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PRESS RELEASE

2014年3月7日
株式会社富士通研究所

サプライチェーン・マネジメントに向けた
モデル予測制御技術を開発

流通業の高精度な需要予測と生産計画の立案で在庫を最適化し、小売店業務の利益を最大化

株式会社富士通研究所(以下、富士通研究所)(注1)は、複数の長期的な予測シナリオに基づいて計画を逐次修正し、急激な需要の変化に対応可能なサプライチェーン・マネジメント向けのモデル予測制御技術を開発しました。

近年、ビッグデータの活用により需要予測の精度向上が可能となってきましたが、例えば特売セールや新商品キャンペーンなどの要因で需要に変化が起きることも多く、予測の不確かさ・不確実性を前提とした生産数量、発注数量などの意思決定が求められています。

今回、複数の予測シナリオに基づいて一定期間の先読みを考慮したモデル予測制御技術により、最適な発注・生産計画の立案を実現しました。さらに、予測モデルそのものを修正することで、急激な需要の変化に対応した精度の高い計画立案も可能となります。

本技術により、例えば小売店業務の需要予測に基づく在庫最適化が可能となり、急な需要の変化が発生しても利益を最大化する発注計画の立案が可能となります。あるお客様の実データにて検証を行ったところ、平均して約16%の利益向上を実現しました。

開発の背景

近年、商品の販売情報などに加え、ソーシャルメディアやセンサーデータといった大量データを、リアルタイムに収集・蓄積・分析するためのツールが急速に整備されており、ビッグデータの活用が、ビジネス拡大や競争優位を実現するために重要視されています。

中でも、大量データに対して、機械学習やデータマイニングなどの予測・分析技術を適用し、さらに最適化技術を組み合わせて、業務や経営における意思決定を支援するビッグデータ利活用技術への期待が高まっています。

課題

販売時点情報であるPOSデータを活用した需要予測についても精度向上が進んでいますが、特売セールや新商品キャンペーンなどの要因で需要に変化が起きることも多く、そうした変化まで考慮した高精度予測は容易ではありません。このような状況下で、ビッグデータを活用して最適な意思決定をどのように行うのかが大きな課題となっています。

需要予測の不確かさに対応するために、需要変化の要因を明らかにし予測モデルを高度化することで予測精度を向上することが可能ですが、予測の不確かさをすべて解消できるものではありません。したがって、予測の不確実性を前提としてリスクを考慮した上で最適な意思決定を行うことが重要になります。

開発した技術

富士通研究所では、ものづくりの分野において、対象のモデルに基づく最適な制御手法の研究開発を行ってきました。モデルの不確かさを考慮した上で、刻々と変化する状況に応じて最適な制御を行うモデル予測制御技術の研究開発を進め、これまでもエネルギー・マネジメントやエンジン制御などに適用し資源の効率化による性能向上を図ってきました。

今回、これまでに蓄積したモデル予測制御技術を適用し、サプライチェーンの小売業において、急激な需要の変化に対応しながら、在庫保有コストや在庫切れなどによる機会損失を考慮した、トータルコストを最小とする発注計画の立案を実現しました。

開発した技術の特長は以下のとおりです(図1)。

  1. 各発注時において、出荷量制限、納期、賞味期限など様々な制約条件の下で、在庫保有コストや在庫切れなどによる機会損失などのトータルコストを最小とし、かつ利益を最大にするような設定で最適化計算を行うことで、最適な発注量を決定
  2. 逐次修正される需要予測に基づいて一定期間先までを対象に発注量を最適化
  3. ビッグデータにより得られた複数の長期的予測シナリオを考慮して最悪ケースでも損失を抑え、利益が最大化する発注量を計算

1から3の予測・最適化のプロセスを繰り返していくことで、従来困難であった、予測の不確かさを考慮しながら需要の急な変化などに対応した最適な発注計画の自動立案を可能にします。

図1 モデル予測制御技術による在庫最適化
図1 モデル予測制御技術による在庫最適化

本技術は、与えられたルールにしたがって可能な限り良い解を求める数理最適化と呼ばれる計算技術を利用しており、トータルコストの取り方や制約条件を適宜変更することで、対象商品の様々な発注計画立案に柔軟に対応することが可能です。

効果

本技術により、サプライチェーンにおける小売店業務での在庫最適化において、急な需要の変化に対応した利益を最大化する発注計画の立案が可能となりました。小売店の実データを使って発注計画立案に適用し、約90店舗のケースで約60週間分を検証したところ、1店舗以外すべての店舗で利益が増加しました。従来の需要予測に基づいて安全在庫量を見積り、発注量を決定する方法と比較すると、全店舗の平均で約16%利益が改善することを確認しました(図2)。

図2 モデル予測制御技術による在庫最適化の効果(従来手法を100%としたときの各店舗の利益比)
図2 モデル予測制御技術による在庫最適化の効果
(従来手法を100%としたときの各店舗の利益比)

今後

現在、ビッグデータの利活用推進のため高度な予測分析技術と最適化技術を統合することにより、業務や経営における意思決定を支援・自動化する予測・最適化プラットフォームの開発も行っており、一つのプラットフォーム上で予測分析と最適化を複合した解析シナリオをテンプレート化できるようになっています。

開発したモデル予測制御に基づく最適化技術は、今後、予測・最適化プラットフォームへ搭載し、ビッグデータに関する製品・サービス群を体系化した「FUJITSU Big Data Initiative」のオファリングのメニューとして適用していく予定です。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

以上

注釈

注1 株式会社富士通研究所:
代表取締役社長 富田達夫、本社 神奈川県川崎市。

関連リンク

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
ソーシャルイノベーション研究所 第二ソリューション研究部
電話 044-754-2674 (直通)
メール scm_mpc@ml.labs.fujitsu.com


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