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PRESS RELEASE (技術)

2014年5月7日
株式会社富士通研究所

人や車の流れを大局的に把握できる軌跡分析技術を開発

交通から商業施設のマーケティングまで様々な分野への適用が可能に

株式会社富士通研究所(注1)は、GPSなどで測位した軌跡データを分析に適した形にまとめ、人や車の流れを大局的に把握できる軌跡分析技術を開発しました。

交通分野の軌跡分析では、軌跡データの含まれるすべての座標を道路地図上の道路データに対応させ移動経路を分析する方法が一般的ですが、道路データが細かすぎて交通の流れが分散して見えてしまうという課題がありました。

今回、軌跡の形状を考慮した類似度に基づいて軌跡データを集約し、大局的な人や車の流れを表現した経路グラフを生成することにより、道路データを用いることなく経路分析のような大局的な交通流分析が可能な技術を開発しました。本技術により、道路が封鎖された時の混雑地点の早期予測や、道路地図がない大規模テーマパーク内の人の流れ、航空機や船舶の航路分析などへの応用が期待されます。

本技術は、5月15日(木曜日)、16日(金曜日)に東京国際フォーラム(東京都千代田区)で開催する「富士通フォーラム2014」に出展します。

開発の背景

GPSや、公衆無線LANなどを用いた測位技術の普及により、人や車が実際に移動した位置情報を低コストで収集できるようになってきています。このような位置情報を時刻順に並べて生成される軌跡データを、都市計画や交通政策の立案、あるいはマーケティングに活用することで、社会システムの効率化や、ビジネス上の競争優位性を獲得することに大きな関心が集まっています。特に、出発地と到着地だけを集計するOD(Origin Destination)分析や、移動中の経由地も含めて集計する経路分析によって、大域的に人や車の流れを把握し、行先の推薦や移動時間予測などを精度よく行うための軌跡分析の技術が求められています。

課題

図1 道路データ
図1 道路データ

交通分野の軌跡分析では、軌跡データに含まれるすべての座標を道路データに対応させた後に、道路データ上で移動経路を分析する方法が一般的です(図1)。道路データは、交差点などの分岐を表すノードと、複数のノード間を走る道を表すリンクで表現されたデジタルデータです。主要な都市ではすでに道路データが整備されています。

軌跡データに含まれるすべての座標を、それぞれの近くに位置するノードやリンクに対応させることで、あらゆる経路に対して通過した車の数を数えるような基本的な処理が容易になります。しかし、数十メートル間隔で整備されている道路データは細かすぎて、局所的な交通流を多数抽出できる一方、大域的な交通流の抽出が困難でした。また、GPSが座標を測位するタイミングはノード上とは限らず、粗い軌跡データから、細かい道路データへの対応づけは複数通りあるため、その優先度を設定することは容易ではありませんでした。

開発した技術

今回、軌跡データを分析するための前処理の技術として、軌跡データを簡略化した経路グラフの自動生成技術を開発しました(図2)。経路グラフを用いると全体が見渡せるため、人や車の流れの大局的な把握が可能になります。

開発した技術の特長は、以下のとおりです。

  1. 類似した軌跡データの集約

    曲線の類似度に基づいて、似たような軌跡データを集約することにより、軌跡データを簡約化した経路グラフを生成します(図3)。この際、単に軌跡データ中の座標間の距離を用いて集約すると、部分的に似ている箇所が局所的に集約されてしまい、大域的な交通流として保持することができません。そこで、軌跡データを曲線としてとらえ、その類似度で集約することにより、類似した軌跡データを大域的な交通流として保持し、抽出することが可能になりました。

    図2 軌跡データの集約
    図2 軌跡データの集約

    図3 生成した経路グラフ
    図3 生成した経路グラフ

  2. 道路データを用いない軌跡分析

    本技術では、曲線の類似度という明確な基準で軌跡データを集約しており、道路データとは無関係なため、道路の選択に関する優先度設定は不要です。これにより、前処理と軌跡分析の実行は、道路網改変の影響をほとんど受けません。また、道路データを用いないため、集約の粒度を自由に設定可能です。

効果

本技術により、マラソン大会などの大規模イベント開催時に、多くの人が利用する迂回ルートを素早く見つけられ、事前の推奨通行ルートの設定や誘導計画に反映が可能です。また、道路データが不要なことから、道路地図がない大規模テーマパーク内の人の流れ、航空機や船舶の航路分析などへの応用も可能です。

今後

富士通研究所は、本技術の実証実験を進め、2014年度中の製品搭載を目指します。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 株式会社富士通研究所:
代表取締役社長 佐相秀幸、本社 神奈川県川崎市。

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
ソーシャルイノベーション研究所 ナレッジプラットフォーム研究部
電話 044-754-2652(直通)
メール spatiotemporal@ml.labs.fujitsu.com


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