PRESS RELEASE (技術)
2014年4月15日
株式会社富士通研究所
ローカルな場での端末・機器間の情報交換サービスを
迅速に構築できる基盤技術を開発
人が集まったその場で相互連携や協働作業が可能に
株式会社富士通研究所(注1)は、人が集まったその場で端末や機器をつなげて画面共有や協働作業を行う情報交換サービスを迅速に構築できる基盤技術を開発しました。
近年、店舗や学校などの現場では、複数の人が接する場面でのモバイル端末活用が進んでいます。これまで、特定の場所に集まった人と人、人と機器とをつなぐサービスを実現するには様々な事前設定や複雑なプログラミングが必要でした。今回、事前にメンバー登録やドライバのインストールが不要で、人や機器をつなぐ連携サービスを迅速に構築可能なプレイスサービス基盤技術を開発しました。
本技術により、人が集まったその場で端末や機器をつないで活用するアプリケーションの開発工数を最大で従来の約10分の1に低減することができます。学校におけるグループ学習、店舗における顧客端末への商品情報提供、大画面と連動した商品紹介などへの活用が期待できます。
本技術は、5月15日(木曜日)、16日(金曜日)に東京国際フォーラム(東京都千代田区)で開催する「富士通フォーラム2014」に出展します。
開発の背景
スマートフォンやタブレットなどのスマート端末の活用が、店舗、学校、病院など様々な現場で広がりを見せています。富士通研究所はこれまでに、人の置かれた状況に応じて適切なモバイルアプリケーションを配信することで、スマート端末を専用の業務端末化するコンテキストスイッチにより作業効率の向上を目指すサービス基盤などを開発し実用化を進めてきました。
課題
店舗や学校などの現場では、複数の人が接する場面でのモバイル端末活用が進んでいます。例えば、店舗では営業担当者が顧客に、その場にあるディスプレイを活用して商品説明をしたり、学校の教室では先生から生徒への教材の配布やグループ学習での画面の共有が行われたりします。また、病院では患者さんと問診票をベースにした症状の聞き取りが行われたりして、その場の複数の端末や機器間で様々な情報のやりとりをする情報交換のための機能が求められています。このような現場の情報の流れをサポートし、それを活用することで現場の業務効率をさらに向上することが可能です。
しかし、この実現には以下の課題がありました。
- その場での人と人の情報交換が簡単にできない
その場にいる人と人が各々の端末を介して情報交換を行うには、IDとパスワードを入力して、システムにログイン、通信相手の指定をするなど面倒な手続が必要。
- その場での人と機器の連携が簡単にできない
その場にいる人の端末と設置されている機器を連携するには、端末に機器のドライバをインストールし、さらに機器の検出や指定が必要。
- サービス開発の手間
その場にいる人の端末間、端末と機器間で情報交換を行うサービスを実現するには、アプリケーションの開発に加えて、機器間の連携に必要な機能などを実装したサーバシステムの構築、それを利用するためのライブラリなど個別にソフトウェアの開発が必要。
開発した技術
これらの課題を解決するために、以下の三つの技術を開発して、端末にアプリケーションを配布するローカルアプリストアと併せて、プレイスサービス基盤として統合しました(図1)。これにより、例えばローカルな環境にサーバが1つあれば、スモールスタートで人が接する場でリアルなコミュニケーションが実現できます。
図1 プレイスサービス基盤
- 場所を介した端末間連携技術
Wi-FiのアクセスポイントやNFCタグなどに記録されたIDに対応した場所(プレイス)を定義し、その場所で認識された端末に、ほかの端末との連携機能を付与したモバイルアプリケーションをサーバから自動で配信する技術を開発しました。これにより、その場に閉じた通信路である情報チャネルが構成され、その場における情報交換が可能になります(図2)。
図2 端末間連携技術 - 機器の仮想化技術
その場にある物理的な入出力機器に対して、ディスプレイやポインティングデバイスなど各機器の基本機能を仮想的なドライバとして提供し、機器ごとの機能差を吸収します。このドライバを利用するサービスAPIを介してその場の機器を連携することで、端末上で面倒な設定が不要となり、その場の機器が即座に利用できます(図3)。
図3 機器連携技術 - ローカルWebサービス
その場の端末間、端末と機器の間で情報交換を行うため、開発で共通的に必要となるアプリケーション間の通信や共有メモリ制御などの機能をローカルWebサービスのAPIとして提供します。モバイルアプリケーションの開発者はこのAPIを使用するだけで、サーバシステムの構築やそれを利用するためのライブラリの開発が不要となり、アプリケーション間の通信や、その場のディスプレイに端末の画面を出力するなどの機能を実現できます(図4)。
図4 ローカルWebサービス
効果
今回開発したプレイスサービス基盤によって、利用者は集まったその場で端末間での情報交換が可能となり、さらに事前の設定なく端末とその場の機器とをつないで活用でき、現場業務の効率化が進みます。また、開発者は、様々な共通機能を提供するローカルWebサービスをアプリケーションからサービスAPIを通じて利用するため、最大で従来の約10分の1の開発量でアプリケーションを開発できます(当社見積り)。例えば、学校におけるグループ学習、店舗における顧客端末への商品情報提示、大画面と連動した商品紹介などへの活用が考えられます。
今後
富士通研究所では、今回開発したプレイスサービス基盤技術に関する実証実験を実施し、有用性の検証や機能の充実、利用シーンごとのテンプレートやソリューションの検討を進めて、2014年度中の実用化を目指します。
商標について
記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
以上
注釈
関連リンク
- お客様や社会のモバイル活用によるイノベーションをサポートするモバイル製品・サービス群を「FUJITSU Mobile Initiative」として新たに体系化(2013年8月27日 プレスリリース)
- スマートフォンを安全に業務で利用可能とするアプリケーション実行基盤技術を開発(2012年8月31日 プレスリリース)
本件に関するお問い合わせ
株式会社富士通研究所
ヒューマンセントリックコンピューティング研究所 スマートプラットフォーム研究部
044-874-2437(直通)
pspf@ml.labs.fujitsu.com
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