置の設計

開発した技術

今回、基地局間協調伝送を考慮してユーザーの割当率を正しく計算可能な基地局配置の設計技術を開発しました(図2)。開発した手法では、新たに導入する条件により、基地局間協調伝送を用いる場合のユーザーの割当率を高速に計算することができ、基地局間協調伝送の機能を持った基地局の最適な設置位置を決定することが可能になります。

基地局配置の設計手順は以下のとおりです。

  1. 基地局の追加
  2. 協調伝送を想定してユーザーの割当率を計算(高速演算アルゴリズム)
  3. 割当率と受信信号品質から各ユーザーの通信速度を計算
  4. 基地局の設置判定

開発した手法では、図2の緑で表される協調伝送時の各ユーザーの割当率の合計をα、青と赤で表される非協調伝送時の各ユーザーの割当率の合計をそれぞれ1-αとする条件で高速演算アルゴリズムを適用することで、各ユーザーの割当率を正しく計算できます。そして、割当率と受信信号品質から各ユーザーの通信速度を求め、その合計値によって基地局の設置の判定を行います。

図2 基地局間協調伝送に対応した基地局配置の設計
図2 基地局間協調伝送に対応した基地局配置の設計

効果

今回開発した技術を用いることで、LTE-Advancedに対応した基地局の最適な設置位置の計算が可能になり、基地局増設による大幅な通信品質の向上が見込めます(図3)。これにより、従来と同程度の通信容量を確保するために必要な増設基地局数を約3割削減すると同時に、モバイル通信のつながりにくさを解消し、ユーザーにとって快適な通信環境を提供することが可能になります。

図3 今回開発した技術の効果
図3 今回開発した技術の効果

今後

開発した技術は、基地局配置の最適化の検討を進め、2016年頃の実用化を目指します。富士通研究所では、今後もLTE-Advancedや次世代の移動通信方式である5G(注5)などで採用される新しい機能への対応を進めていきます。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 株式会社富士通研究所:
代表取締役社長 佐相秀幸、本社 神奈川県川崎市。
注2 LTE-Advanced:
Long Term Evolution-Advancedの略称。 国際標準化で規定されたLTE方式を拡張したシステムでLTEの上位互換性を持つ。
注3 基地局間協調伝送:
LTE-Advancedで採用された機能の一つで、Coordinated Multi-Point (CoMP) transmissionとも呼ばれる。隣接する複数の基地局が協調して、携帯端末へ信号を送信する技術。
注4 高速演算アルゴリズム:
ある条件のもとで最適化問題を解くことでユーザーの通信速度を高速に計算する手法。
注5 5G:
第5世代移動通信方式の呼称で、LTE-Advancedの次の世代の移動通信規格。

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
ネットワークシステム研究所 ワイヤレス信号処理研究部
メール press_scm14@ml.labs.fujitsu.com


プレスリリースに記載された製品の価格、仕様、サービス内容、お問い合わせ先などは、発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。